はじめに
東山魁夷は、日本画壇を代表する巨匠であり、その作品は芸術性と資産価値の両方において高い評価を得ています。価値を適切に評価するためには、専門的な知識が必要です。本記事では、東山魁夷作品の売却を検討する際に役立つ情報や作品の特徴や市場動向、査定方法など、売却するために必要な知識をわかりやすくまとめました。東山魁夷作品の売却を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
当社の東山魁夷作品の買取実績価格
※買取相場価格は当社のこれまでの買取実績、および、市場相場を加味したご参考額です。実際の査定価格は作品の状態、相場等により変動いたします。
緑の詩
道
北山初雪
東山魁夷の芸術性と作品の特徴
東山魁夷は、1908年に神奈川県横浜市で生まれ、1999年(享年90歳)に亡くなるまで、日本画の世界で活躍しました。東京美術学校(現・東京藝術大学)で日本画を学び、伝統的な技法を継承しつつ、独自の感性で革新的な作品を生み出しました。東山魁夷の作品には、自然を深く観察し、その美しさを細部まで表現しようとする姿勢が感じられます。自然と向き合い、その美しさを丹念に描き出そうとしていたのかもしれません。こうした芸術観が、作品の特徴の一つとなっているようです。
東山魁夷の作品の特徴
東山魁夷の作品は、透明感のある色彩と静謐な雰囲気が特徴的です。特に、「東山ブルー」と称される透き通るような青色は、東山魁夷の作品を一目で見分けるための重要な要素となっています。東山魁夷は、青色を「感覚と精神の世界を繋ぐ色」と評しています。
また、東山魁夷の作品には、人物が描かれていないという大きな特徴があります。人物を描かなかった理由について、東山魁夷本人からの明確な言及はありませんが、彼の作品は自然風景を主題としたものが多いことが知られています。東山魁夷の風景画は、穏やかでありながらも、独特な佇まいを持っており、緑豊かな森や、雄大な山々、美しい渓流など、彼が描く自然は、静かで落ち着いた印象を与えます。
「緑響く」や「道」など東山魁夷の代表作では、自然の美しさが繊細に描かれています。これらの作品からは、東山魁夷が自然を深く愛し、その美しさを表現しようとした姿勢が感じられます。東山魁夷の作品は、時代を超えて多くの人々を魅了し続ける、日本美術史に残る重要な作品群と言えるでしょう。
《緑響く》のモチーフになったことでも知られる長野県茅野市の御射鹿池(みしゃかいけ)。
【参考サイト】
東山魁夷作品の種類と特徴
日本画
日本画は、東山魁夷芸術の中心。絹本や紙本に岩絵具や水干絵具を用いて描かれます。緻密な描写と繊細な色彩が特徴で、伝統的な題材から革新的な抽象表現まで、多彩な作品が存在します。代表作には、「道」や「残照」などがあります。
《残照》1947(昭和22)年制作・東山魁夷 39歳
所蔵:東京国立近代美術館
出典:東山魁夷記念一般財団法人
版画
東山魁夷は、版画の世界でも独自の表現を追求し、リトグラフ、木版画、銅版画など様々な技法を用いて作品を制作しました。
リトグラフ
リトグラフは、版画の一種で、石版を使った技法で複数の版を重ねて刷ることで、微妙な色彩の変化や階調表現を可能にする技法です。東山魁夷は、リトグラフ制作にも精力的に取り組み、代表作をリトグラフで再現した作品を制作しました。これらの作品は、オリジナルの日本画に近い質感と色彩を再現しており、リトグラフならではの魅力を持っています。
それぞれのジャンルにおいて、東山魁夷は独自の美意識と技法を追求し、多様な表現を生み出しました。作品の価値は、希少性や人気、作品の種類や制作時期などによって異なります。
木版画・銅版画
木版画や銅版画からなる温かみがある優しい色使いの作品が多いです。これらの作品からは、日本の江戸時代に活躍した浮世絵師らの木版画とは異なる、東山魁夷独自の現代的な感性が感じられます。
東山魁夷作品の鑑定
巧妙な偽作
東山魁夷の作品は非常に人気が高いため、市場には偽作が数多く出回っています。2021年には、元画商が偽の版画を販売したとされる事件が発覚しました。このような版画作品でも偽作品は素人の目では見分けることが困難であり、作品の真贋を正しく判断するためには専門家による鑑定が必要です。
現在、鑑定対象となる版画作品は一般財団法人 東美鑑定評価機構が鑑定をおこなっています。お手持ちの作品が対象か確認してみましょう。
鑑定対象作品
鑑定は署名や落款、画風、技法、使用材料などの要素を総合的に分析することが、真作を見極める鍵となります。真作と判断された場合は、偽造防止策を施した真作・偽作と判別できる証明シールが東美鑑定評価機構より貼付されます。
尚、上記の東美鑑定評価機構への鑑定依頼は、美術商からの依頼品のみの鑑定となりますので、鑑定を検討の際はご相談ください。
【参考サイト】
作品の真贋が買取価格に与える決定的な影響
作品の真贋は、買取価格に大きな影響を与えます。偽作と判定された場合、美術品としての価値はほぼゼロ。一方、真作と認められれば、作品の希少性や状態に応じて、高値での買取が期待できます。
東山魁夷作品の鑑定書の種類と入手方法
東山魁夷作品の鑑定書には、大きく分けて2種類があります。
- 東山すみ鑑定書:東山魁夷の妻である東山すみ氏が存命中に発行されていた鑑定書。千葉県市川市の美術館が窓口となっていました。
- 東美鑑定評価機構鑑定証書:東山すみ氏の逝去後、鑑定業務が東京美術倶楽部(東京都港区)受付の東美鑑定評価機構に移管されました。現在は、この機構が発行する鑑定証書が主流です。
【補足】
東山魁夷作品の売却を検討する際は、これらの鑑定書の有無を確認することが重要です。鑑定書は作品の価値を保証する役割を果たします。特に、東美鑑定評価機構の鑑定証書は、現在の美術市場で高い信頼性を得ています。
鑑定書の取得には費用がかかるため、売却予定の作品の価値や状態を考慮して、費用対効果を見極める必要があります。既に鑑定書が付属している作品は、買取価格が高くなる傾向にあります。鑑定書の有無や種類は、東山魁夷作品の売却において重要な要素です。信頼できる鑑定書を取得することで、スムーズな売却とより高い買取価格の実現につながるでしょう。
東山魁夷作品を高値で売却するためのポイント
東山魁夷の版画作品におけるオリジナルと新復刻画の違い
東山魁夷の版画作品には、生前に制作されたオリジナル版画と、没後に東山すみ氏の監修のもと制作された新復刻画の2種類が存在することに注意が必要です。オリジナル版画は、東山魁夷自身が制作に直接関与した作品であり、芸術的価値が高く評価されます。一方、新復刻画は、オリジナル作品を基に制作されているため、同一タイトルの作品であってもその価値は異なります。
東山作品の売却を検討する際は、オリジナル版画と新復刻画を見極めることが重要です。専門家による鑑定や作品の来歴調査などを通して、作品の種類を確認する必要があります。オリジナル版画と新復刻画では、査定金額に大きな差が生じる場合があり、同一タイトルの作品で価格に開きがでることもあります。
美術品の売却においては、作品の種類や制作時期、作家との関連性などが価値を大きく左右します。東山魁夷の版画作品についても、オリジナル版画と新復刻画の違いを理解し、適切に見極めることが、満足のいく売却結果を得るための鍵となるでしょう。
作品の適切な保管
東山魁夷作品の価値を維持するためには、適切な保管が不可欠です。直射日光や高温多湿を避け、温度と湿度が一定に保たれる環境で保管しましょう。定期的な点検とメンテナンスも重要です。特に版画作品は、酸化や変色を防ぐために、専用の保存材料を使用することをおすすめします。
専門家によるクリーニングと修復で作品の価値を守る
作品のクリーニングは、専門家に依頼するのが最も安全で効果的です。不適切な方法でクリーニングを行うと、作品を傷める恐れがあります。経験豊富な専門家なら、作品の特性に合わせた最適な方法で、汚れや黄ばみを取り除くことができます。
また、作品にダメージがある場合は、専門の修復士に相談しましょう。熟練の技術を持つ修復士なら、作品の価値を損なうことなく、傷みや破損を修復することができます。適切な修復は、作品の価値を維持・向上させるために欠かせません。
付属品と証明書の有無が買取価格に与える影響
東山魁夷作品の買取では、付属品と証明書の存在が大きな影響を与えます。特に、作品の真贋を証明する鑑定書は、買取の際に重要視されます。購入時に必ず鑑定書を入手し、大切に保管しておきましょう。
また、作品に付属していた箱や布袋なども、買取価格のアップに繋がります。これらの付属品は、作品の保存状態や来歴を示す重要な証拠となるため、できる限り揃えておくことをおすすめします。
来歴の記録が作品の価値を高める
東山魁夷作品の来歴(プロヴェナンス)は、作品の価値を裏付ける重要な要素です。著名なコレクターや美術館が所有していた記録や、有名なオークションでの落札履歴などは、作品の芸術的・歴史的価値を示すものとして高く評価されます。作品の購入時には、来歴に関する情報を可能な限り収集し、記録しておくことが大切です。
東山魁夷作品の買取に強い専門店を選ぶ
東山魁夷作品を高値で売却するには、信頼できる買取店選びが欠かせません。特に、東山魁夷作品の取り扱いに実績と専門性を持つ店舗がおすすめです。査定の透明性や買取実績、口コミ評価なども重要なポイントになります。
以下のような点を総合的に判断し、自分に合った買取店を探しましょう。
- 東山魁夷作品の買取実績と専門知識の豊富さ
- 査定基準と買取価格の説明の分かりやすさ
- 利用者の評判と満足度
- 店頭買取、宅配買取、出張買取など、買取方法の選択肢の広さ
- 買取後のアフターフォローとトラブル対応の充実度
東山魁夷作品ならではの高値売却のコツ
東山魁夷作品を高値で売却するには、作品の状態を良好に保つことに加えて、以下のようなポイントにも注目しましょう。
- 版種の違いを理解する:東山魁夷の版画作品には、オリジナル版画と新復刻版画があります。オリジナル版画の方が価値が高いため、版種を見極めることが大切です。
- 大判の作品は特に高値になる傾向:東山魁夷の大判の作品は、迫力と存在感から、特に高い価値が付けられることが多いです。大判の作品を売却する際は、サイズの大きさをアピールすることで、高値売却が期待できます。
これらの東山魁夷作品ならではの高値売却のコツを押さえることで、より満足のいく買取結果を得ることができるでしょう。
オークションとギャラリーの売却方法の比較
東山魁夷作品の売却方法には、買取店以外にもオークションやギャラリーという選択肢があります。オークションは多くの潜在的な買い手に作品を見てもらえる機会であり、高値がつく可能性がある一方で、手数料が高くつくことや、売却価格が予測しにくいことがデメリットです。
ギャラリーでの売却は、東山魁夷作品に精通した専門家による適切な価格設定と、信頼できる買い手とのマッチングが期待できます。ただし、ギャラリーの手数料は一般的に高く、売却までに時間がかかる場合があります。
自分の作品の特徴や希望する売却方法を考慮し、最適な選択をすることが大切です。
東山魁夷作品の買取相場
※買取相場価格は当社のこれまでの買取実績、および、市場相場を加味したご参考額です。実際の査定価格は作品の状態、相場等により変動いたします。
白馬の森
買取相場:100~万円
白馬シリーズの中で最も評価の高い作品です。サイズにより価格は変動します。原画は長野県立美術館・東山魁夷館に所蔵されています。魁夷64歳頃の作品。
山嶺湧雲
買取相場:30~万円
魁夷が描く幽すいな風景画は、日本人の自然観や心情までも反映した普遍性を有するものとして高い人気を誇ります。
緑の詩
買取相場:100~万円
「東山ブルー」とも呼ばれる青や緑を印象的に使って描かれ、特に白馬のいる風景画は代表作であり高額査定対象です。こちらの版画作品は様々なサイズが有り、サイズによりに査定額は変動します。
東山魁夷について補足情報
東山魁夷の作品(当社専用ページ)はこちらからご確認できます。
東山魁夷の美術館(記念館等)情報
長野県立美術館
- 〒380-0801 長野県長野市箱清水1-4-4(城山公園内・善光寺東隣)
東山魁夷せとうち美術館
- 〒762-0065 香川県坂出市番の州緑町6-13(瀬戸大橋記念館)
市川市東山魁夷記念館
- 〒272-0813 千葉県市川市中山1丁目16番2号
津川市東山魁夷心の旅路館
- 〒508-0501 岐阜県中津川市山口1-15
東山魁夷の作家・関連作品紹介
以下、東山魁夷及び関連作家の紹介になります。
まとめ
東山魁夷作品は芸術性と希少性から高い価値を持ちますが、買取には専門知識が不可欠です。作品の真贋や保存状態が買取価格に大きな影響を与えるため、専門家の鑑定と適切な管理が重要となります。信頼できる買取業者を選び、複数の査定を比較することで、満足のいく買取結果を得ることができるでしょう。市場動向を踏まえた適切なタイミングでの売却も高値売却のポイントです。
本記事で提供した情報を活用し、まずは信頼できる買取業者に相談することから始めてみてはいかがでしょうか。大切な東山魁夷作品を適正な価格で売却するための第一歩となるはずです。
東山魁夷作品の売却に関するご相談は、専門家にお任せください。経験豊富なスタッフが、作品の査定から売却までを丁寧にサポートいたします。まずは、お気軽にお問い合わせください。
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