作家・作品紹介

青磁の探究者「中島宏」

今回は誰の記事を書こうかと考え始めた頃は、雨が降っていて少し気持ちが沈む天気でした。それでも冬の空気が澄んだ中、雨上がりのカラッと晴れた青空を思うと気持ちも晴れてくるから不思議です。そんな雲一つない空の「青」から、今回の作家紹介は「青」に因んだものにしようなんて思い至りました。仕事柄、色々な種類の陶磁器を見る機会に恵まれている私ですが、青の陶器、青磁といえば真っ先に佐賀県の陶芸作家であり人間国宝としても有名な中島宏が思い浮かびます。

青磁の探究者「中島宏」

「中島ブルー」と言われる多様な器形と釉調

中島宏は磁器を焼く窯元で育ったものの、若い頃は汗を流して泥だらけになる、今でいう3Kの仕事のような家業が好きになれなかったそうです。しかし父親に同行して窯跡の調査をした際に青磁の陶片に心を惹かれます。それ契機に生涯を通して青磁の創造という喜びに触れることになりました。
青磁作家の道を志した中島宏に対して、父親からは青磁は難しいという忠告をうけたそうです。というのも、青磁は起源を古代中国に持つ程に古いのですが、名品とされる様な青磁の再現や創作が非常に困難だと言われていました。しかし、中島宏はそんな困難さを逆手に取って、それなら自分の存在感が出せると考えたそうなので、改めて凄い方だと思いました。
青磁に対する熱意は並外れていて、手探りの中、窯跡を歩き回り、文献を調べて研究を重ね試行錯誤を繰り返しました。常に新しいものを取り入れ、自分の形を追求していく。そうして、いつしか中島宏は、多様な器形と釉調で「中島ブルー」と言われるような独創的な作品を世に生み出し、青磁の可能性を究めたとまで称されました。


青磁の探究者「中島宏」

陶芸界を牽引した人間国宝・中島宏

原動力の一つとなった制作への探求心は「新しいものを創作するのが人間にとっての最大の喜びだ」という至言からも窺えます。その誠実な姿勢は十四代今泉今右衛門を含め多くの陶芸家から敬われ、佐賀県陶芸協会会長も務めました。2007年には人間国宝の認定も受けて、日本の陶芸界を牽引する存在であった中島宏は2018年に細菌性肺炎により76歳で亡くなります。

「青磁は青か緑」という常識に挑み、それまでの青磁にはない色を備えた作品を生み出し、新たな世界を切り開いていった熱意は、残された数々の作品を通して見ることができます。
一度でも中島宏の青磁を見て感動した事があれば、私みたいに雨上がりの澄み切った青空を見るだけで青磁を思い出すようになるかもしれませんね。

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