2020.07.14
前衛芸術家「もの派」 李禹煥(リー・ウーファン)
今回は前衛芸術家の代表的作家の1人であり、日本とフランスに住みながら世界を舞台に活躍している李禹煥をご紹介いたします。
1960年代後半から70年代中頃まで続いた日本美術の大きなムーブメント「もの派」。
李禹煥はその中心的なアーティストとして紹介され、ニューヨークのグッテンハイム美術館、フランスのヴェルサイユ宮殿やボンピドゥーセンターなどで大規模な個展を開催し、高い評価を受けています。
作品は彫刻、絵画、ドローイング、版画など多岐にわたりますが、それらの制作に一貫しているのは、自らの考えや感情など作家の内面を表現することよりも、人間と「もの」、あるいは「もの」と「もの」との関係性を表現しています。「作る」ことにおいて最小限でありながら、最大限の交感をもたらす余白の芸術で、多くの人を魅了し続けています。
「もの派」とは
1960年代末に始まり1970年代中期まで続いた日本の現代美術の大きな芸術運動のことです。
代表的な作家としては斎藤義重から教えを受けた関根伸夫、菅木志雄などがあります。
もの派が実践したのは、石、木、紙、綿、鉄板、パラフィンといった〈もの〉をほとんど手を加えずそのまま作品にし、素材同士の新たな関係性を提示するという試みでした。
個別の「もの」や「空間」だったものが互いに結びつき、これまで見過ごされてきた「世界」と私たちとの間に新たな「出会い」をもたらします。李禹煥は石や鉄、あるいはキャンバスや筆との弛まぬ静かな対話を通して、その「出会い」を見出しました。
李禹煥の作品は「作らない」という意図的な行為から生まれる余白を特徴としており、東洋的、西洋的というカテゴライズにあてはまることなく、誰にも追随できない李禹煥独自の表現方法を確立しました。哲学と関わりの深い美術ですので難しく思われますが、李禹煥は作品を考えすぎず感じてほしいと考えているそうです。
李禹煥と安藤忠雄
日本を代表する建築家・安藤忠雄とコラボレーションした美術館が直島のベネッセアートサイトにあります。
海と山に囲まれた谷間にあるこの美術館は1970年代から現在に到るまでの絵画・彫刻を、広場では自然石と鉄板を組み合わせ、極力つくることを抑制した彫刻作品を展示しています。アーティストと建築家の互いの世界が響きあう空間を体感できることができるでしょう。