2024.05.14
ポップアートの先駆け ネオ・ダダの代表 ロバート・ラウシェンバーグ
ダダイズム、ネオダダ・・・アートに興味がある方は耳にした事があるかもしれません。ヨーロッパを中心とする海外のアートは元々宗教や戦争に関係する物が多く、遠方の出来事を伝える方法として表現されていた側面もあります。ダダイズムとは第一次世界大戦の1910年代半ば、戦争への抵抗感等から、虚無を根底思想に持っています。既成の秩序や常識に対する否定、攻撃、破壊を大きな特徴とし、ダダイムズに属するアーティストはダダイストと呼ばれることがあります。ダダイストで有名な画家はマルセル・デュシャン、ジャン・アルプ、マン・レイ等がいます。その後、シュルレアリスムの開始により勢いを失いますが、世界の主要都市で変化し隆盛しました。
今回は、1950年代後半から60年代にかけてニューヨークを中心に発生した前衛芸術運動“ネオ・ダダ”の代表的アーティスト ロバート・ラウシェンバーグをご紹介いたします。
新しい表現スタイル
時は1950年代。美術の世界は抽象表現主義が全盛をきわめていましたが、ラウシェンバーグとジャスパー・ジョーンズは抽象表現主義に影響を受けながらも、レディ・メイドやアッサンブラージュなどの手法を融合させ、新しい表現スタイルを打ち出しました。ラウシェンバーグは、60年にわたり、絵画、彫刻、版画、写真、パフォーマンスなど幅広い表現方法で作品を制作してきました。彼の画期的な作品のシリーズ《Combines(1954-64)》(左作品)では彼はアートメイキングの素材とありふれたものを混ぜ合わせています。 わかりやすく言えば、コラージュと絵画を組み合わせたハイブリッド作品です。そこには、日常生活から採取されたものがを使用されています。「新聞のテキスト、写真の細部、野球ボールの縫い目、電球のフィラメントをブラシのストローク、絵具のエナメルの滴りなどと同じように、絵画の基本と考えています。」とラウシェンバーグは言っています。
右側の作品はラウシェンバーグの最初のコンバイン作品の1つである「Bed(1955年)」です。タイヤや古い家具などの廃品を、アメリカのどの家庭でも使われていたパッチワークキルトのベッドカバーや枕カバーなどと合わせました。さらに鉛筆で落書きをし、絵具を散布するという抽象表現主義を連想させるスタイルで描かれています。これはおそらく抽象表現主義を皮肉っているのではないかと言われています。当時の抽象表現主義のアート界に反発し、自由な発想で新しい表現方法を展開することを試みたのです。
1962年からは、写真や雑誌から切り出した多様なイメージを組み合わせ、それらをキャンバスに転写する「シルクスクリーン・ペインティング」を制作し始めます。同時期にこの技法を開発していたウォーホルに触発されたとも言われていますが、ウォーホルより一足早くこのシルクスクリーンを用いた表現を展開し、ポップアートの先駆者として、1960年代以降の美術に多大な影響を与えたことは有名です。
常に新しいアイデアに満ちた作品を発表し続けた彼の作品は、今でも古さを感じさせません。
国内で鑑賞できる美術館
そんなラウシェンバーグ作品を国内で鑑賞できる施設は大阪市にある国立国際美術館です。1979年に国立国際美術館が購入し、今でこそ、写真、映像、インスタレーション、そしてパフォーマンスに至るまでさまざまな作品が収蔵されていますが、電気を使って動く作品は、国際美術館にとってこの時が初めての収蔵となったそうです。実際に間近で鑑賞できる作品は数少ないため、ぜひ鑑賞してみてください。