竹内栖鳳:近代日本画の巨匠と作品の価値 – 買取のポイントから美術館情報まで

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  • 竹内栖鳳

はじめに

みなさん、日本美術史に輝く巨星、竹内栖鳳(たけうち せいほう)をご存知でしょうか?明治から昭和にかけて活躍し、近代日本画に革新をもたらした画家です。「東の大観、西の栖鳳」と称された栖鳳の作品は、今なお高い評価を受け、美術品市場でも注目を集めています。

今回は、竹内栖鳳の生涯と作品の魅力をご紹介します。作品の買取に関する情報もありますので、栖鳳の作品に興味のある方、買取を検討している方は、ぜひ最後までお読みください。

みなさんは、竹内栖鳳の作品を実際に見たことはありますか?もし機会があれば、ぜひ美術館で彼の作品を鑑賞してみてください。きっと新たな発見があるはずです。

最後の名人 竹内栖鳳
班猫

竹内栖鳳とは?

近代日本画の巨匠としての足跡

竹内栖鳳は、1864年(元治元年)、京都市で生まれました。近代京都の日本画界に最も大きな影響を与えた画家として、その名は広く知られています。

幼少期から絵の才能を発揮した栖鳳は、13歳で四条派の土田英林に師事。17歳になると、幸野楳嶺の私塾に入門し、「鳳は梧桐に棲み竹実を喰う」という古語に由来する「棲鳳(せいほう)」の画号を授かります。その卓越した才能から、栖鳳は「楳嶺四天王」の筆頭と呼ばれるまでに至りました。

※楳嶺四天王:菊池芳文、谷口香嶠、竹内栖鳳、都路華香

1887年、京都府画学校(現京都市立芸術大学)を卒業した栖鳳は、画家として独立の道を歩み始めます。数々の博覧会で受賞を重ね、京都の若手画家の中でも革新的な存在として、その名声を確立していきました。

栖鳳の評価は、日本国内にとどまりません。1900年のパリ万博では、『雪中燥雀』が銀牌を受賞。この快挙により、世界で通用する日本画家としての地位を不動のものとしたのです。

そして1937年、栖鳳は横山大観と並んで第1回文化勲章を受章します。ここに至り、近代日本画の歴史において「西の栖鳳、東の大観」と称されるほどの存在となったのです。

雪中燥雀
雪中燥雀

出典:文化遺産オンライン

独自画風:伝統と革新の融合

栖鳳の画風は、円山四条派の写生技法を基礎としつつ、様々な要素を融合させて形成されていきました。

まず、円山・四条派の伝統を引き継ぎ、写生を重視する姿勢を貫きます。同時に、狩野派や大和絵の技法も研究し、それらを自身の作品に巧みに取り入れていきました。

1900年のヨーロッパ遊学は、栖鳳の画風に大きな影響を与えます。特にウィリアム・ターナーやカミーユ・コローの作品に感銘を受けた栖鳳は、帰国後、西洋画の写実性を取り入れた作品を次々と発表。日本画の世界に新風を吹き込んだのです。

帰国後、栖鳳はその経験を反映させ、画号も「棲鳳」から西洋を意味する「西」に由来する「栖鳳」へと改めました。そして、『獅子(金獅子)』『スエズ景色』『羅馬之図(ろうまのず)』といった作品を立て続けに世に送り出します。これらの作品では、ヨーロッパで目にした珍しい動物や異国の風景を題材に、西洋画と日本画の技法を巧みに融合させた新しい表現を展開。当時の日本人の目には斬新で魅力的に映ったことでしょう。

さらに栖鳳は、東洋画や水墨画の伝統も自身の作品に融合させていきます。こうして形成された栖鳳独自の画風は、伝統と革新を巧みに調和させたものとして高く評価されています。その作品は、近代日本画に鮮烈な色彩と生命力を吹き込んだと称されるほどです。

スエズ景色
スエズ景色

出典:文化遺産オンライン

竹内栖鳳の作品の魅力や特徴

竹内栖鳳の作品の中で、特に印象に残っているものはありますか?それとも、これから紹介する代表作の中に、興味をそそられるものはあるでしょうか?

代表作と評価

竹内栖鳳の代表作には、『班猫』『大獅子図』『羅馬之図』『絵になる最初』などがあります。

班猫(1924年)

最後の名人 竹内栖鳳
班猫

『班猫』(1924年)は、重要文化財に指定されている栖鳳の最も有名な作品の一つです。キジ白の猫が毛づくろいをする姿を描いたこの作品は、写実的なフワフワとした毛並みと、ブルーグリーンの瞳が印象的です。栖鳳の繊細な描写力と卓越した色彩感覚が遺憾なく発揮された傑作といえるでしょう。

大獅子図(1902年)

大獅子図

『大獅子図』(1902年)は、栖鳳がヨーロッパの動物園で写生したライオンを描いた作品です。それまでの日本画で描かれてきた想像上の「唐獅子」とは異なる、写実的なライオンの姿が描かれており、当時の日本の人々に大きな衝撃を与えました。

羅馬之図(1903年)

羅馬之図
羅馬之図

出典:文化遺産オンライン

『羅馬之図』(1903年)は、栖鳳のヨーロッパ遊学の成果が集大成された作品です。ローマの風景を描いたこの作品では、やわらかな光の加減や湿気を含んだ空気感が表現され、従来の日本画にはない新しい表現方法を示しました。

絵になる最初

最後の名人 竹内栖鳳
絵になる最初

『絵になる最初』は、栖鳳の人物画の代表作として知られています。モデルの女性のふとした仕草を的確にとらえており、栖鳳の鋭い洞察力が発揮された作品です。

これらの作品は、栖鳳の優れた観察眼と描写力、そして伝統と革新を融合させる独自の画風を示すものとして高く評価されています。これらの作品の中で、特にあなたの心に響いたものはありましたか?もし機会があれば、美術館に足を運んでみてはいかがでしょうか?実際に作品を目の当たりにすることで、栖鳳の芸術世界をより深く体感できるはずです。

雀の図柄

雀の図柄

「動物を描けば、その匂いまで描く」といわれた達人です。犬や鳥など動物が描かれた日本画も多く描いていますが、中でも雀の図柄は人気が高く、バブル期には1羽100万円と言われた時代もありました。

独自の技法と表現

竹内栖鳳の作品の特徴として、以下の点が挙げられます:

  1. 精緻な動物画:栖鳳は「けものを描けば、その匂いまで表現できる」と言われるほど、動物を生き生きと描くことに長けていました。特に猫や鳥、昆虫などの小動物の描写に優れており、その精密な表現は観る者を魅了します。
  2. 写生の重視:栖鳳は写生を非常に重視し、実物の観察に基づく正確な描写を心がけました。例えば、兎や猿、家鴨などを実際に自宅で飼って写生したという逸話も残っています。
  3. 西洋画技法の融合:ヨーロッパ遊学後、栖鳳は西洋画の遠近法や光の表現を日本画に取り入れました。これにより、従来の日本画にはない奥行きや立体感を表現することに成功しました。
  4. 繊細な筆致と色彩感覚:栖鳳の作品は、繊細な筆致と豊かな色彩感覚が特徴です。例えば、動物の毛並みや樹々の葉の描写には、細やかな観察と卓越した技術が感じられます。
  5. 伝統と革新の調和:栖鳳は日本画の伝統的な技法を守りつつ、新しい表現方法を模索し続けました。この姿勢が、近代日本画に新たな可能性を開いたとされています。

このような特徴を持つ栖鳳の作品は、当時の美術界に大きな影響を与え、今日でもその価値が広く認められています。

鳥図
鳥図

竹内栖鳳作品の買取相場・実績

※買取相場価格は当社のこれまでの買取実績、および、市場相場を加味したご参考額です。実際の査定価格は作品の状態、相場等により変動いたします。

秋霽

秋霽
買取実績価格:21万円

人気の図柄

喜雀
喜雀

出典:MOA美術館

作品の補足事項:28羽の雀のうち、22羽は画面左側に、残りの6羽は右側に配置されています。画面左側では、多くの雀が集まり躍動感あふれる様子が、一方の右側では、少数の雀が静かに佇む対照的な情景が描かれています。

栖鳳の作品の中でも、特に雀の図柄は人気が高く、高値で取引されることがあります。繊細な筆致で描かれた雀の姿は、栖鳳の卓越した観察眼と技術を如実に表しています。

竹内栖鳳の作品を高値で売却するポイント

竹内栖鳳の鑑定機関・鑑定人

東美鑑定評価機構 鑑定委員会

一般財団法人東美鑑定評価機構は、美術品の鑑定による美術品流通の健全化及び文化芸術の振興発展に寄与する公的鑑定機関。

贋作

竹内栖鳳の作品は高い芸術的価値と経済的価値を持つため、残念ながら贋作の問題も存在します。栖鳳作品を含む日本画の贋作には、以下のような特徴が見られることがあります。

筆の運びが不自然:本物の作品では、筆の運びが滑らかで力強いのに対し、贋作では筆の動きがぎこちなく、力強さに欠ける場合があります。
色彩の不調和:栖鳳の本物の作品では、色彩のバランスが絶妙です。贋作では、色の組み合わせが不自然に見える場合があります。
署名や印章の不自然さ:贋作では、署名の筆跡が本物と微妙に異なったり、印章の押し方が不自然だったりすることがあります。
紙や絹の質感の違い:本物の作品で使用されている材料と、贋作で使用されている材料の質感が異なる場合があります。

作品の真贋を見分けるのは専門家でも難しい場合があります。そのため、栖鳳作品の取引や評価を行う際は、必ず信頼できる専門家による鑑定を受けることが重要です。また、作品の来歴(プロヴェナンス)を確認することも、真贋を判断する上で重要な要素となります。

来歴や付帯品・保証書

来歴や付帯品:購入先の証明や美術館に貸出、図録に掲載された作品等は鑑定書が付帯していなくても査定できる場合があります。
保証書:購入時に保証書が付帯する作品もあるので大切に保管しましょう。

日本画(額)

状態を良好に保つ為の保管方法

日本画は主に紙や絹に岩絵具で描かれており、湿気やカビにとても弱いです。また直射日光などは酸化の原因になり、劣化します。直射日光を避け、涼しい場所に飾りましょう。また箱にしまったままも湿気やすい為、最低でも年に2回は風を通すようにしましょう。

修復方法

日本画修復の専門店にお願いすることが1番です。下手に自身で手を入れると、返って悪化するケースもあります

共シール

「共(とも)シール」とはいわば、日本画に付帯する作品証明のような物です。多くは表題(絵のタイトル)と作家名が、作家自身の直筆で書かれており、絵画の裏面に貼ってあります。共シールの有無により評価が変わる場合があるので、ご所有の作品にあるか確認してみてください。

掛軸

状態を良好に保つ為の保管方法

掛軸は主に紙や絹に岩絵具で描かれており、湿気やカビにとても弱いです。また直射日光などは酸化の原因になり、劣化します。直射日光を避け、涼しい場所に飾りましょう。また箱にしまったままも湿気やすい為、最低でも年に2回は風を通すようにしましょう。

共箱(ともばこ)

掛軸を収納する箱の事で、蓋の表に表題(作品タイトル)、蓋の内側に作家のサインが作家自身の直筆で記載されてあります。共箱は掛軸の証明書の役割をしており、無い場合は査定額に響いてきます。

書付、識箱・極箱

共箱の分類に書付(かきつけ)と識箱(しきばこ)・極箱(きわめばこ)があります。
書付とは茶道具を中心に各家元が優れた作品に対して銘や家元名を共箱に記します。
識箱・極箱は、作者没後、真贋を証明する為、鑑定の有識者や親族が間違いがないと認定した物に共箱の面や裏に記します。

版画

共通事項(状態を良好に保つ為の保管方法)

版画には有名画家が直接携わり監修した作品も多くあります。主に版画作品下部に作家直筆サインとエディション(何部発行した何番目の作品であるか)が記載されています。主に紙に刷られており、湿気や乾燥に弱いです。また直射日光が長期間当たると色飛びの原因になります。掛ける場所・保管場所には十分注意しましょう。

竹内栖鳳についての補足情報

栖鳳作品を所蔵する主要美術館

竹内栖鳳の作品は、日本各地の美術館で鑑賞することができます。主な所蔵館としては以下があります:

  1. 東京国立近代美術館:『雨霽』『日稼』『海幸』など8点を所蔵しています。(2024年7月時点)
  2. 京都国立近代美術館:『春雪』『漁村松濤』『若き家鴨』など23点を所蔵しています。(2024年7月時点)
  3. 京都市美術館:重要文化財の『絵になる最初』をはじめ、『潮沙永日』『清閑』『驟雨一過』などを所蔵しています。
  4. 山種美術館(東京都):重要文化財の『班猫』や『みゝづく』『蛙と蜻蛉』『四季短冊』などを所蔵しています。
  5. 海の見える杜美術館(広島県):『羅馬之図』『春秋屏風』『家兎』などを所蔵しています。

これらの美術館を訪れることで、栖鳳の作品を直接鑑賞し、その魅力を体感することができます。

近年の栖鳳作品市場動向

竹内栖鳳の作品は、現代の美術市場においても高い人気を誇っています。特に動物を描いた作品や、ヨーロッパ遊学後に制作された作品は人気が高く、オークションなどでも高値で取引されることがあります。

近年の傾向としては、以下のような点が挙げられます:

  1. 動物画の人気:栖鳳の得意とした動物画、特に猫や鳥を描いた作品は根強い人気があります。
  2. 晩年の作品の再評価:栖鳳の晩年に制作された水墨風景画など、これまであまり注目されていなかった作品が再評価される傾向にあります。
  3. 真贋問題の影響:贋作の存在により、確実な真作に対する需要が高まっています。そのため、来歴の明確な作品や、信頼できる鑑定を受けた作品の価値が上昇しています。

このような市場動向を踏まえると、竹内栖鳳の作品は今後も安定した評価を受け続けると予想されます。ただし、個々の作品の価値は状態や主題、制作時期などによって大きく異なるため、専門家のアドバイスを受けることが重要です。

栖鳳が育てた弟子たち

竹内栖鳳は、多くの優れた弟子を輩出したことでも知られています。1897年頃から「竹杖会」と称する画塾を主宰し、明治中期以降の京都画壇では最も大きな画塾となりました。

栖鳳の門下からは、以下のような著名な画家が輩出されました:

  1. 上村松園:美人画で知られる日本画家。
  2. 西山翠嶂:風景画や花鳥画で高い評価を得た画家。
  3. 西村五雲:動物画では栖鳳を凌ぐとも言われた画家。
  4. 土田麦僊:新しい日本画の表現を追求した画家。
  5. 橋本関雪:「新南画」を確立した画家。

これらの弟子たちは、栖鳳から学んだ技法や精神を継承しつつ、それぞれ独自の画風を確立し、近代日本画の発展に大きく貢献しました。

まとめ

竹内栖鳳は、近代日本画に革新をもたらした巨匠として、今なお高い評価を受けています。伝統的な日本画の技法を基礎としながら、西洋画の要素を取り入れ、独自の画風を確立した栖鳳の作品は、芸術的価値だけでなく、投資的価値も高いと言えるでしょう。

栖鳳の作品の特徴である精緻な動物画、繊細な筆致、豊かな色彩感覚は、多くの人々を魅了し続けています。また、栖鳳が育てた多くの弟子たちが日本画壇で活躍したことも、その影響力の大きさを物語っています。

竹内栖鳳の芸術世界、少し身近に感じていただけたでしょうか?作品をお持ちの方、興味を持たれた方は、ぜひ一度専門家による査定を検討してみてください。新たな発見があるかもしれません。芸術の旅、一緒に楽しんでいきましょう。

竹内栖鳳作品の売却に関するご相談は、専門家にお任せください。経験豊富なスタッフが、作品の査定から売却までを丁寧にサポートいたします。まずは、お気軽にお問い合わせください。

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