2020.04.21
木版画の魅力 井堂雅夫
今世界を揺るがせている新型コロナウィルス問題。感染の恐怖もさることながら、それに伴う経済的危機は、私たちに重くのしかかってきています。
最近では他県への外出自粛なども要請されており、これから旅行にも最適な時期であっただけに、やはりショックが大きいです。私も以前からこの時期の京都旅行を計画していましたが、すべてキャンセルになってしまいました。
京都はお気に入りの場所で、名古屋からですと日帰りで遊びに行けることもあり、よく桜や紅葉を見に行っていました。
美術の世界でも京都に魅せられ、その風景を描く画家は非常に多いですが、その中でも私は井堂雅夫の木版画が表現する、華やかでありながら厳かな京都の風景に非常に心惹かれます。
井堂雅夫の生い立ち
井堂雅夫は1945年、中国東北部に生まれました。日本に引き上げ後、岩手県盛岡市に移り、15才まで過ごします。
しかし両親の離婚に伴い、京都に移り住むことになった井堂は、幼い頃から好きだった絵の描ける仕事がしたいと、染織家・吉田光甫に弟子入りします。
20歳の頃より染色家として活動し始めましたが、やがて斎藤清の木版画と出会い魅了されると、1972年頃より木版画の創作活動を始めました。
日本版画協会展や日動版画グランプリ展などに入選しますが、日本の伝統芸術である木版画を自由な形で表現したいと、以後は公募展には出品せず、独自で国内外での個展を開催していきました。
2016年4月、約2年に及ぶ癌との闘病の末亡くなるまで、病床にまで道具を持ちこみ、最後の最後まで絵筆を握っていたという話からもわかるように、彼の作品からは絵を描くことが本当に好きだったという思いが伝わってきます。
井堂雅夫の独特の色使い「IDO GREEN」
井堂の表現する色彩、特に緑色には特徴があり、それは「IDO GREEN」と呼ばれ知られています。その独自の色遣いは、多色摺りの伝統的な木版画技法が生み出す賜物です。和紙の上に表現された四季折々の光と影は、素朴で暖かく、どこか懐かしさも感じられます。
井堂の作品は海外のコレクターも多いと聞きます。それはやはり、誰もが持ち合わせている望郷の念が、国境を越えて心の琴線に触れているということではないでしょうか。この古都の美しさは世界に誇れるものです。
一刻も早く、井堂の愛した京都に以前の様な活気が戻ることを祈るばかりです。