作家・作品紹介

加山又造 口癖は「人の真似をしてはいけないよ」

加山又造 1927~2004(昭和2年~平成16年)

加山又造 口癖は「人の真似をしてはいけないよ」

加山又造の生い立ち

1927年、加山又造先生は京都 西陣織の和装図案家の子として生まれ、幼き頃より美の感覚を磨いたことで、自然と日本画家を志しました。
戦後直後の混乱と伝統絵画の危機に直面していた日本画壇でしたが、加山又造先生は西欧の絵画やさまざまな様式を吸収し、伝統を重んじ、常に新しいものに目を向け、取り入れ、そぎ落とし、日本画の革新を担う旗手として活躍しました。

加山又造先生の初期作品(1950年~)の多くは、動物を題材とした作品が多く見られ、1955年より版画作品も同時に制作しました。
版画には職人気質らしく、紙や摺師・彫師にこだわりをみせた作品を2002年まで発表を続けております。加山又造先生の肉筆は高額で取引されており、美術品として高い評価をうけていますが、部数がある版画でもこだわりが随所に散りばめられており加山芸術を存分に楽しむことができます。
またこの頃の作品には、海外のキュビズム的な画面構成がみられ、日本画の中に現代的な感覚を取り入れるなど、色々な挑戦が見受けられます。


加山又造の作品

1960年代~1970年代初頭には、代表作となる1966年《春秋波濤》や1970年《千羽鶴》等を発表。装飾性の高い作風により『現代の琳派』と称されました。

加山又造 口癖は「人の真似をしてはいけないよ」

1970年代後半からは水墨画に取り組み、身延山久遠寺大本堂天井画《墨龍》1984年に結実。


加山又造 口癖は「人の真似をしてはいけないよ」
加山又造 口癖は「人の真似をしてはいけないよ」

1997~1999年 英国航空 British Airways 飛行機の尾翼にデザインが採用されました。


加山又造 口癖は「人の真似をしてはいけないよ」

そして最晩年にはなんとコンピューター・グラフィックスにも挑戦。


加山又造 口癖は「人の真似をしてはいけないよ」

また亡くなられて12年経った2016年5月、まだ私たちの記憶にも新しいG7伊勢志摩サミットの会場で展示された《おぼろ》は、映像演出も加わり幻想的な空間で大変な讃辞を受け、各国首脳をもてなしました。

2019年11月には東京都目黒区にある 身延山久遠寺大本堂天井画《黒龍》1984年作のインスタレーション展示が話題をさらいました。
こうした発想や活動には、本当に驚かされます。


加山又造の印象

◆ここからは加山又造先生とお付き合いのあった方々から聞いたことを記します。

加山又造先生の印象を伺うと、皆、口をそろえたように「懐が深く親しみやすい先生だった」という事をおっしゃいました。
当時、沢山の画商や作家が加山又造先生のもとを訪れましたが、日展や院展など派閥や流派に分け隔てなく、垣根を飛び越え、聞かれる質問や技法を惜しみも無く教えていたそうです。
そして教えの最後には「人の真似をしてはいけないよ」と付け加えていたそうです。
本音を言うなら、一度お会いしたかったですよね。

1984年放映のNHKの番組 日曜美術館ではこんな事も語っています。
(ペンキスプレーを持って)「こんな便利なものが俵屋宗達・尾形光琳の時代にあったら、彼らは使わないわけにはいかなかっただろう。」と。
まさに「人の真似をしてはいけないよ」の精神が発した言葉ですね。
ペンキスプレーを器用に使うアメリカやヨーロッパのストリートアーティストならまだしも、こんな発想を持った日本画家はおそらく他に居なかったことでしょう。

最後に大家は名を成すと作品に安住してしまうことが多々あります。
しかし、加山又造先生は職人風で、常に何かを追い求め、動きや匂い・優しさや美しさなどを表現し、人の感性に訴える作品を追求しました。
その「人の真似をしてはいけないよ」の精神は、未来を牽引する全ての日本人アーティストに引き継がれていると私は思います。

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