2025.04.01
ダイナミックな筆跡で魅了する現代アーティスト 山口歴

みなさんは昨年の卓球男子日本代表の試合をご覧になりましたか?
このグラフィックを手がけたのが、現代アーティスト・山口歴(やまぐちめぐる)です。山口は、ブラッシュストロークとカットアンドペーストと呼ばれる手法を用い、色彩と動きをダイナミックに融合させた作品で国内外から高い評価を得ています。現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動し、企業とのコラボレーションやアートプロジェクトなど幅広く活躍しています。

幼少期からアートへの傾倒と松山智一のアシスタント経験
1984年、東京都渋谷区に生まれた山口は、ファッションデザイナーの両親のもとで幼少期からアートとデザインに囲まれて育ちました。23歳で渡米し、約5年間にわたりニューヨークで現代美術家・松山智一のアシスタントを務めます。松山の鮮烈な色彩とグラフィカルな作風に触れたことで、山口は色彩感覚と表現技法を磨きました。帰国後、東京で初のグループ展に参加。出品作品が即完売したことで独立を決意し、本格的にアーティスト活動をスタートさせました。

国内外での個展と展覧会
2011年、グループ展「GROUPSHOU3」(AISHO MIURA ARTS・東京)に初めて参加しました。その際、作品8点を出品し、初日に完売。2012年以降はニューヨークと東京を行ったり来たりしながら数々の展覧会を開催しました。2015年、+81 Gallery New Yorkで個展「ALL IS FLUX, NOTHING STAYS STILL」を開催、2016年には東京で2度の個展を開催します。2017年には「OUT OF BOUNDS」や「SPLITTING HORIZON」などの個展が同じく東京で開催されました。さらに、ニューヨークでは2012年以降ほぼ毎年、山口歴の参加する展覧会が開催されます。2020年10月31日から11月16日に渋谷PARCO「PARCO MUSEUM TOKYO」にて展覧会が開催されました。《ROOTS OF TEARS》(2011年)も含め、ブラシストロークを用いた(当時の)新作7点と大学受験の予備校時代に制作した作品も展示。山口のニューヨークにある制作スタジオも再現し、初期から現在に至るまでの経過を俯瞰できる展覧会となりました。そして2021年には、出品作品が全て新作の個展「LISTEN TO THE SOLITUDE」が銀座 蔦屋書店とOIL by 美術手帖ギャラリーにおいて同時開催され、注目を集めました。
代表作『OUT OF BOUNDS』シリーズと独自の手法
山口の代表作シリーズ『OUT OF BOUNDS』は、彼の作風を象徴する作品群です。アクリルパネルに筆跡をプリントし、それをカットして重ねることで、絵画と彫刻の境界を超えた立体的な表現を実現しています。鮮烈な色彩と力強い筆致が空間に広がるようなダイナミズムが特徴で、角度によって異なる表情を見せます。ストリートアートとコンテンポラリーアートが融合したこのシリーズは、山口のスタイルを確立した作品群と言えるでしょう。
山口の制作手法は、ブラッシュストロークとカットアンドペーストを組み合わせたものです。筆の軌跡をスキャンし、デジタル上でコラージュのように構成。そこからアクリルパネルにプリントしたものを手作業で切り出し、レイヤー状に組み立てることで、立体感と躍動感を表現しています。アクリルや樹脂、木材など異素材を組み合わせることで、視点や光の当たり方によって異なる表情を見せます。

KYNEや企業とのコラボレーション
2017年には福岡のギャラリー「UNION SODA」で、ストリートアーティスト・KYNEとの合同展を開催。KYNEのクールで洗練された線画と山口のエネルギッシュな筆致が融合したコラボ作品が発表されました。コラボTシャツは即日完売となるほどの人気を博しました。企業とのコラボレーションも多数行っています。2017年にはISSEY MIYAKE MENとコラボし、ブラッシュストロークを取り入れたシャツを発表。また、ユニクロの「UT」コレクションでは、Tシャツやパーカーに彼の作品がプリントされました。スポーツブランドのNIKEとはスニーカーやウェアのグラフィックデザインを手掛け、アートとファッションを融合させる試みに挑戦しています。
今後の展望と注目ポイント
山口歴はニューヨークを拠点に活動しながら、日本国内でも展覧会やプロジェクトを展開しています。近年ではデジタルアートやNFTにも挑戦するなど、活動の幅を広げています。
彼の最新の作品や活動は、公式Instagramでチェックできます。常に進化を続ける山口歴のアートは、これからも多くの人々を魅了し続けるでしょう。