2023.11.14
次世代に繋ぎたい想いと文化 塗師 中村宗哲
近年、茶道や華道という伝統的な日本文化が失われつつあるとよく耳にします。
昔は茶道や華道と言えば、社会人としての作法を知る為や花嫁修行、身内が習っていたから触れたことがある等、様々な理由で学び触れる機会がありました。そんな伝統文化も令和になった今ではどことなく一昔前のように感じます。
茶道具を制作する職家 千家十職
皆さんは今まで茶道の体験をしたことはありますか?
私は学生時代に校外学習や修学旅行で体験したことがあります。
実は茶道の文化は単純にお茶を点てるという所作だけでなく、文化を支える仕事に“千家十職(せんけじっしょく)”という職の人たちが居ます。千家十職とは三千家(茶道の主な流派、表千家・裏千家・武者小路千家の総称)に出入りし茶道具を制作する職人や作家を指します。
約400年続く漆塗りの伝統 中村家
今回はその千家十職の中の一人、塗師の中村宗哲を紹介します。
中村宗哲が生まれた中村家は江戸時代より約400年続く塗師の家です。初代宗哲の時代には蒔絵を施した家具なども製作しており、明治期以降には茶道具の塗師として専業した家系です。三代宗哲は表千家より引き立てられ、若くして七事式(茶道の精神・技術を磨くために制定された稽古法)の制定に参加したといわれております。以降、千家とも関わりが深い中村家ですが、約400年続いている中村家にも後継問題で養子を迎える等、様々な変遷があり現在に至ります。
女性らしい優美な手仕事
十二代と当代十三代は女性であり、特に十二代は女性として初めて千家十職初の女性当主として認められました。以前メディアサイトに「漆は、塗ったり、さすったり、優しく作るものです。子供を育てるみたいに、ですね。ですから女性的な仕事ともいえるのですよ。」と十三代は語っておられました。以前実際に当代の作品を拝見する機会があったのですが、洗練されたデザインに木のぬくもりとどこか作り手の優しいお人柄感じました。
次世代に伝えたい 作られた物を慈しむ心
千家十職と呼ばれる人たちは、江戸時代より日本の伝統文化である茶道を制作者として支え守り続けてきました。茶道自体がこのように衰退してしまうと、伝統を守り続けてきた人たちにももちろん影響が出てしまいます。
多くの美術品にふれる仕事をする上で、日本の美しい文化を守る意識と共に物を大事に慈しむ心も伝えていければと思っております。