上村松篁の作品相場と価値|花鳥画の第一人者の魅力を解説

  • 上村松篁
  • 花鳥画

はじめに

「鳥の生活を理解しなければ、鳥は描けない」――この言葉に象徴されるように、上村松篁は徹底した写生を通じて花鳥画の新たな可能性を切り開いた画家です。

母・松園に続いて文化勲章を受章し、息子・淳之とともに日本画壇で輝かしい功績を残した松篁。その作品は、現代美術市場においても高く評価されています。

本記事では、上村松篁の画業と作品の価値についてご紹介します。作品の買取に関する情報も含まれていますので、作品をお持ちの方はぜひご参考にしてください。

春輝
春輝

上村松篁とは?

上村松園の息子として

1902年、近代美人画の大家・上村松園の一人息子として京都に生まれた松篁。幼少期の松篁は、絵に没頭する母・松園と接する機会が少なく、彼女を「二階のお母さん」と呼んでいたといいます。

松篁は骨董品や絵画の目録を通じて、美術的な感性や品格を学びました。母が美人画に専心したのに対し、松篁は幼少期から親しんだ鳥や草花の世界に魅了され、花鳥画という独自の道を歩み始めます。

画家としての歩み

1915年、京都市立美術工芸学校絵画科に入学した松篁は、都路華香(みやじかこう)、西村五雲(にしむらごうん)らに学び、特待生として頭角を現しました。

1921年には京都市立絵画専門学校に進学し、国画創作協会の入江波光(いりえはこう)からリアリズム様式を学び、さらに西山翠嶂(にしやますいしょう)の画塾に入って研鑽を積みます。

1924年に第5回帝展に『椿の図』を出品し、画壇での評価を確立していきました。

1930年に京都市立絵画専門学校研究科を修了後、同校の講師として後進の育成に尽力しました。この間、池田遥邨(いけだようそん)らと水明会を結成し、美術史上の古典を参考に新たな表現に挑戦しました。

1936年には同校助教授に就任。この頃、池田遥邨、徳岡神泉、山口華楊らと水明会を結成。アルタミラの洞窟壁画や古代エジプトの浮彫など、美術史上の古典を参考にしつつ、動物画や人物画の新たな表現に挑戦しました。

戦後、松篁は日本画の革新を目指し、1948年に創造美術を結成。この団体は現在の創画会としてその精神を受け継いでいます。

母子の雀
母子の雀

写生の追求

松篁の芸術の特徴として特筆すべきは、その徹底した写生への姿勢です。「鳥の生活を理解しなければ、鳥は描けない」という信念を持ち、松篁はインドやオーストラリア、東南アジアを旅して、現地の鳥の生態を学びました。

さらに、奈良市郊外のアトリエ敷地内に大規模な禽舎(きんしゃ)を設け、約280種類、1,000羽を超える鳥を飼育し、生涯にわたって観察を続けました。この研究が、鳥の動きや表情を生き生きと捉えた精緻な描写を可能にし、芸術性と生態学的正確性を見事に融合させています。

受賞と評価

1928年、第9回帝展で『蓮池群鴦図』が特選を受賞したことで、松篁の名は広く知られるようになりました。その後、1967年には『樹下幽禽(じゅかゆうきん)』で日本芸術院賞を受賞。

1981年には日本芸術院会員に選出され、1983年には文化功労者として顕彰。

そして1984年、母・松園に続き、画家として文化勲章を受章し、名実ともに日本画壇の巨匠としての地位を確立しました。

うさぎ
うさぎ

上村松篁の作品の魅力や特徴

代表作に見る技法と特徴

松篁の代表作には『星五位(ほしごい)』(1958年、東京国立近代美術館蔵)、『樹下幽禽(じゅかゆうきん)』(1966年、日本芸術院蔵)、『閑鷺(かんさぎ)』(1977年、山種美術館蔵)などがあります。

特に『星五位』は、徹底した写生と洗練された美意識が高く評価され、1959年に芸術選奨文部大臣賞を受賞しています。

参考:『星五位』の作品は東京国立近代美術館のサイトからご確認下さい。

画風と写実表現

松篁の画風は、円山四条派の写実を継承しつつも、現代的な感性を加えたもので、透き通るような色調と品格を特徴としています。鳥や草花の繊細な描写の中に、生命感と幻想的な美が融合しています。

尾長
尾長

作品の見どころと評価ポイント

晩年の作品は、気品あふれる花鳥画として特に高い評価を得ています。背景まで丁寧に描き込まれた構図や、細部まで精緻に表現された鳥の動きが魅力です。松篁の花鳥画は、生き物への深い愛情と自然への敬意が随所に表れています。

上村松篁作品の買取相場・実績

※買取相場価格は当社のこれまでの買取実績、および、市場相場を加味したご参考額です。実際の査定価格は作品の状態、相場等により変動いたします。

ハイビスカス

買取実績価格:120~150万円

赤い花と鳥は作家を代表するモチーフです。鳥の観察のためにインドやオーストラリア、東南アジア等を旅行し熱帯~亜熱帯地方の花の作品も多く制作しています。

花石榴

買取実績価格:70~100万円

石榴は沢山の果肉を持ち、子孫繁栄をあらわす縁起の良い果実とされており、仏教では「吉祥果」というおめでたい呼び方をします。

八仙花

買取実績価格:20~30万円

八仙花は紫陽花の別名です。葉を水墨で描く事により、紫陽花の艶やかなブルーがより引き立ちます。

上村松篁作品の査定・買取について、まずはお気軽にご相談ください。

上村松篁の作品を高値で売却するポイント

上村松篁の鑑定機関・鑑定人

  • 東美鑑定評価機構 鑑定委員会
    一般財団法人東美鑑定評価機構は、美術品の鑑定による美術品流通の健全化及び文化芸術の振興発展に寄与する公的鑑定機関。

来歴や付帯品・保証書

来歴や付帯品:購入先の証明や美術館に貸出、図録に掲載された作品等は鑑定書が付帯していなくても査定できる場合があります。
保証書:購入時に保証書が付帯する作品もあるので大切に保管しましょう。

贋作について

ここ数十年のインターネットや化学技術の向上により、著名作家の贋作が多数出回っています。

ネットオークションでは全くの素人を装い、親のコレクションや資産家所蔵品等の名目で出品し、ノークレームノーリターンの条件での出品が見受けられます。

落札者は知識がないがために落札後のトラブルの話をよく聞きます。お手持ちの作品について「真贋が気になる」「どの様に売却をすすめるのがよいか」等、お困りごとがあればご相談のみでも承っております。

日本画(額)

状態を良好に保つ為の保管方法

日本画は主に紙や絹に岩絵具で描かれており、湿気やカビにとても弱いです。また直射日光などは酸化の原因になり、劣化します。直射日光を避け、涼しい場所に飾りましょう。また箱にしまったままも湿気やすい為、最低でも年に2回は風を通すようにしましょう。

修復方法

日本画修復の専門店にお願いすることが1番です。下手に自身で手を入れると、返って悪化するケースもあります。

共シール

「共(とも)シール」とはいわば、日本画に付帯する作品証明のような物です。多くは表題(絵のタイトル)と作家名が、作家自身の直筆で書かれており、絵画の裏面に貼ってあります。共シールの有無により評価が変わる場合があるので、ご所有の作品にあるか確認してみてください。

掛軸

状態を良好に保つ為の保管方法

掛軸は主に紙や絹に岩絵具で描かれており、湿気やカビにとても弱いです。また直射日光などは酸化の原因になり、劣化します。直射日光を避け、涼しい場所に飾りましょう。また箱にしまったままも湿気やすい為、最低でも年に2回は風を通すようにしましょう。

共箱(ともばこ)

掛軸を収納する箱の事で、蓋の表に表題(作品タイトル)、蓋の内側に作家のサインが作家自身の直筆で記載されてあります。共箱は掛軸の証明書の役割をしており、無い場合は査定額に響いてきます。

書付、識箱・極箱

共箱の分類に書付(かきつけ)と識箱(しきばこ)・極箱(きわめばこ)があります。書付とは茶道具を中心に各家元が優れた作品に対して銘や家元名を共箱に記します。識箱・極箱は、作者没後、真贋を証明する為、鑑定の有識者や親族が間違いがないと認定した物に共箱の面や裏に記します。

版画

共通事項(状態を良好に保つ為の保管方法)

版画には有名画家が直接携わり監修した作品も多くあります。主に版画作品下部に作家直筆サインとエディション(何部発行した何番目の作品であるか)が記載されています。

主に紙に刷られており、湿気や乾燥に弱いです。また直射日光が長期間当たると色飛びの原因になります。掛ける場所・保管場所には十分注意しましょう。

リトグラフ

石版画とも言われ、ヨーロッパの歴史では古くから用いられてきました。日本でも昭和から活発に使用され、各地にリトグラフ専門の工房が存在します。

木版画

板に彫刻し、絵を描いた後に凸部分に色を塗り、紙に写しとる技法です。

シルクスクリーン

枠にメッシュ素材(シルクやナイロン)の布を張り、油性描画剤で直接絵を描いたり、マスキングをし絵の具の通る部分通らない部分を作った版を紙に乗せ写しとる技法です。絵画以外にも写真や被服等にも応用されています。

上村松篁についての補足情報

主要美術館での収蔵作品

松篁の代表的な作品は、以下の美術館で見ることができます。これらの作品は、松篁の芸術性の高さを示す重要な作品として評価されています。

松伯美術館と代表作

1994年に開館した松伯美術館では、上村三代(松園・松篁・淳之)による寄贈作品を展示しています。ここでは『万葉の春』(1970年)をはじめとする貴重な作品を見ることができます。松篁の芸術の全貌を知る上で、重要な美術館となっています。

上村三代の芸術的系譜

上村松篁は、母・松園、息子・淳之とともに日本画壇で活躍した上村三代として知られています。母・松園は美人画を極め、松篁は花鳥画の道を歩み、その息子・淳之も父の影響を受けて花鳥画家として活躍しています。

上村家は日本美術史上、極めて稀有な存在として知られており、松園、松篁、淳之の三代揃っての文化勲章受章は、その芸術性の高さを示す証となっています。この上村三代の偉業は、日本美術史に大きな足跡を残し続けています。

まとめ

上村松篁は、その徹底した写生と独自の美意識によって、花鳥画に新たな価値をもたらしました。作品の生き生きとした描写や格調高い表現力は、今なお多くの人々を魅了しています。松篁の作品をお持ちの方は、その価値を再発見するきっかけとしていただければ幸いです。

当社では、あなたの大切な作品の価値を最大限に引き出すべく、丁寧な査定と適切なアドバイスを提供いたします。上村松篁の作品の買取をご検討される際は、ぜひお問い合わせください。

上村松篁の作品の買取をご検討される際はこちらをご覧下さい。

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