2023.03.22
「風の画家」西村計雄
目に見えない風を絵に仕込む
筆跡と同じように油彩画にあっても「この描き方はこの作家だ」とか、「この色はこの作家の色だ」というように作家の個性や特徴があると思います。
例えばルノワールは印象派の雰囲気、ピカソやブラックならキュビズム、藤田嗣治の乳白色、近年では千住博のたらしこみ技法によるウォーターフォールや草間彌生の網目や水玉、ロッカクアヤコは指で描く等々、言い出したらきりがありません。
今回紹介するのは「風の画家」と呼ばれる西村計雄(にしむら けいゆう)です。
西村計雄は目に見えていない風を、いかに描き上げたのでしょうか。
和菓子の色と評された色彩
1909年、北海道共和町小沢(旧小澤村)に生れ、幼少の頃より画家を志し、東京美術学校(現・東京芸術大学)に入学。藤島武二教室にて学び、同期には岡本太郎や東山魁夷らがいました。東京美術学校を卒業後、40歳を過ぎてからパリに渡ると約40年間にわたってパリを拠点に活躍します。
ピカソを育てた画商・カーンワイラーに「和菓子の色」と評されたやわらかな色彩と、たおやかな線が特徴の作品は、「東洋と西洋の美を融合した」として高く評価されました。
油絵の具を使っていますが、描き方はとてもユニークです。薄めた絵の具を使い、「にじみ」や「ぼかし」という古くからある日本画のテクニック(垂らし込み)を取り入れたり、型紙を使って花びらを沢山描いたり(ステンシルやシルクスクリーン)、筆を使わず指で描いたり、いろいろな表現方法を取り入れました。
そして特徴的な流れるような線により、光や風など、目に見えないものも絵具が流れるままに、明るくリズミカルに描き上げられました。
晩年の西村計雄
フランスでの成功による高い評価はフランス政府やパリ市が作品を買い上げるほどでした。
国内でも1990年「西村計雄美術館 翠松苑」がオープン。1999年には、故郷である北海道共和町に「西村計雄記念美術館」が開館しましたが、惜しくも2000年に91歳で逝去されます。
今でも作品がテレビ番組で紹介されるなど、多くのファンと根強い人気を誇ります。
みなさんも一度、西村計雄の作品から風を感じてみてはいかがでしょうか。