作家・作品紹介

苦悩と愛深き天才画家 サルバドール・ダリ

シュールレアリスムの代表的人物、柔らかい時計、トレードマークの跳ねた髭…この3つに当てはまる人物、今回は天才あるいは奇人として知られているダリについてご紹介させていただきます。

苦悩と愛深き天才画家 サルバドール・ダリ

サルバドール・ダリの生い立ち

サルバドール・ダリは、1904年にスペインはカタルーニャの裕福な家にて生を受けました。画家出身の母、ピカソの友人であったラモン・ピショットらに幼い頃から才能を認められたダリは絵画にのめり込み才能を開花させていきました。

美術アカデミーの学生時代などを通して印象派やキュビズムなどの手法や作風も取り込んでいきながら、やがて彼はシュールレアリスムに自分の進む道を見出し、現在私たちが知る『ダリ』となりました。
ファッション誌の表紙、ウォルト・ディズニーとのアニメーション作品や宝飾デザインといった、当時の芸術家が眉を顰める商業的な活動においても注目されたダリは、時に閉鎖的である芸術と外の世界との垣根を壊して新しい関係を構築したとも言えます。


苦悩と愛深き天才画家 サルバドール・ダリ

ダリを支えた一なる真実

ダリの活躍に欠かせない、唯一にして絶対の存在は妻であるガラでしょう。彼女はダリにとってのミューズであり、母であり、支配者であり、マネージャーでした。
ダリは自身の著書で、「この愛がなければ、ガラがいなければ、自分はダリになれないだろう。まさにその真実(の愛)を絶えず創造し、それを一貫して生きぬこう、とわたしは思った。それ(彼女)は私の血液、わたしの酸素だ。」と綴っています。

何故、ダリはそこまでガラを想っていたのでしょうか?
その理由は、ダリが抱えた多くのトラウマや葛藤にありました。ダリに名付けられた“サルバドール”、この名前は早逝した兄にも付けられていたため、この事実を知ったダリは「自分は兄の生まれ変わりに過ぎない」という呪縛を幼少期から抱えることになりました。

また、ダリは自分自身の中に潜む残酷さや獰猛さといった欲求との葛藤を抱いていました。あるいは、それは誰しもが持つ葛藤だったのかもしれませんが、それを苦しいと感じる程に非常に繊細な性格だったとも思えます。
そんな余人には想像できない苦しみが、ガラへの愛情で救われていたからこそ彼は情熱的に深く彼女を愛していたようです。

ともすれば、単なる奇人としてしかダリを知らない人もいるのではないかと思いますが、これを機会にダリの愛情と苦悩の深さも知っていただけたらと思います。
その上で、ダリの作品を鑑賞すると今までとは違った観方や深みを感じる楽しみも増えるかもしれません。


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