斉白石の相場と代表作を解説|中国近代絵画の巨匠の生涯と魅力とは?

はじめに

現代中国美術を代表する画家・斉白石(せい はくせき)。その名を聞いて、エビや蟹を描いた生命力あふれる作品を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

斉白石は絵画を中心に、書や篆刻など多彩な分野で独自の美の世界を築き上げました。近年では中国美術市場の活況に伴い、彼の作品は国際的にも高い評価を受け、オークションでは驚くような高額で取引されています。

今回は、そんな斉白石の生涯と作品の魅力をご紹介します。作品の価値や特徴についても解説しておりますので、斉白石作品をお持ちの方、売却をご検討の方は、ぜひ最後までお読みください。

斉白石とは?

農民から世界的画家へ – 斉白石の波乱の生涯

中国の農村風景

1864年、中国湖南省の農家に生まれた斉白石。

当時の家庭環境は厳しく、体が弱かった彼は十分な教育の機会に恵まれませんでした。そんな状況の中、12歳で大工見習いとなり、後に指物師(※)として腕を磨くことになります。

しかし、木工職人として日々を送る一方で、彼の心をとらえて離さなかったのは「絵を描くこと」でした。27歳のとき、ついに本格的な芸術修業を決意します。文人画家に師事して花鳥画(※)や鳥獣画の技法を学び、さらに詩文や山水画(※)も習得。

30歳を迎える頃には、書法や篆刻(※)まで独学で身につけてしまうという、まさに“多才”ぶりを発揮しました。

40歳を過ぎると、「五出五帰」と呼ばれる壮大な旅へ――。中国全土を巡りながら、彼は各地の風景や芸術に触れ、いっそう視野を広げていきました。

その後、55歳で北京に移住。しかし、当時の画壇は保守的で、農民出身の画家は冷遇されがちだったとか。斉白石も評価を得るまでには時間を要しましたが、独創性と粘り強い姿勢が徐々に注目され、やがて北京美術専科学校教授や中国美術協会主席を歴任するように。

そして、93歳でこの世を去るまで、10,000点を越える作品を残し続けたのです。

貧しい農家の子から「現代中国画の巨匠」へと至った彼の人生は、まさに波乱に満ちたものでした。

※指物師:家具や木工製品に装飾を施す職人のこと
※花鳥画:花や鳥などを題材にした中国の伝統的な絵画様式
※山水画:山や川などの自然風景を描いた中国の伝統的な絵画様式
※篆刻:印章を彫る芸術

日本との深い絆が生んだ国際的評価

斉白石の芸術が国際的に評価されるきっかけとなったのは、日本との関わりでした。北京で活動を始めた斉白石を見出したのは、日本留学経験を持つ画家の陳師曽などの当時の知識人たちでした。

そして1922年、東京で開催された日中共同絵画展に陳師曽によって日本の美術界にも紹介され、1920年代以降、彼の作品は日本でも注目され始めました。この展覧会で斉白石の作品はほとんどが高額で売れ、これを機に彼の名は国際的に広まりました。

日本の外交官・須磨弥吉郎も中国駐在時代に斉白石の重要な支援者となり、彼の収集した「須磨コレクション」は現在、京都国立博物館に収蔵されています。

日中の交流が活発だった時代に、多くの斉白石作品が日本に渡ったことから、現在でも日本の個人や美術館に彼の作品が数多く所蔵されているのです。

近年は中国の富裕層による「海外流出作品の買い戻し」の動きが活発になっており、日本所蔵の斉白石作品の市場価値は上昇傾向にあります。もしかすると、あなたの家に眠る中国の古い絵が、実は価値ある斉白石作品かもしれませんね。

斉白石の作品の魅力や特徴

市場価値の高い代表的モチーフと作品群

《墨蝦図》,遼寧省博物館

出典:WIkipedia

斉白石の作品の中でも市場価値が特に高いのは、エビや蟹などの水生生物をモチーフにした作品です。「蝦蟹図」と呼ばれるこれらの作品群は、コレクターから高い人気を集めています。

なぜこれほど評価されるのでしょうか?

それは斉白石ならではの生命力あふれる表現と、伝統と革新を融合させた独自の技法にあります。

代表作の一つ「草蟹図」では、群れて重なり合うカニを墨の滲みだけで描き切った独特の表現が見られます。農村で育った斉白石は幼少期から水生生物をよく観察していたため、生き生きとした描写が可能だったのでしょう。

また「松鷹図」では、力強い筆致で描かれた松の枝に鷹が配され、動と静のコントラストが見事に表現されています。

斉白石作品の価値を象徴する事例はいくつもあります。代表的なものをピックアップすると、

  • 2011年:「松柏高立図 篆書四言聯」が約53億円で落札
  • 「群龍入海图(百虾図)」:全長約4メートルの大作に120匹以上のエビが描かれ、1億元以上で取引
  • 買取相場:数十万円から1000万円超まで幅広く、エビや蟹、山水画は特に人気

これらの驚くべき高額取引の背景には、もちろん斉白石自身の芸術的価値が挙げられます。しかしその一方で、模写や贋作が非常に多く出回っているのも事実です。大切な作品の真贋をきちんと確かめるためにも、信頼できる専門家の査定は必須といえるでしょう。

「紅花墨葉」- 斉白石独自の芸術表現

蝉

出典:WIkipedia

北京に移住した55歳頃、斉白石は「紅花墨葉」(※)と呼ばれる独自の画風を確立しました。これは赤い花と墨で描いた葉の対比が特徴的な表現で、清新かつ力強い独自の味わいを持っています。この画風は、伝統に根ざしながらも革新的な要素を取り入れた斉白石の芸術哲学をよく表しています。

斉白石の芸術の魅力は、伝統的な中国画を基礎としながらも独自の革新を加えた点にあります。特筆すべきは、指物師、画家、篆刻家、書家といった多様な才能が作品の中で複層的に融合している点です。篆刻での技法が絵画の構図に影響を与えるなど、様々な芸術分野の経験が彼の作品に深みをもたらしています。

斉白石作品の特徴は、蝦、蟹、鶏、蛙などの生物や、草花、山水などの自然モチーフを天真爛漫に描き、繊細さと大胆さを兼ね備えた表現にあります。伝統に縛られない自由な個性は、後の多くの芸術家にも影響を与えました。世界的彫刻家イサム・ノグチも中国芸術の影響を強く受けた一人であり、斉白石の画風にも関心を寄せていたとされています。

また中国の伝統的概念である「書画同源」(※)が斉白石の作品にも表れており、書の要素を取り入れた抽象的表現も彼の作品の見どころの一つです。シンプルな作品から複雑な作品まで幅広く手がけた点は、彼が「現代中国画の巨匠」と称される理由といえるでしょう。

※紅花墨葉:赤い花と墨で描いた葉を特徴とする斉白石独自の画風
※書画同源:書と画は同じ源から生まれるという中国の伝統的概念

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斉白石作品の買取相場・実績

※買取相場価格は当社のこれまでの買取実績、および、市場相場を加味したご参考額です。実際の査定価格は作品の状態、相場等により変動いたします。

群蝦図

買取実績価格:600万円

邵逸軒 合作「仕女図」

斉白石・邵逸軒 合作「仕女図」
過去買取実績作品

斉白石の作品の査定・買取について、まずはお気軽にご相談ください。

斉白石の作品を高値で売却するポイント

来歴や付帯品・保証書

来歴や付帯品:購入先の証明や美術館に貸出、図録に掲載された作品等は鑑定書が付帯していなくても査定できる場合があります。
保証書:購入時に保証書が付帯する作品もあるので大切に保管しましょう。

贋作について

ここ数十年のインターネットや化学技術の向上により、著名作家の贋作が多数出回っています。ネットオークションでは全くの素人を装い、親のコレクションや資産家所蔵品等の名目で出品し、ノークレームノーリターンの条件での出品が見受けられます。

落札者は知識がないがために落札後のトラブルの話をよく聞きます。お手持ちの作品について「真贋が気になる」「どの様に売却をすすめるのがよいか」等、お困りごとがあればご相談のみでも承っております。

掛軸

状態を良好に保つ為の保管方法

掛軸は主に紙や絹に岩絵具で描かれており、湿気やカビにとても弱いです。また直射日光などは酸化の原因になり、劣化します。直射日光を避け、涼しい場所に飾りましょう。また箱にしまったままも湿気やすい為、最低でも年に2回は風を通すようにしましょう。

共箱(ともばこ)

掛軸を収納する箱の事で、蓋の表に表題(作品タイトル)、蓋の内側に作家のサインが作家自身の直筆で記載されてあります。共箱は掛軸の証明書の役割をしており、無い場合は査定額に響いてきます。

書付、識箱・極箱

共箱の分類に書付(かきつけ)と識箱(しきばこ)・極箱(きわめばこ)があります。
書付とは茶道具を中心に各家元が優れた作品に対して銘や家元名を共箱に記します。
識箱・極箱は、作者没後、真贋を証明する為、鑑定の有識者や親族が間違いがないと認定した物に共箱の面や裏に記します。

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斉白石についての補足情報

日本国内で鑑賞できる斉白石コレクション

日本国内で斉白石作品を鑑賞できる主な施設として、東京国立博物館京都国立博物館福岡市美術館九州国立博物館などがあります。特に京都国立博物館には外交官・須磨弥吉郎のコレクションに含まれる斉白石作品が収蔵されています。

2018年の日中平和友好条約締結40周年記念では、東京と京都の国立博物館で「中国近代絵画の巨匠 斉白石」展が開催されました。東京では「白菜群蝦図」や「鉄拐仙人図」などが展示され、京都では斉白石のユーモラスな作風が「かわいい」と人気を集めました。

斉白石の作品を鑑賞する際は、ジャンルの「重なり」や個人的思い出の「重なり」といった視点から味わうことで、より深く彼の芸術世界を理解することができます。例えば、指物師としての経験が絵画にどう影響しているか、幼少期の自然体験がどのように表現されているかなど、多角的な視点で作品を見れば、新たな発見があるかもしれません。

斉白石作品と中国美術市場の最新動向

斉白石は現在も美術市場で高額落札の常連となっています。2017年には「山水十二條屏」が約9億3千万元(約1億4千万ドル)で落札され、彼を「1億ドルクラブ」の仲間入りさせるニュースが世界のアート界を驚かせました。

斉白石は生涯で10,000点を越える作品を残したと言われており、そのうち約3000点は美術館に収蔵されています。しかし、オークションでは18000点以上の作品が取引されており、これは贋作が多く市場に出回っている可能性を示唆しています。お手元の作品の価値を正しく知るためにも、専門家による鑑定が重要です。

近年、特筆すべき動向として、中国の富裕層の間では日本に渡った中国美術品を「買い戻す」動きが活発化しています。かつては数十万円程度で取引されていた斉白石作品も、現在では数千万円の価値がつくケースも珍しくありません。

日本での評価が斉白石の国際的名声の出発点となったこともあり、日本国内で彼の作品が発見される可能性は比較的高いといえます。メディアでも斉白石作品の価値は注目されており、2016年の『開運!なんでも鑑定団』では「斉白石の掛軸」に500万円の評価がつきました。もしかすると、あなたの家の押し入れや蔵の中に、価値ある斉白石作品が眠っているかもしれませんね。

まとめ

中国近代美術の巨匠として、今なお世界中で高い評価を受けている斉白石。伝統を基礎にしながらも大胆な革新を加えた作品は、見る人の心を捉えて離しません。

また、日本との深い関わりがあったことから、国内に貴重な斉白石作品が眠っている可能性も高いといわれます。さらに、近年の中国美術市場は活況を呈しており、エビや蟹などの水生生物や山水画といった人気モチーフは特に価値が高騰する傾向にあるようです。

ただし、その人気の高さゆえに贋作も多く出回っている点には注意が必要。大切な作品が本物かどうかを見極めるには、専門家による査定が不可欠です。

当社では、あなたの大切な作品の価値を最大限に引き出すべく、丁寧な査定と適切なアドバイスを提供いたします。斉白石の作品の買取をご検討される際は、ぜひお問い合わせください。

また、LINEからの査定依頼も受け付けています。(スマホで写真を撮って送るだけ!)詳しくは【LINE査定ページ】をご覧ください。

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