2023.04.18
強烈な意欲と競争心 アレックス・カッツ
アレックス・カッツ(Alex Katz)は、フラットで明るい色調、大胆でスタイリッシュな女性の肖像画で知られる、1927年生まれのアメリカ合衆国の現代美術家です。透き通るような色使いが魅力的なカッツの世界をご紹介します。
ポップアートの先駆者
抽象表現主義の最盛期とポップアートの爆発的な普及の直前にニューヨークのシーンに登場したカッツ。リアリスティックな表現を試みた数少ない作家で、1954年に作品を発表してから絵画、ドローイング、彫刻、版画など、数多くの作品を制作してきました。カッツは幼少期にユダヤ系のスター女優だった多彩な母親から小説や詩を教わり、芸術や造詣に触れカッツもまた多彩な表現者としてその才能を開花させました。幼少期に培った影響からか、彼の美学は同世代の画家たちよりも、フランク・オハラやジョン・アシュベリといった詩人たちに近いと言われています。
カッツの美学
カッツは70年以上にわたり一貫して“今このとき、目の前にあるものを描く”ということにこだわりました。その即時性から描かれた作品は「現在形の絵画」と表現され、その題材は身近なものに重きを置き、家族(特に妻エイダ)や友人の肖像、芸術的な協力者や社交の場面、風景や建築の場面や花などが描かれ、野外撮影や写真資料、自身のスケッチや下絵など、さまざまな表現方法で制作されました。
映画「プラダを着た悪魔」の中で絵画作品が飾られていたこともちょっとした話題になりましたが、カッツの絵画的な感性は、映画、ファッション、広告の世界にも広がっています。ダンサーの衣装デザインに及んだかと思えば、逆にファッション・モデルを絵画のモチーフに取り入れるなど、カッツによればファッションこそ「今この瞬間」に直結しており影響は相互に作用します。
100歳を目の前に挑戦し続ける
1950年代以降、カッツの作品は世界中で200以上の個展と500近くのグループ展で取り上げられ、作品は世界各地で100を超える美術館や公共機関に収蔵されています。
2023年の2月まではニューヨークのグッゲンハイム美術館でカッツの大規模回顧展が開催されていました。
「常に誰も行ったことのない場所を目指している」と語るカッツは、95歳になった今もなお精力的に活動し、独自のスタイルを軸としながら果敢に新しい描き方に挑戦しています。