2021.08.17
日本画×現代アート 河嶋淳司
世の中には、組み合わせによって全く新しいものが生まれることがあります。今回は美術において真逆とされる二つを掛け合わせ、過去になかったものを生み出した、日本画家の河嶋淳司をご紹介させて頂きます。
ベースは伝統的な表現方法・「琳派」
河嶋淳司は1957年、東京に生まれ、1981年に東京藝術大学日本画専攻卒業後、2年後に同大学院を卒業しました。若い頃からシカゴアートフェアやシドニービエンナーレに出展するなど、日本画家でありながら海外での活動も積極的におこないました。
作風のベースとなっているのは古くから日本に伝わる伝統的手法である「琳派」です。琳派とは江戸絵画といわれる時代の、俵屋宗達から尾形光琳が発展させた表現方法で、大胆な構図に、背景には金箔などを施し、対象物に非常に大きなインパクトを与えるところに特徴があります。また、琳派の代表的な技法で「たらしこみ」というものがあります。これは、色を塗って乾かないうちに他の色を垂らし、にじみを作ることで独特の空気感を出すというものです。
これらの伝統的な手法をベースに現代の感覚を取り入れて、作品を描いています。
アニマルグラフティシリーズ
河嶋淳司といえば「アニマルグラフティシリーズ」が有名です。動物をリアルに描くというよりは、グラフィックを思わせるタッチで描く斬新なシリーズで、琳派とグラフィックが融合したかのような新しい作風です。この手法は世界的にも評価が高まり、ついには2006年にカルティエ「パンテール」の広告に豹の作品が採用されます。このことは、日本画の「伝統」と「現代」のアートの懸け橋として河嶋淳司が世界に認められた証ではないでしょうか。
今では、日本画と現代アートを掛け合わせたような作風の作家は色々と出てきていますが、河嶋淳司はその先駆けといっても過言ではありません。純日本画を愛する美術ファンから若い世代まで幅広く支持される人気作家です。
組み合わせによって、様々なものが生まれるのがアートの世界です。
是非、皆さんも河嶋淳司が起こす化学反応を楽しんでみてはいかがでしょうか。