2021.01.12
西洋の美と和の融合 ガラス工芸家 黒木国昭
今日の日本のガラス界で最高の技術と評価を持った作家、黒木国昭氏と作品についてご紹介いたします。
黒木氏は1945年宮崎県に生まれ1963年高等学校を卒業後東京都墨田区の 山谷硝子に入社、多くの技能とデザインを独学で学び、1974年から本格的な創作活動を始められました。
2006年に黄綬勲章を受章、2008年にはガラスの本場ヴェネチアで2ヶ月間の展覧会、2013年に台湾での国立博物館での展覧会が開催されるなど、アメリカ、ロンドン、フランス・パリ、ローマ、ギリシャ、アジアなどでも活躍。現在宮崎県綾町に工房構え、職人と共に作品制作・発表されています。
ここからは黒木先生の代表作を大きく3つに分けて、ご紹介します。
琳派を現代へ(光琳シリーズ)
日本を代表する江戸時代の「琳派」の世界をガラス工芸で表現、尾形光琳の日本画の世界を広く捉え、西洋の素材であるガラスに日本の伝統美の金箔、プラチナ箔をちらし、華麗な蒔絵の世界と、更にミルフィオリ(千の花)を象嵌しています。
単なる伝承でなく、異文化のガラスの融合美として独自の感性で創り上げ、琳派を現代に伝えます。
アールヌーボーの世界(新世紀ロマン)
黒木氏はフランスのガラス工芸の巨匠エミール・ガレの作品復元を1997年世界で初めて成功させました。ガレ没後100年余り、新世紀の幕開けと共に現代の感性の新たなる作品に注目が集まりました。
アール・ヌーヴォーの世界を現代の視点とジャポニズムを軸に独自の解釈を加え制作されています。
薩摩切子の復元と新たな切子(彩切子)
薩摩切子は廃藩置県や薩英戦争などで技術が失われ途絶えていました。昭和の終わり、復元プロジェクトが各地のガラス作家・職人の手によって立ち上がりました。その中心人物が、黒木先生であり、約120年ぶりに薩摩切子は復元されました。
その実績から長い時間をかけて氏の故郷である日本一の針葉樹林を誇る宮崎県の綾町から豊かな木の文化や精神を根底して「綾切子」という現代の切子ガラスを生み出しました。色彩は古代色の“琥珀色”を基調に木の年輪や温もりを表現、また琥珀色のガラスに紫、藍、緑などの色ガラスを被せ、世界で初めて2色からなる切子を開発しました。
近年では3色被せの切子に成功、鋭い彫でカットされて面は光を反射してダイヤモンドを思わせる輝きを見せてくれます。
現在も精力的に国内のデパートを中心とした作品発表を続けておられます。
みなさんにも圧倒的な世界観とガラス工芸の卓越した技術・美しさをぜひ一度体感して頂きたいと思います。