2020.02.18
竹久夢二 ~大正ロマンの画家~
ここ数年、毎年、年老いた母を連れて母の故郷の伊香保の地を訪れています。行き帰りの通り道で必ず私の目に入るのが、清芳亭のお饅頭屋(笑)と竹久夢二記念館。
5年ほど前の事、伊香保に住む叔母夫婦と母と4人ではじめて竹久夢二記念館を訪れました。
そこは一歩足を踏み入れると一気に大正時代へと誘われます。覆い茂る木の中に白い洋風の建物が建ち、中は大正時代のアンティーク家具や照明など大正ロマン漂う調度品に包まれ、空間全体が作品を引き立てていて一気に興味を掻き立てられました。
夢二式美人画
「夢二式美人」と呼ばれる独特なスタイルの美人画で知られる竹久夢二(たけひさゆめじ)。潤んだ瞳、愁いを帯びた表情と細身で手足が長く流れるような曲線の容姿、そして独特な色づかい、それは大正時代を一声風靡する社会現象となりました。
竹久夢二と3人の女性
竹久夢二の美人画のモデルの多くは、夢二の恋の相手でもありました。
夢二の人生観は女性たちとの出会いと別れが影響しており、特に「たまき」「彦乃」「お葉」の3人は夢二の人生だけでなく、創作にも大きな影響を与えたと言われています。
夢二は新聞や雑誌に挿絵の投稿を重ねて世に認められていきます。そして23歳の時に絵葉書屋「つるや」の主人たまきと恋仲となり、たまきをモデルに美人画を描きだします。これが夢二式美人画のはじまりです。その後二人は結婚しますが、2年で離婚、また同棲・別居と繰り返します。
30歳、日本橋に自らデザインした商品を販売する「港屋絵草紙店」を開店します。来店した美大生の笠井彦乃と恋に落ちますが、彦乃の父親に猛反対されたため駆け落ち同然で同棲を始めます。
しかし幸せは長くは続かず彦乃は肺結核で倒れて父親に連れ戻され、会うことが許されず夢二は憔悴しきってしまいます。
そんな彼を見かねた知人から、当時、藤島武二(ふじしまたけじ)、伊藤晴雨(いとうせいう)らのモデルとして人気の高かった佐々木カ子ヨ(お葉)という女性を紹介され、彼女をモデルに代表作の「黒船屋」を描きあげました。
黒船屋の完成の翌年、再び暮らすことは叶わないまま彦乃は25歳という若さで一生を終え、夢二にとって生涯心に残る女性となりました。
その後、夢二の理想の立ち居振る舞いができるお葉に夢二は惹かれていきます。一緒に暮らし始め、お葉をモデルとした多くの作品を描いていきます。
しかし、お葉は彦乃の面影を追い求める夢二との恋に悩んだ末に自殺未遂をはかります。一度は夢二のもとへと戻ったお葉でしたが、悩みは消えず夢二との別れを決意します。
3人の中でも特に彦乃は、永遠の恋人と言われています。
夢二は死ぬまではずすことのなかった指輪に、「ゆめ35しの25」(”しの”は夢二がつけた彦乃の名)と刻まれていたそうです。
竹久夢二の代表作「黒船屋」
黒船屋はお葉をモデルとしながらも女性は永遠の恋人の彦乃ではないか?黒猫は夢二自身ではないか?との説があります。
伊香保の竹久夢二記念館では、黒船屋を毎年9月16日の竹久夢二の誕生日前後に2週間だけ公開するそうです(要予約)。今年は黒船屋公開時期の9月に伊香保を訪れて、夢二の彦乃への想いを感じてみようかな…と思います。
竹久夢二記念館:群馬県渋川市伊香保町544-119