はじめに
「線の画家」と呼ばれた天才、ベルナール・ビュッフェ。その作品は今なお、国内外の美術市場で高値で取引されています。
1928年パリに生まれ、20歳で批評家賞を受賞した早熟の画家は、約8000点もの作品を残し、1999年、その波乱の生涯を閉じました。本記事では、ビュッフェの芸術性と作品価値について、美術品買取の観点から詳しく解説いたします。
ベルナール・ビュッフェとは?
20世紀を代表する芸術家としての軌跡
1928年、パリで生まれたベルナール・ビュッフェは、驚くべき早熟の才能を見せました。10代前半から芸術への情熱を注ぎ、15歳という若さで国立美術学校への入学を果たします。
その後の躍進は目覚ましく、わずか20歳でパリで最も権威ある批評家賞を受賞。画廊との専属契約を結び、国内外で展覧会を開催するなど、フランス画壇の新星として注目を集めました。
しかし、ビュッフェの人生は栄光ばかりではありませんでした。あまりにも若くして有名になったがゆえに、中年期には孤独やマンネリズムに苦しめられます。
そして晩年、パーキンソン病に悩まされ、1999年、71歳で自ら命を絶ちました。
ビュッフェ芸術の核心
ビュッフェの絵画は、一目見たら忘れられない独特の特徴を持っています。その最大の特徴は、野太くあらあらしい線描です。直線的で硬質な線を重ねた太い輪郭線が、ビュッフェ作品の代名詞とも言えるでしょう。
色彩も特徴的です。モノトーンに近い抑制された色彩を用い、全体的に寂しげで暗い印象を与えます。これらの要素が組み合わさり、人間性を剥ぎ取られたかのような角張った人体像が生み出されています。
戦後の混沌とした時代背景の中で、ビュッフェの作品は多くの人々の心を捉えました。特に若い世代は、彼の描く不安と虚無の表現に強く共感。実存主義的な時代精神と重なり合う芸術性に深く魅了されていきました。その芸術的影響力はやがて「ビュッフェ旋風」と呼ばれるほどの社会現象となっていったのです。
ベルナール・ビュッフェの作品の魅力や特徴
代表作品とその評価
ビュッフェは50年の画家人生で約8000点もの作品を残しました。その中でも特に人気の高い作品をいくつかご紹介します。
油彩画
油彩画では、風景の大作や花をモチーフにした作品が高く評価されています。例えば「バラ」は、無駄のないデザイン構成と中央に大きく描かれた鮮やかな赤色の薔薇が印象的な作品です。
版画
版画作品では、リトグラフによる「ニューヨーク」「パリ」といった都市をテーマにしたシリーズや、「ピエロ・サーカス」、「花瓶の花を描いた作品」などが特に有名です。
水と油の反発を巧みに操るリトグラフ技法により、鮮やかな色彩と伸びやかな線による表現を実現。特にニューヨークのビル群を太く黒い線で描いた作品群は、見る人を惹きつける独特の世界観で知られています。
また、ピエロを通して人間の孤独や悲しみを表現した作品からは、ビュッフェの内面世界を垣間見ることができます。
さらに『純粋さを求めて』『マルドロールの歌』『声』といった文学作品の挿絵制作でも、芸術と文学の見事な融合を実現しました。
銅版画では、ビュッフェを象徴する作品が多く残されています。特に、銅板に鋭い刃物で直彫りする「ドライポイント*」の技法を用いた作品は、ビュッフェの「線の画家」としての才能が遺憾なく発揮されています。
※ドライポイントとは、銅板に直接針で描き込む版画技法。インクが凹みに溜まることで、独特の力強い線と豊かな階調を表現することができる。
芸術表現の変遷
ビュッフェの芸術表現は、時代とともに変化を遂げました。1960年頃から、それまでの力強い線のモノトーンの画風に加えて、多くの色彩を使うようになります。これにより、作品に新たな明るさが加わりました。
アナベルとの出会いがもたらした変化
この変化には、1958年に30歳で結婚したアナベルの影響が色濃く表れています。
モデル、シャンソン歌手、小説家と多彩な才能を持つ彼女との出会いは、ビュッフェの作品の幅を一層広げることとなりました。
数多く残されたアナベルをモデルとした作品からは、彼女がビュッフェにとって生涯のミューズ(芸術の女神)であったことが伝わってきます。
ベルナール・ビュッフェ作品の買取相場・実績
※買取相場価格は当社のこれまでの買取実績、および、市場相場を加味したご参考額です。実際の査定価格は作品の状態、相場等により変動いたします。
サントロペ
爽やかな色合いで人気の高いシリーズです。
アルバムニューヨーク No.2
ビュッフェを代表する版画集より。図柄により価格も変わります。
バラ
多くの花束を描いた中でも作家を代表するモチーフ。
ベルナール・ビュッフェの作品を高値で売却するポイント
ベルナール・ビュッフェの鑑定機関・鑑定人
ガルニエ画廊:
ベルナール・ビュッフェの作品、特に油彩画や水彩画といった肉筆作品の価値を証明するには、フランスのガルニエ画廊が発行する鑑定書が必要です。
作品をお持ちの方で、鑑定書をお持ちでない場合でもご安心ください。当社では、ガルニエ画廊の鑑定書取得に関する手続きもサポートさせていただいております。
贋作について
ここ数十年のインターネットや化学技術の向上により、著名作家の贋作が多数出回っています。
ネットオークションでは全くの素人を装い、親のコレクションや資産家所蔵品等の名目で出品し、ノークレームノーリターンの条件での出品が見受けられます。
落札者は知識がないがために落札後のトラブルの話をよく聞きます。お手持ちの作品について「真贋が気になる」「どの様に売却をすすめるのがよいか」等、お困りごとがあればご相談のみでも承っております。
来歴や付帯品・保証書
来歴や付帯品:購入先の証明や美術館に貸出、図録に掲載された作品等は鑑定書が付帯していなくても査定できる場合があります。
保証書:購入時に保証書が付帯する作品もあるので大切に保管しましょう。
水彩・デッサン
状態良好、保管方法
主に紙に描かれていることの多い水彩やデッサンは、モチーフに対して紙の余白がある反面、しみや日焼けが目立つ事があります。
油彩画(額)
状態を良好に保つ為の保管方法
油絵は主に布を張ったキャンバスと言われるものに描かれています。他にも板に直接描かれた作品もあります。油絵の具は乾燥に弱く、色によってはヒビ割れ目立つ作品が見受けられます。また、湿気によりカビなどが付着しやすく、カビが根深い場合は修復困難となってしまいます。高温多湿を避け、涼しい場所に飾りましょう。また箱にしまったままも湿気やすい為、最低でも年に2回は風を通すようにしましょう。
版画
状態を良好に保つ為の保管方法
版画には有名画家が直接携わり監修した作品も多くあります。主に版画作品下部に作家直筆サインとエディション(何部発行した何番目の作品であるか)が記載されています。主に紙に刷られており、湿気や乾燥に弱いです。また直射日光が長期間当たると色飛びの原因になります。掛ける場所・保管場所には十分注意しましょう。
ベルナール・ビュッフェについての補足情報
日本での評価と展覧会の歴史
ビュッフェの作品は、日本でも早くから高い評価を得ていました。1953年の第2回日本国際美術展に《化粧する女》を出品して以来、第6回展まで継続的に作品を発表しています。当時の日本の美術界は抽象画全盛期でしたが、ビュッフェの黒い直線と強烈な表現に衝撃を受けた芸術家は少なくありませんでした。
1959年には、神奈川県立近代美術館で日本最初のビュッフェ展(デッサンと版画)が開催されました。さらに1963年には、東京の国立近代美術館と京都分館で「ビュッフェ展、その芸術の全貌」と題された大規模な回顧展が行われ、大きな反響を呼びました。
ベルナール・ビュフェ美術館について
このような日本でのビュッフェ人気を背景に、1973年、静岡県にベルナール・ビュフェ美術館が創設されました。
スルガ銀行頭取の岡野喜一郎氏が個人コレクションをもとに設立したこの美術館は、油彩画、水彩画、素描、版画、挿画本、ポスターなど、2000点を超える作品を所蔵しており、世界一のビュッフェコレクションを誇っています。
美術館の入口に設置されている昆虫の彫刻は、自然や生物を好んだビュッフェの珍しい立体作品の一つです。絵画以外のビュッフェの作品を見られる貴重な機会となっています。
画家と美術館の関係性
ビュッフェ自身も生前、妻のアナベルとともに7回も来館しており、この美術館への深い愛着を示していました。
1996年5月、版画館(現在の別館・企画展示室)がオープンした際の来館時、ビュッフェは次のような言葉を残しています。「素直な愛情をもって、絵と対話してほしい。絵画はそれについて話すものではなく、ただ感じ取るものである。
ひとつの絵画を判断するには、百分の一秒あれば足りるのです」。この言葉は、ビュッフェの芸術に対する姿勢を端的に表しており、彼の作品を鑑賞する際の重要な指針となるでしょう。
ベルナール・ビュフェの最新の市場動向
ビュッフェ作品は年々人気が高まっており、最近の傾向を作品別にご紹介します。
◆油彩画は大判サイズの見ごたえのある風景画を中心に高額の傾向です。
- 2023年 風景画 80号 落札額:2100万(国内オークション)
- 2023年 風景画 50号 落札額:900万(国内オークション)
- 2022年 風景画 90×146 落札額:1900万(国内オークション)
- 2019年 風景画 80号 落札額:980万(海外オークション)
- 2018年 花 15号 落札額:850万(国内オークション)
◆版画作品は弊社の過去の買取実績の傾向からみると、
- サントロペ リトグラフ 買取実績:18万円
- リアルト橋 リトグラフ 買取実績:5万円
- ロールスロイス リトグラフ 買取実績:22万円
- バラ リトグラフ 買取実績:18万円
等、リトグラフ作品は図柄やサイズにより金額の差があるようです。
まとめ
20世紀を代表する芸術家、ベルナール・ビュッフェの魅力をご理解いただけましたでしょうか。フランス具象画壇の巨匠として、また「線の画家」として知られる彼の作品は、現在も国内外で高い評価を得ています。8000点を超える作品群には、油彩画から版画まで、様々な技法による珠玉の作品が含まれています。
当社では、あなたの大切な作品の価値を最大限に引き出すべく、丁寧な査定と適切なアドバイスを提供いたします。ベルナール・ビュフェの作品の買取をご検討される際は、ぜひお問い合わせください。
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