2022.02.15
進化し続ける芸術家 フランク・ステラ
フランク・ステラは、戦後アメリカの抽象絵画を代表するアーティストの一人で、1950年代以降の現代美術の発展を体現したアーティストです。芸術制作の慣習に常に挑戦し、その定義を拡大するような幅広い作品を制作。抽象表現主義の限界を押し広げ、絵画と彫刻の区別を曖昧にし、新しい素材、抽象的な形態、革新的な技術を絶えず試してきました。
そしてミニマリズムの先駆けとなり、1970年にはニューヨーク近代美術館で回顧展を開催した最年少のアーティストとなりました。
ミニマリズムを代表するブラック・ペインティングシリーズ
ステラの名を世に広めたのは、黒のエナメル塗料で刷毛の幅のストライプを描いた「ブラック・ペインティング」シリーズです。22歳でジャスパー・ジョーンズの個展をみた際、繰り返される旗のストライプに着目したそうです。
黒のエナメル塗料のきらめき、ストライプの微妙な凹凸(リトグラフ版にフリーハンドで描かれたもの)、そしてどこが始まりでどこが終わりなのかも知れない曖昧さをもちながらも、単純で規則正しい法則性をもってキャンバスの平面さを引き立たせます。
表現主義的な要素や奥行きを排除したこのシリーズは、ミニマリズム絵画を代表する作品となりました。
ジャズのシンコペーションを表現した作品
また、彼はジャズが大好きで、大学時代にはアメリカの初期のジャズのレコードを集めていました。
ジャズで最も好きだったのはシンコペーション(強い拍と弱い拍の位置を通常と変えて、リズムに変化を与え、本来の正規のリズム進行から逸脱した状態)でした。メロディーがオフビートで、少し予想外の音を出すことです。
作品Hyena Stompでステラは絵画でシンコペーションを表現しようとしました。
目に留まる一色を端から目で追ってみてください、色が止まって、別の色に引き継がれていきます。色は交わらず、また正方形を貫く斜めの白線は、真ん中で合わさっていません。少し予想外のリズムを繰り返しているようです。
彼の作品を見てみると深い意味があるのか、それとも難解な意味がないのか考えさせられます。
そうした見方を牽制するかのように、彼は「あなたは、そこに見えるものを見ているのです」という言葉を残しました。TVなどを観るように、現実には『そこに存在しないもの』の姿があると思い込むのをやめ、目の前の作品の存在をそのまま受け入れることこそが、彼の作品の見方なのかもしれません。幾何形体は物語にはなりえないけれど、私たちに物語を見るような感覚を与えてくれるといったことなのでしょう。