杉山寧作品の買取相場|日展三山の巨匠が残した作品価値【2025年版】

はじめに

日本画の巨匠・杉山寧という名を聞いて、どのような印象をお持ちでしょうか。東山魁夷、高山辰雄と並び称される「日展三山*」の一人として、戦後の日本画壇を代表する画家の一人です。

類まれな描写力を持ち、大胆かつ知的な画面構成で知られる昭和の日本画家、それが杉山寧です。ギリシャ神話やエジプトの古代遺跡など、それまでの日本画では描かれることのなかった斬新なモチーフに挑戦し、日本画壇に新しい風を吹き込んだ画家として、現在も高い評価を受けています。

今回は、そんな杉山寧の生涯と作品の魅力をご紹介します。作品の価値に関する情報もご用意していますので、杉山寧作品をお持ちの方、売却をご検討の方は、ぜひ最後までお読みください。

※日展三山:東山魁夷、杉山寧、高山辰雄の3人を指す呼称。戦後の日本画壇を代表する画家として高い評価を受けた。

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杉山寧とは?

日本画壇における功績と評価

1909年、東京都浅草区の文房具店を営む家に生まれた杉山寧。父が早くに他界したため、母手一つで育てられました。画家を志し、1928年に東京美術学校(現・東京芸術大学)に入学。松岡映丘に師事し、在学中から頭角を現していきます。

印象的なのは、在学中からの「帝展*」での活躍です。1931年、第12回帝展では「水辺」が初出品にして入選を果たし、翌年の第13回帝展では「磯」が特選を受賞。その才能の片鱗を早くも見せていました。

1933年には東京美術学校を首席で卒業。その後、山本丘人、高山辰雄らと「瑠爽画社*」を結成し、日本画の革新を目指す運動に携わっていきます。

瑠爽画社での活動は、杉山の芸術家としての姿勢を形作る重要な経験となりました。同人たちと共に新しい日本画の可能性を探り、伝統的な技法を基礎としながらも、新たな表現方法を模索し続けました。この時期の経験は、後の独自の画風確立への礎となったのです。

※帝展:帝国美術院展覧会の略称。現在の日展の前身となる国内最大規模の美術展覧会。 ※瑠爽画社:1934年に結成された日本画の研究会。若手日本画家たちが集まり、新しい日本画の可能性を追求した。

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芸術家としての転換点

杉山の画家人生において、大きな転換点となったのが1938年の肺結核罹患です。この病により、12年もの間、創作活動を休止せざるを得ませんでした。

療養に励み、病を克服した杉山は、創作活動の再開を決意。この長い沈黙を破り、1951年の第7回日展において記念すべき大作「エウロペ」を世に送り出しました。ギリシャ神話を題材に、巨牛の背に座す裸婦という斬新なテーマで世間に衝撃を与えました。

1962年には初めての海外旅行でエジプトとヨーロッパ各地を訪れ、この経験が後の作風に大きな影響を与えることになります。中東地域への深い関心から、古代エジプトの遺跡や、ギリシアの神殿、トルコの歴史的建造物など、従来の日本画には見られなかった作品を数多く手掛けていきました。

このような革新的な取り組みが認められ、1974年には文化勲章を受章。文化功労者としても顕彰され、名実ともに日本画壇の重鎮としての地位を確立していきました。

では、杉山寧はどのような独自の表現技法を確立し、作品に魅力を込めていったのでしょうか。

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杉山寧の作品の魅力や特徴

独自の表現技法

杉山寧の作品を支える最大の特徴は、確かな素描力にあります。対象を緻密に観察し、的確に表現できる卓越した技術を持ち、同時に構図や画面構成という空間把握能力にも秀でていました。これらの技術を基礎に、知的で気品ある画面空間を作り出していったのです。

1960年以降は抽象表現にも傾倒していきます。際立っているのは、質感へのこだわりです。日本画で用いられる伝統的な画材である和紙や絹に描くのではなく、洋画で使用されるキャンバスを用い、岩絵具に砂を混ぜ合わせて使用。独特な質感表現を追求していきました。

作風の発展と変遷

杉山の作風は、時代とともに大きく変化を遂げていきます。戦前の作品では、日本画の伝統的な技法を極めた超絶技巧で知られていました。しかし戦後、作風を一新し、岩絵具を用いながらも線描などの日本画の技法を革新。独自の「マチエール」にこだわった表現を確立していきました。

とりわけ1960年代以降の作品では、抽象と写実を融合させた二重構造による新たな表現世界を築き上げます。この独自の表現は「造形主義」と評され、抽象的な思考を形として表現しようとする試みが込められています。

※マチエール:絵画における物質的な表面の質感、肌理(きめ)のこと。

※造形主義:抽象と写実を融合させた二重構造による表現様式。杉山独自の芸術表現を指す言葉として使われた。

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代表作品と芸術的価値

杉山寧ホームページから各作品がご覧いただけます。

「エウロペ」(1951年)

病を克服して戦後初めて発表した大作です。 ギリシャ神話に由来したかつてないテーマと重厚な描写、シンプルな画面構成により導き出したモダンな感覚が、大きな話題を集めました。

「穹(きゅう)」(1962年)

エジプトをテーマにした連作の一つです。 見上げるように配置されたスフィンクスの姿は威厳に満ち、古代文明の荘厳さに魅了された画家の想いが感じられる作品となっています。さまざまな角度から見た膨大な写生が残されており、表現を追求し続けた杉山の姿勢がうかがえます。

「水」(1965年)

エジプト旅行の経験を基に描かれた横幅約2メートルの大作です。 水瓶を頭に乗せた黒衣の女性の背後に、鮮やかな青で水が表現されており、深い青と柔和な表情を浮かべた女性のコントラストが見事な調和を生み出しています。作品に施された独特な質感は、エジプトの砂漠を思わせる効果をもたらしています。

「晶」と裸婦連作

1969年に第1回改組日展に出展した「晶」をはじめとする裸婦をテーマにした連作も重要な作品群です。 当時の日本画ではあまり描かれることのないモチーフでしたが、杉山はこれらの作品を通して、新しい空間構成を生み出すことに成功。縦や横、動きと静寂、浮遊と重さなど、各作品で異なる叙情的な空間を見事に描き出しています。

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杉山寧作品の買取相場・実績

※買取相場価格は当社のこれまでの買取実績、および、市場相場を加味したご参考額です。実際の査定価格は作品の状態、相場等により変動いたします。

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買取実績価格:210万円

水瓶と桃

水瓶と桃
買取実績価格:25万円

杉山寧の作品の査定・買取について、まずはお気軽にご相談ください。

杉山寧の作品を高値で売却するポイント

杉山寧の鑑定機関・鑑定人

  • 東美鑑定評価機構 鑑定委員会
    一般財団法人東美鑑定評価機構は、美術品の鑑定による美術品流通の健全化及び文化芸術の振興発展に寄与する公的鑑定機関。

来歴や付帯品・保証書

来歴や付帯品:購入先の証明や美術館に貸出、図録に掲載された作品等は鑑定書が付帯していなくても査定できる場合があります。
保証書:購入時に保証書が付帯する作品もあるので大切に保管しましょう。

贋作について

ここ数十年のインターネットや化学技術の向上により、著名作家の贋作が多数出回っています。ネットオークションでは全くの素人を装い、親のコレクションや資産家所蔵品等の名目で出品し、ノークレームノーリターンの条件での出品が見受けられます。

落札者は知識がないがために落札後のトラブルの話をよく聞きます。お手持ちの作品について「真贋が気になる」「どの様に売却をすすめるのがよいか」等、お困りごとがあればご相談のみでも承っております。

日本画(額)

状態を良好に保つ為の保管方法

日本画は主に紙や絹に岩絵具で描かれており、湿気やカビにとても弱いです。また直射日光などは酸化の原因になり、劣化します。直射日光を避け、涼しい場所に飾りましょう。また箱にしまったままも湿気やすい為、最低でも年に2回は風を通すようにしましょう

修復方法

日本画修復の専門店にお願いすることが1番です。下手に自身で手を入れると、返って悪化するケースもあります

共シール

「共(とも)シール」とはいわば、日本画に付帯する作品証明のような物です。多くは表題(絵のタイトル)と作家名が、作家自身の直筆で書かれており、絵画の裏面に貼ってあります。共シールの有無により評価が変わる場合があるので、ご所有の作品にあるか確認してみてください。

水彩・デッサン

状態良好、保管方法

主に紙に描かれていることの多い水彩やデッサンは、モチーフに対して紙の余白がある反面、しみや日焼けが目立つ事があります。

版画

共通事項(状態を良好に保つ為の保管方法)

版画には有名画家が直接携わり監修した作品も多くあります。主に版画作品下部に作家直筆サインとエディション(何部発行した何番目の作品であるか)が記載されています。

主に紙に刷られており、湿気や乾燥に弱いです。また直射日光が長期間当たると色飛びの原因になります。掛ける場所・保管場所には十分注意しましょう。

リトグラフ

石版画とも言われ、ヨーロッパの歴史では古くから用いられてきました。日本でも昭和から活発に使用され、各地にリトグラフ専門の工房が存在します。

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杉山寧についての補足情報

美術館での評価と所蔵

東京国立近代美術館
東京国立近代美術館

杉山寧の作品は、国内の主要な美術館に数多く収蔵されています。東京国立近代美術館には「穹」をはじめとする3点が、ポーラ美術館には「洸」など10点が所蔵されています。また、天童市美術館にも「げい」をはじめとする12点が収められており、その芸術性の高さを今に伝えています。

これらの作品群は、杉山の芸術的軌跡を辿る上で重要な意味を持っています。特に東京芸術大学大学美術館所蔵の「野」(1933年)は、大学の卒業制作として首席を獲得した記念碑的な作品であり、初期の才能を示す貴重な存在となっています。

現代における評価と影響

東京芸術大学での教育者としての活動は、杉山の重要な功績の一つです。また、1956年から1986年12月号まで『文藝春秋』の表紙画を描き続けるなど、芸術活動の幅広さも注目されています。

杉山の芸術は、日本画の新たな可能性を切り開いたという点で、現代の日本画壇に大きな影響を与えています。伝統的な日本画の技術をしっかりと身につけた上で、洋画表現などの多様な技法を取り入れ、非常に自由なスタイルを確立。従来の日本画の概念を超えた斬新な表現は、国内外で高い評価を得ています。

また、杉山は亡くなる直前まで納得いくまで絵を修正し続けるなど、完璧主義者としても知られていました。この真摯な創作態度は、現代の日本画家たちにも大きな影響を与え続けています。

まとめ

日本画の伝統を守りながらも、西洋画の技法を取り入れ、独自の表現を確立した杉山寧。 ギリシャ神話や古代遺跡など斬新な題材選択と、岩絵具と砂を組み合わせた質感表現など、その革新的な手法は日本画の新たな可能性を切り開きました。

東京国立近代美術館やポーラ美術館など、国内主要美術館に多数の作品が収蔵されている杉山寧の作品。所有されている方は、ぜひ専門家による適切な評価をお勧めします。

当社では、あなたの大切な作品の価値を最大限に引き出すべく、丁寧な査定と適切なアドバイスを提供いたします。杉山寧の作品の買取をご検討される際は、ぜひお問い合わせください。

また、LINEからの査定依頼も受け付けています。(スマホで写真を撮って送るだけ!)詳しくは【LINE査定ページ】をご覧ください。

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