シャガール絵画の世界:魅力・相場・高値売却のすべて【2024年最新版】

  • マルク・シャガール

はじめに

みなさん、20世紀を代表する画家、マルク・シャガールをご存知ですか?「色彩の魔術師」「愛の画家」と呼ばれ、独特の幻想的な作品で知られるシャガールの作品は、国内外で高く評価され、美術品市場でも注目を集めています。

シャガールは97年という長い人生の中で、二つの世界大戦を経験し、ロシア革命やナチスの迫害から逃れるため、何度も移住を余儀なくされました。こうした経験が、彼の芸術にどのような影響を与えたのか、一緒に見ていきましょう。

今回は、マルク・シャガールの生涯と作品の魅力をご紹介します。シャガール作品の買取に関する情報もありますので、シャガールの作品に興味のある方、買取を検討している方は、ぜひ最後までお読みください。

シャガール「エルサレムの窓」
シャガール「エルサレムの窓」

マルク・シャガールとは?

20世紀を代表する芸術家としての足跡

マルク・シャガールは、1887年7月7日、当時ロシア帝国領だったベラルーシの村ヴィーツェプスクに、ユダヤ系の家庭の長男として生を受けました。幼少期から芸術に興味を抱き、1906年には地元の美術学校で学び始めます。その後、サンクトペテルブルクの美術学校へ進学し、ロシアでの本格的な芸術教育を受けることとなりました。

1910年、シャガールは芸術の都パリへ移り住みます。当時のパリは、キュビスム*1やフォーヴィスム*2など、さまざまな前衛芸術が花開いていた時代でした。シャガールはエコール・ド・パリの画家たちと交流し、さまざまな芸術様式を吸収しながら、独自の表現スタイルを確立していきました。

※1キュビスム:キュビスムとは何か? その誕生から現代アートへと続く、美術史上の大変革を読み解く

※2フォーヴィスム:フォーヴィスム(野獣派)とは

シャガールの芸術観と表現スタイルの進化

シャガールの芸術は、キュビスムやフォーヴィズム、シュルレアリスムといった前衛的な芸術運動から大きな刺激を受けています。ところが、彼はこれらの様式を単に真似るだけではありませんでした。むしろ、自身のユダヤ系の文化的背景や幼少期の思い出と巧みに融合させ、他に類を見ない幻想的な世界観を築き上げたのです。

生涯にわたり、シャガールは物語性豊かな具象画の制作にこだわり続けました。彼のキャンバスには、ユダヤ文化の伝統や故郷の風景が鮮やかに描かれ、自身の体験が色濃く反映されています。二度の世界大戦を経験したシャガールは、その体験を通して平和への強い願いや人間の精神性を作品に込めるようになりました。

「愛の画家」という呼び名は、シャガールが妻ベラ・ローゼンフェルトへの愛情や結婚生活をテーマにした作品を数多く残したことに由来します。彼は生涯を通じて、愛する人への想いや故郷への深い愛着を、絵筆を通して表現し続けたのです。

マルク・シャガールの作品の魅力や特徴

代表作品とその特徴

シャガールの代表作として、以下の作品が挙げられます:

「私と村」(1911年)

私と村

出典:Artpedia

パリ移住後に描かれたこの作品は、シャガールの故郷の記憶とキュビスムの影響が融合した幻想的な風景を描いています。ヤギと人間の顔が向き合う構図や、逆さまの教会など、現実と非現実が交錯する独特の世界観が表現されています。

「誕生日」(1915年)

シャガール自身と妻ベラが描かれたこの作品は、愛の喜びを象徴的に表現しています。宙に浮かぶシャガールがベラにキスをする姿は、幸福感に満ちあふれています。

「青いサーカス」(1950年)

青いサーカス

出典:tate.org.uk

シャガールが好んで描いたサーカスをテーマにした作品です。青を基調とした色彩が幻想的な雰囲気を醸し出し、空中を舞う人物や動物たちが夢のような世界を創り出しています。

「オペラ座の天井画」(1964年)

パリ・オペラ座の天井画

出典:静岡市美術館

パリのオペラ座の天井を飾る大作で、音楽や舞台芸術への敬意が込められています。シャガールの晩年の代表作として知られています。

シャガール独自の技法(シャガール・ブルー)と豊かな表現

ニンフたちの洞穴
ニンフたちの洞穴

シャガールの作品の最大の特徴は、その色彩表現にあります。「色彩の魔術師」と呼ばれるほど、シャガールは色を巧みに操り、鮮やかで幻想的な画面を作り出しました。特に青を基調とした作品は「シャガール・ブルー」と呼ばれ、高い評価を受けています。

ピカソは「マティス亡きあと、シャガールのみが色が何であるかを理解している最後の絵描きだった」と評しています。シャガールの色彩感覚は、単なる装飾ではなく、感情や精神性を表現する重要な要素となっています。

シャガール作品に込められたメッセージ

シャガール作品に込められたメッセージ シャガールの作品の魅力は、現実とファンタジーが融合した独特の世界観にあります。重力を無視して宙に浮かぶ人物や動物、逆さまの建物など、一見矛盾する要素が共存する画面からは、彼の豊かな想像力と内面世界が垣間見えます。 この独自の表現方法を通じて、シャガールは様々なメッセージを作品に込めました。

その源泉となっているのが、彼のユダヤ系の文化的背景です。ハシディズムの影響を受けたシャガールは、ユダヤ教の伝統を守りつつも、「隣人愛」のような普遍的なテーマを描くことを目指しました。 また、シャガールの作品には「愛」が重要なテーマとして描かれています。妻ベラへの愛情はもちろん、故郷への郷愁、平和への願い、生命への賛歌など、様々な形の「愛」が彼の絵筆を通して表現されています。 

さらに、シャガールは物語性豊かな作品制作にも力を注ぎました。古代ギリシャの純愛小説「ダフニスとクロエ」、サーカス、アラビアンナイト、聖書など、多様な物語をモチーフにした挿画本や版画集を手がけ、文学と美術の融合を図りました。

シャガールの作品の中で、特にどの要素に魅力を感じますか?色彩豊かな表現、幻想的な世界観、それとも愛にあふれたテーマでしょうか。

扉絵:「ダフニスとクロエ」より
扉絵:「ダフニスとクロエ」より

マルク・シャガールの作品の買取相場・実績

※買取相場価格は当社のこれまでの買取実績、および、市場相場を加味したご参考額です。実際の査定価格は作品の状態、相場等により変動いたします。

ノートルダムの眺め

ノートルダムの眺め
買取実績価格:300~400万円

シャガールの移り住んだフランス パリの景色と恋人たちを淡いタッチで描いた銘品です。

虹:The Rainbow
買取実績価格:150~200万円

動物と自画像。シャガールの魅力溢れる1枚です。

ユダ族「エルサレムの窓」

#CS15 ユダ族「エルサレムの窓」
買取実績価格:50~100万円

イスラエルの首都エルサレムにあるユダヤ教会に描いたステンドグラスの下絵です。旧約聖書に出てくるヤコブの12人の息子を祖とするイスラエル12部族を描いています。

マルク・シャガールの作品を高値で売却するポイント

マルク・シャガールの鑑定機関・鑑定人

Comité Marc Chagall

来歴や付帯品・保証書

来歴や付帯品:購入先の証明や美術館に貸出、図録に掲載された作品等は鑑定書が付帯していなくても査定できる場合があります。
保証書:購入時に保証書が付帯する作品もあるので大切に保管しましょう。

贋作問題と真贋鑑定の重要性

シャガール作品の真贋鑑定には細心の注意が必要です。贋作は、署名の模倣や年代の偽装、本物の版画への彩色など、手の込んだものも存在します。特に、シャガールの人気が高まった晩年や没後に制作された偽作には要注意です。購入や売却を検討する際は、必ず信頼できる専門家による鑑定を受けることをおすすめします。

状態が悪くても買取可能?

作品によっては修復可能なレベルであれば買取できる場合があります。著しく破損・汚損が激しい作品は難しいこともあります。

油彩画(額)

状態を良好に保つ為の保管方法

油絵は主に布を張ったキャンバスと言われるものに描かれています。他にも板に直接描かれた作品もあります。油絵の具は乾燥に弱く、色によってはヒビ割れ目立つ作品が見受けられます。また、湿気によりカビなどが付着しやすく、カビが根深い場合は修復困難となってしまいます。高温多湿を避け、涼しい場所に飾りましょう。また箱にしまったままも湿気やすい為、最低でも年に2回は風を通すようにしましょう。

修復方法

油彩画修復の専門店にお願いすることが1番です。下手に自身で手を入れると、返って悪化するケースもあります。

版画

共通事項(状態を良好に保つ為の保管方法)

版画には有名画家が直接携わり監修した作品も多くあります。主に版画作品下部に作家直筆サインとエディション(何部発行した何番目の作品であるか)が記載されています。主に紙に刷られており、湿気や乾燥に弱いです。また直射日光が長期間当たると色飛びの原因になります。掛ける場所・保管場所には十分注意しましょう。

リトグラフ

石版画とも言われ、ヨーロッパの歴史では古くから用いられてきました。日本でも昭和から活発に使用され、各地にリトグラフ専門の工房が存在します。

マルク・シャガールについての補足情報

国内市場におけるシャガール作品の価値推移

ここで国内大手オークションハウスでのシャガール作品の落札価格の推移をみてみましょう。

◆油彩画・版画作品近年の落札価格例:

2024年:「サーカス」版画作品 53万円

2024年:「ニースとコート・ダジュール」版画作品 300万円

2024年:「ダフニスとクロエ」版画作品 83万円

2024年:「D.L.M誌」版画作品 65万円

2024年:グワッシュ作品 12号サイズ 5,200万円

2024年:油彩4号サイズ 5,300万円

2023年:「エルサレムの窓」版画作品 98万円

2023年:「ダフニスとクロエ」版画作品 120万円

2023年:「神々の大地で」版画作品 100万円

2023年:「ニースとコート・ダジュール」版画作品 190万円

 

◆過去10年間の最高落札価格:

2013年:ダフニスとクロエ(挿画本 フルセット) 8,000万円

2018年:油彩画15号サイズ7,000万円

2018年:グワッシュ25号サイズ6,200万円

 

1点物の作品に関しては、技法や図柄、サイズにより価格は大きく変動しますが、恋人たちを描いた図柄や華やかな色づかいの作品の評価が高いです。

リトグラフ等の版画作品は、本人のサイン・エディションが記載され、かつシリーズ作品のフルセットであれば版画作品にも関わらず数千万の評価がつく場合があるようです。

国際市場でのシャガール作品の高騰と再評価

シャガールの作品は、近年、アジアや中東などの新興市場でも注目を集めています。2023年の香港オークションでは、シャガール作品の価値が再評価される傾向が顕著に表れました。特筆すべきは、3000ドルで出品された1938年制作のペン画が、予想を大きく上回る6万2000ドルで落札されたことです。これは、シャガール作品への需要の高まりを如実に示しています。

また、シャガールの油彩画も高値で取引されています。近年の主な高額落札例は以下の通りです:

  • 《Au-dessus de la ville》(1924年):1560万ドルで落札され、シャガール作品の中で歴代4位の高額取引となりました。
  • 《Les amoureux》(1928年):2017年にニューヨークのオークションで2840万ドルという記録的な価格で落札され、現在のシャガール作品の最高落札額となっています。

こうした高額取引の連続は、シャガール作品の芸術的価値と市場価値の両面での再評価を示しています。シャガールの作品は、現代美術市場において重要な位置を占めており、コレクターや投資家からの注目度が高まっていると言えるでしょう。

シャガール作品の特徴と市場価値の傾向

シャガールの作品は、近年、アジアや中東などの新興市場でも注目を集めています。2023年の香港オークションでは、シャガール作品の価値が再評価される傾向が顕著に表れました。特筆すべきは、3000ドルで出品された1938年制作のペン画が、予想を大きく上回る6万2000ドルで落札されたことです。これは、シャガール作品への需要の高まりを如実に示しています。

また、シャガールの油彩画も高値で取引されています。近年の主な高額落札例は以下の通りです。

  • 《Au-dessus de la ville》(1924年):1560万ドルで落札され、シャガール作品の中で歴代4位の高額取引となりました。
  • 《Les amoureux》(1928年):2017年にニューヨークのオークションで2840万ドルという記録的な価格で落札され、現在のシャガール作品の最高落札額となっています。

こうした高額取引の連続は、シャガール作品の芸術的価値と市場価値の両面での再評価を示しています。シャガールの作品は、現代美術市場において重要な位置を占めており、コレクターや投資家からの注目度が高まっていると言えるでしょう。

シャガールの作品の中でも、特に「シャガール・ブルー」と呼ばれる青を基調とした作品は、市場で高い評価を受けています。また、愛をテーマにした作品や、サーカスをモチーフにした作品も人気が高く、コレクターの間で注目を集めています。

シャガールの晩年の作品、特にステンドグラスや大規模な公共芸術作品も、近年再評価が進んでいます。パリのオペラ座の天井画やノートルダム大聖堂のステンドグラス、エルサレムの窓などの作品は、シャガールの芸術の集大成として高く評価されています。

ノートルダム大聖堂のステンドグラス
ノートルダム大聖堂のステンドグラス

このように、シャガールの作品は時代を超えて人々を魅了し続けており、その市場価値は今後も安定して推移すると予想されています。美術品投資の観点からも、シャガールの作品は引き続き注目の的となっています。

シャガール作品の展示と人気

シャガールの作品は世界中の主要な美術館で展示されており、その人気は衰えを知りません。2023年にはフランスで3つの大規模なシャガール展が開催され、大きな反響を呼びました。パリのアトリエ・デ・リュミエールでの没入型展覧会、ルーベのアンドレ・ディリジェント美術歴史博物館での展示、そしてパリのポンピドゥー・センターでの展覧会は、いずれも多くの観客を集めました。

シャガールの芸術観と現代的意義

最後に、シャガールの芸術観について触れたいと思います。シャガールは、芸術を魂の表現として捉え、すべての人の魂に神聖さを見出していたと言われています。この考え方は彼の作品に深く反映されています。シャガールの絵画を鑑賞するとき、私たちは単に色彩豊かな画面を見ているのではなく、彼の魂の表現に触れているのかもしれません。そして、それは同時に私たち自身の内なる世界を映し出す鏡となり得るのです。

シャガールの芸術世界の旅はいかがでしたか?彼の作品を通じて、あなた自身の内なる色彩や物語を発見する機会になれば幸いです。芸術は、時に私たちの人生に新たな視点や感動をもたらします。シャガールの作品との出会いが、あなたの人生をより豊かで色彩豊かなものにする一助となることを願っています。

まとめ

マルク・シャガールは、20世紀を代表する画家として、その芸術性と文化的貢献により国内外で高い評価を受けています。シャガールの作品は、その独特の幻想的な世界観と豊かな色彩表現で、今なお多くの人々の心を魅了し続けています。

シャガールの芸術世界、少し身近に感じていただけたでしょうか。彼の作品には、ユダヤ文化の伝統、前衛芸術の革新性、そして普遍的な愛のメッセージが込められており、時代を超えて私たちに深い感動を与えてくれます。

あなたの身近にあるシャガールの作品はありませんか?美術館や画集だけでなく、ポストカードやカレンダーなど、意外なところでシャガールの芸術に出会えるかもしれません。

彼の色彩豊かな世界に触れることで、日常生活に新たな輝きをもたらしてくれるかもしれません。ぜひ、美術館やギャラリーでシャガールの作品に出会い、その魅力を直接体験してみてください。

当社では、あなたの大切な作品の価値を最大限に引き出すべく、丁寧な査定と適切なアドバイスを提供いたします。マルク・シャガールの作品の買取をご検討される際は、ぜひお問い合わせください。

マルク・シャガールの作品の買取をご検討される際はこちらをご覧下さい。

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