はじめに
古典的なフレスコ画技法を現代に蘇らせ、独自の芸術表現を確立した絹谷幸二。渋谷駅や横浜駅のパブリックアートでその作品を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。今回は、文化勲章も受章した現代日本画壇の重鎮、絹谷幸二の作品世界について詳しくご紹介します。作品の価値や買取に関する情報も含めておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
絹谷幸二とは?
古美術に囲まれて育った幼少期
1943年1月24日、奈良市元林院町に生まれた絹谷幸二。実は幼少期から、非常に恵まれた環境で育ちました。生家は興福寺のすぐそばにある「明秀館」という由緒ある料亭で、過去のインタビューで「政財界の大立者や文化人が集うサロンのような場所でした」と語っています。曽祖父は美術品のコレクターとしても知られ、幼い頃から古美術に囲まれて育ちました。
物心ついた頃から絵筆を持ち、小学校1年生の頃から油絵を習い始めた絹谷は、高校時代には奈良県美術展に油彩が入選するなど、早くからその才能を発揮しました。過去のインタビューでは「家の前の興福寺の五重塔を描いているうちに、誰に習ったわけでもないのに遠近法も身についていった」と、恵まれた環境での創作活動を振り返っています。
芸術性の原点
絹谷の芸術性は、奈良という土地柄と深く結びついています。過去のインタビューで「日本古来の文物が持つ優美なフォルム、一筋縄ではいかない色彩を目の当たりにして育ったことは、私の財産です」と語っているように、幼少期から本物の芸術に触れる機会に恵まれていました。
築300年以上の歴史を持つ生家は、正徳2(1712)年の棟札が見つかっており、当時のまま改修もほとんどされていないと言います。このような環境で育ったことが、後の芸術活動に大きな影響を与えることになりました。
東京藝術大学での研鑽とフレスコ画との出会い
1966年、東京藝術大学美術学部に入学した絹谷は、小磯良平に師事。卒業制作の「蒼の間隙」で大橋賞を受賞します。その後、同大学の大学院壁画科に進学することになりますが、これには重要な理由がありました。大学3年時に法隆寺の壁画を見て深い感銘を受けたことが、壁画科を選ぶきっかけとなったと後に語っています。
アフレスコ画の確立へ向けて
大学院修了後、1971年にイタリアのヴェネツィアアカデミアに留学。フレスコ画の第一人者として知られるブルーノ・サエッティのもとで古典・現代フレスコ画の研究に打ち込みます。そこで古典技法の研究だけでなく、現代イタリアの新しい芸術感覚も吸収していきました。
帰国後の活躍と評価
帰国後、絹谷はイタリアで学んだフレスコ画の技法に日本画の画材を取り入れ、独自のスタイルを確立していきます。1974年、31歳という若さで「アンセルモ氏の肖像」が安井賞を受賞。これは最年少での受賞記録となり、日本の美術界で大きな注目を集めました。
教育者としても精力的に活動し、1993年に東京藝術大学美術学部教授に就任。その後、2010年に同大学の名誉教授となり、2014年には文化功労者として選出されました。さらに2021年には文化勲章も受章し、日本の美術界における重要な存在として認められています。
絹谷幸二の作品の魅力や特徴
鮮烈な色彩と独自の技法
絹谷作品を語る上で欠かせないのが、豊かな色使いと独自の表現技法でしょう。油彩やアクリル、テンペラといった画材を自在に操り、特にアフレスコとミクストメディア(混合技法)による作品では、立体的で奥行きのある独自の世界を創り出してきました。
一枚の作品に出会えば、誰もが「これは絹谷幸二の作品だ」と感じるはずです。その色彩の迫力は圧倒的で、見る人の心に深い印象を残します。
代表作にみる絹谷芸術の真髄
「アンセルモ氏の肖像」(1973年)
出典:kinutani.jp
安井賞を受賞したこの作品は、アフレスコ・ストラッポの技法を用いて制作されました。ストラッポとは、壁画の表層のみを剥がしてキャンバスに貼り付ける特殊な技法です。鮮烈な赤い床が印象的で、アンセルモ氏の頭部はカラフルな色彩で表現されています。
「ダリア・ガナッシィーニの肖像」(1975年)
出典:kinutani.jp
新潟市美術館に所蔵されるこの作品も、アフレスコ技法による傑作です。中心となる女性像の周りにはリンゴの芯と皮が配置され、窓の外にはイタリアの風景が広がっています。
「銀嶺の女神」(1997年)
出典:kinutani.jp
長野冬季オリンピックの公式ポスター原画として制作された本作は、槍ヶ岳を背景に女神を描いた作品です。女神の髪には、スキーやカーリング、アイスホッケーなどの競技種目が巧みに描き込まれており、オリンピックの芸術性を見事に表現しています。
特徴的なモチーフと表現
絹谷作品では、富士山、女性像、仏像などが特徴的なモチーフとして使われています。[1,4]また、「月」「太陽」「龍」をモチーフにした作品では、金箔や銀箔を使用し、独特の輝きを放っています。
パブリックアートへの取り組み
出典:えちぜん鉄道
絹谷は美術館や画廊だけでなく、多くの人々が日常的に目にする場所でも作品を展開を続けてきました。2008年に制作された渋谷駅壁面のパブリックアート「きらきら渋谷」は、多くの人々の目に触れる代表的な作品です。また、横浜駅の「VIVA YOKOHAMA」、福井駅の巨大ステンドグラス「ジュラシックえちぜん」も、多くの人々を魅了する観光スポットとなっています。
これらの作品は、芸術と社会をつなぐという絹谷の理念を体現したものと言えるでしょう。芸術家は社会参加をすべきという信念のもと、より多くの人々が芸術に触れる機会を創出しているのです。
絹谷幸二作品の買取相場・実績
※買取相場価格は当社のこれまでの買取実績、および、市場相場を加味したご参考額です。実際の査定価格は作品の状態、相場等により変動いたします。
青陶の華
ブルーの花瓶には唄う楽し気な女性が描かれており、熱情的で溢れんばかりの花から生命力を感じられます。
旭日春調富嶽
ダイナミックに描かれた画面いっぱいの富士山に、日の出が描かれた春の作品です。
愛を唄う二人
鮮烈な色彩で表現された愛を語らう二人。思わず唄が聴こえてきそうです。
絹谷幸二の作品を高値で売却するポイント
絹谷幸二の鑑定機関・鑑定人
一般財団法人東美鑑定評価機構は、美術品の鑑定による美術品流通の健全化及び文化芸術の振興発展に寄与する公的鑑定機関。
来歴や付帯品・保証書
来歴や付帯品:購入先の証明や美術館に貸出、図録に掲載された作品等は鑑定書が付帯していなくても査定できる場合があります。
保証書:購入時に保証書が付帯する作品もあるので大切に保管しましょう。
贋作について
ここ数十年のインターネットや化学技術の向上により、著名作家の贋作が多数出回っています。
ネットオークションでは全くの素人を装い、親のコレクションや資産家所蔵品等の名目で出品し、ノークレームノーリターンの条件での出品が見受けられます。
落札者は知識がないがために落札後のトラブルの話をよく聞きます。お手持ちの作品について「真贋が気になる」「どの様に売却をすすめるのがよいか」等、お困りごとがあればご相談のみでも承っております。
水彩・デッサン
主に紙に描かれていることの多い水彩やデッサンは、モチーフに対して紙の余白がある反面、しみや日焼けが目立つ事があります。
油彩画(額)
状態を良好に保つ為の保管方法
油絵は主に布を張ったキャンバスと言われるものに描かれています。他にも板に直接描かれた作品もあります。油絵の具は乾燥に弱く、色によってはヒビ割れ目立つ作品が見受けられます。また、湿気によりカビなどが付着しやすく、カビが根深い場合は修復困難となってしまいます。高温多湿を避け、涼しい場所に飾りましょう。また箱にしまったままも湿気やすい為、最低でも年に2回は風を通すようにしましょう。
修復方法
油彩画修復の専門店にお願いすることが1番です。下手に自身で手を入れると、返って悪化するケースもあります。
アクリル画(額)
アクリル画は主に布を張ったキャンバスと言われるものにアクリル絵の具で描かれています。他にも板に直接描かれた作品もあります。アクリル絵の具は乾燥に弱く、色によってはヒビ割れ目立つ作品が見受けられます。また、湿気によりカビなどが付着しやすく、カビが根深い場合は修復困難となってしまいます。高温多湿を避け、涼しい場所に飾りましょう。また箱にしまったままも湿気やすい為、最低でも年に2回は風を通すようにしましょう。
版画
共通事項(状態を良好に保つ為の保管方法)
版画には有名画家が直接携わり監修した作品も多くあります。主に版画作品下部に作家直筆サインとエディション(何部発行した何番目の作品であるか)が記載されています。主に紙に刷られており、湿気や乾燥に弱いです。また直射日光が長期間当たると色飛びの原因になります。掛ける場所・保管場所には十分注意しましょう。
リトグラフ
石版画とも言われ、ヨーロッパの歴史では古くから用いられてきました。日本でも昭和から活発に使用され、各地にリトグラフ専門の工房が存在します。
シルクスクリーン
枠にメッシュ素材(シルクやナイロン)の布を張り、油性描画剤で直接絵を描いたり、マスキングをし絵の具の通る部分通らない部分を作った版を紙に乗せ写しとる技法です。絵画以外にも写真や被服等にも応用されています。
絹谷幸二についての補足情報
天空美術館での作品展示
2016年、大阪梅田スカイビルタワーウエスト27階に「絹谷幸二 天空美術館」が開館しました。ここでは、アフレスコ画やミクストメディアによる絵画・彫刻作品が展示されているほか、世界初の試みとなる3D映像体験やワークショップ・アトリエスペースなども設置されています。
大阪にお立ち寄りの際は、ぜひ天空美術館で絹谷作品の魅力を体感してみてはいかがでしょうか?
後進の育成と芸術文化への貢献
2008年には、35歳以下の若手芸術家を顕彰する「絹谷幸二賞」を毎日新聞社主催で創設。芸術家は社会参加をすべきという信念のもと、絵画を通じた教育活動に力を注いでいます。
まとめ
アフレスコという伝統技法を現代的な表現へと昇華させた絹谷幸二。その作品は、鮮烈な色彩と独創的な技法により、美術品市場でも確固たる評価を得ています。パブリックアートから絵画作品まで、幅広い分野で高い芸術性を示し、2021年の文化勲章受章は、その功績を証明するものと言えるでしょう。
当社では、あなたの大切な作品の価値を最大限に引き出すべく、丁寧な査定と適切なアドバイスを提供いたします。絹谷幸二の作品の買取をご検討される際は、ぜひお問い合わせください。
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