2019.07.02
写実画の世界 ~島村信之~
見えるものを通して、見えないものを描こうとする。これはある美術展のテーマです。
島村信之という作家の名前を聞いて作品を思い浮かべる事ができる方は少ないかもしれません。しかし一度作品をみれば、作家の名前を忘れる事はできなくなるはずです。
写真のような絵、一言でいえば島村信之の作品はそのように表現できると思います。
描いた作品を見ると人間の繊細な表情や光の描写から作家のこだわりを感じられます。スマートフォンが普及し手軽に写真を撮影できるようになった時代、写実画はリスクがある表現のように思います。
リアルさがデジタル機器を使う事によって簡単に手に入ってしまう時代、デジタルを超える表現を筆というアナログな方法で描く。それはデジタルでは表現できないモノの質感や暖かみを表現する事だと思います。
見えている現実を通して、まるでそのものを自分の目で見たり、手で触れているかのように表現する。それこそが島村信之の作品の真骨頂なのかもしれません。
千葉県にあるホキ美術館は日本初の写実専門の美術館です。
そこには日本を代表する写実画の作品、森本草介や中山忠彦などの有名作家から若手作家まで約480点の作品が所蔵されています。その中に島村信之の作品もあり、女性を描いたものが多い島村の作品の中で、ホキ美術館にはロブスターやカブトムシ標本をモチーフにした少し珍しい作品も所蔵されています。
写実画は作品の特性上、点数はそれほど多くはありません。その分作品一点一点にかけるこだわりも非常に強く、ある作家の展示会では展示されている作品のタイトルの下に未完と書かれ、注意書きとして展示会終了後に加筆の可能性がありますと表示がされる作品があるほどです。
ぜひお近くに行かれた際は写実画の世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。