2020.05.12
隠れた名作 中島千波
桜を描く画家として有名な作家、中島千波。
画廊やデパートで彼の華やかな作品に目を奪われた方は多いのではないでしょうか。実際に手に取られた方もいらっしゃるかと思います。
しかし、桜以外の図柄でも優れた作品があることを知っている方は少ないのではないでしょうか?
多くの作家には代表的な図柄の他にも素晴らしい作品が沢山描かれています。勿論、千波も例外ではありません。
今回は、中島千波の隠れた名作をご紹介いたしましょう。
発想はあの巨匠から!?憧れと社会情勢から始まったおもちゃシリーズ
千波は学生時代、社会情勢を見てそのときの世界を表現するような作品を描いていたそうです。初期の頃の作品は比較的暗い作品が多いのですが、それは当時のベトナム戦争や安保に影響を受けながら絵を描いていたからですね。
さて、本題のおもちゃシリーズが何故生まれたのか。
ある時小品を描くことになった千波が、暗い作品では小品が描きにくいと感じたことから始まります。
題材は何がいいかな・・・と考えた千波は、身の回りにある置物や果物の様な静物から描いていこうと決めました。その時、たまたま近くにあった鳩笛と、ちょうどサクランボの季節だったことから、「浜口陽三みたいな、ああいうのがおもしろいな。あんな感じを日本画風に描いたらどうなるんだろう」と、思いついたそうです。
おもちゃシリーズの原点 「桜んぼと鳩」
青い壁に窓、可愛らしい桜んぼ、そしてちょこんと置かれた鳩の置物。おもちゃシリーズの第1作目であり、原点となります。シンプルな作品ですが、とても可愛らしく存在感があります。
残念ながら「桜んぼと鳩」の画像を用意できませんでしたので、代わりに「ポインセチアとうさぎ」の画像を載せておきます。こちらもおもちゃシリーズを代表する名作となっています。
メルヘン=平和
千波が初めて描いたおもちゃシリーズの作品は1972年。現在までに約200点の作品が描かれています。時代によってテーマやモチーフ、作風を変化させながら、描かれてきたこのシリーズ。千波は語ります。40年以上に渡り描かれてきたメルヘンな世界が意味している一つの事実。それは世の中が平和な証。なのかもしれません。