2020.08.25
せんとくんの生みの親 籔内佐斗司
みなさん、「せんとくん」を覚えていらっしゃいますか?
平城遷都1300年祭の公式マスコットキャラクターです。あの独特の風貌は一度見たら忘れられないのではないでしょうか。
今回はその生みの親でもある籔内佐斗司を紹介したいと思います。
籔内佐斗司は東京藝術大学および大学院で彫刻を学び、そのあと同学保存修復技術研究室にて仏像彫刻の研究と修復事業に従事します。その後、古典研究をもとにした独特の彫刻技法を駆使し、木彫やブロンズ、版画、執筆、映像、講演などのさまざまな活動を、繰り広げています。
その表現は、日本人の心象風景や東洋的自然観を暖かく穏やかな造形で、滑稽さとユーモアに満ちた奇想天外な作品世界は観る人を魅了してやみません。
籔内は自身の作品を語るときに挙げられる4つのキーワードを紹介します。
「鎧」
「生命の器」という言葉があるように、肉体はこの世で生命がまとっている「鎧」のようなものだと言っています。多くの作品では肉体は表面だけで中は空洞、頭部とからだを別々に作り、絹の紐などで結わえています。肉体は輪廻転生する魂の仮の宿りであって「生命の鎧」を象徴するためなのです。
「童子」
単なるこどもの造形ではなく、「七才までは、神のうち」という言葉があるように、こどもは人間界ではなく神の領域に属する存在とされています。籔内が作る様々な童子たちは、単に「おとなではないひと」ではなく、神性をそなえた不思議な存在で、生命力あるいは自然界のエネルギーの擬人化なのです。
「動物たち」
動物たちも転生する生命の仮象が肉体であると捉えるならば、「ひと」として現れるか動物の姿で現れるのかというだけで、根本は変わらないと言っています。
子供のころから身近にいた存在でよく作品に表現されています。
「連続性」
籔内の作品は一体で完結するのではなく、動画のようにすこしづつかたちを変えて一連の動作を表す場合があります。静止した形態ではなく、刻々と移り行く時間を表現したいと思っているそうです。阿吽の作品は、二つでひとつの状況を表しています。
能動と受動、正と負などです。またこどもの顔が五つの母音を発している作品や、犬が歩いたりこどもが走ったりしている作品も形の変化と連続性が時間の流れを表現しています。また、現実の世界とは違う空間軸に生きていることを表現するために、壁から突然現れたり、壁のなかに消えていったりしています。
籔内の作品は美術館や寺院以外にも日本各地でパブリックアートとして目にすることができます。見つけた際には一度足を止めて籔内ワールドを楽しんでみてはいかがでしょうか。