作家・作品紹介

幻のラスター彩を復元させた加藤卓男

幻のラスター彩を復元させた加藤卓男

先日、人間国宝の故・加藤卓男が1990年に制作した陶壁の移設作業が行われたというニュースを目にしました。この陶壁はラスター彩で作られ、631枚の陶板を組み合わせて表現されているのですが、接着剤で固定された薄い陶器をはがすのは難しく建物とともに取り壊される可能性があったとのこと。それを聞きつけた職人たちが試行錯誤し、結果はがすことができ、無事に移設されたとのことです。

今回は、この陶壁に用いた技法、ラスター彩と加藤卓男について紹介したいと思います。


幻のラスター彩を復元させた加藤卓男

ペルシャ磁器 忘れられたラスター彩

「Laster(ラスター)」とは英語で「光沢」「輝き」を意味します。陶器の表面に金属的な光沢を与える顔料のことをいいます。
「ラスター彩」の陶器は、白釉をかけた上に、またコバルトを含んだ藍釉を地に銀、銅などの特殊な金属を含む泥状の顔料で器の表面に文様を描き、低い温度で焼き上げた陶器を言います。
「ラスター彩」は、その生産地が中近東地域に限られる点で、世界陶磁史上、稀有な焼物と知られています。特殊な原料と微妙な条件のもとで生まれたラスター彩は、金属工芸に憬れたイスラムの上流社会に求められ、愛好されるようになりましたが、その隆盛の時は短く、イラン・イラクでは14世紀以降衰退の一途をたどり、17世紀以降歴史上からも、人々からも忘れられてしまいました。


幻のラスター彩を復元させた加藤卓男

20年にわたりラスター彩の復元に挑む

日本を代表とする焼物である「志野」「織部」のふるさとで生まれ育った加藤卓男がなぜ西アジアの文化に惹かれ傾倒していったのでしょうか。
1961年フィンランドに留学し、その帰途の際イランに立ち寄った際に、「昔の面影を残すペルシャ風土と、興亡の歴史の中に生まれた古陶の美に愛着と魅力を感じた。」とのちに語っており、その中でも最もラスター彩に心惹かれたそうです。そしてラスター彩の復元に挑むことを決意します。この時はその後20年にわたる時間と膨大な労力をささげることになるなど予想もしていなかったでしょう。
この20年間卓男は定期的にイランを訪ねますが、全くと言っていいほど資料などは残ってなく、数えきれないくらい壁にぶち当たります。そんな中、1968年テヘランの大学を訪れた際、ペルシャ陶器研究の第一人者だった故アーサー・アップハム・ポープ教授の研究について耳にします。ポープ教授の残した資料には釉薬の化学組成、焼成温度、釜の設計図などラスター彩の製法が詳細に記されていました。
これらの資料を徹底的に調べあげ、卓男は数年もしないうちにラスター彩の復元陶器を完成させました。
現在卓男が復活させた「ラスター彩」の製法は、息子である7代目幸兵衛が引き継いでいます。

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