はじめに
漫画のような独特な表現技法と鮮やかな色使いで知られるロイ・リキテンスタイン。20世紀を代表するポップアーティストとして、彼は大衆文化を芸術の領域へと昇華させました。
絵画、彫刻など、多彩な分野で独自の表現世界を築き上げたリキテンスタインの作品は、今もなお多くの人々を魅了し続けています。近年では美術品市場でも注目を集め、その価値は年々高まっています。
今回は、そんなロイ・リキテンスタインの生涯と作品の魅力をご紹介します。作品の買取に関する情報もご用意していますので、リキテンスタイン作品をお持ちの方、売却をご検討の方は、ぜひ最後までお読みください。

ロイ・リキテンスタインとは?
ポップアート界の巨匠としての軌跡
アンディ・ウォーホル*と並んでポップ・アート*の双璧をなす偉大なアーティスト、それがロイ・リキテンスタインです。現代アートの世界で確固たる地位を築いた彼ですが、その道のりは決して平坦なものではありませんでした。
1923年、アメリカのニューヨークに生まれたリキテンスタインは、不動産業を営む父と主婦の母のもと、中流階級の家庭で育ちました。アッパーウエストサイドという比較的裕福な地域で過ごし、名門フランクリンスクール(現在はドワイトスクールと呼ばれる)で語学や音楽を学んだ後、1940年にフランクリンスクールを卒業。同年、オハイオ州立大学美術学部への進学を決意します。
1951年、カールバッハ・ギャラリーでの初個展開催を皮切りに、リキテンスタインは本格的な芸術活動を開始します。当時は製図工や大学講師の仕事で生計を立てながら、時代の潮流であったキュビズムや抽象表現主義の作品を制作する日々が続きました。
1957年にはニューヨーク州立大学オズウィーゴ校の美術学部助教授に就任。
転機は1960年代初頭に訪れます。ニュージャージー州のラトガース大学ダグラス・カレッジで教鞭を執り始めたリキテンスタインは、そこで「ハプニング」と呼ばれるパフォーマンスアートの創始者、アラン・カプローと出会います。この出会いをきっかけに、彼はポップアートという新たな表現の可能性に魅了されていったのです。
※アンディ・ウォーホル:20世紀を代表するアメリカの芸術家。マリリン・モンローやキャンベルスープ缶などを題材に、大量生産時代における芸術の在り方を提示した。
※ポップ・アート:1950年代後半から60年代にかけて欧米で興った美術様式。大衆文化の要素を取り入れ、日常的なイメージや商業的な表現を芸術作品として提示した。

作風の変遷と芸術性
1961年、リキテンスタインの芸術家としての転機となる出来事が起こります。息子がミッキーマウスのコミック本を指さしながら「きっとパパにはあれほどうまく描けないよ」と言ったことをきっかけに、彼は『Look Mickey』という作品を制作。この作品は、後のリキテンスタインの代名詞となる、独特の画風の始まりでした。
この経験を通じて、リキテンスタインは漫画という大衆文化に新たな可能性を見出します。特に戦争や恋愛をテーマにした漫画からインスピレーションを得た作品群は、アートの世界に新しい風を吹き込むことになりました。
1964年、リキテンスタインはラトガース大学ダグラス・カレッジでの教職を辞し、アートの中心地ニューヨークに戻って絵画制作に専念。当初は「低俗」「空虚」という批判も受けましたが、その独創的な表現は次第に高い評価を受けるようになっていきました。
そして1995年、リキテンスタインの芸術性は最高位の評価を受けることになります。アメリカの芸術家や芸術後援者に贈られる最も栄誉ある賞である「国民芸術勲章」を受章し、同年には日本の「京都賞」の思想・芸術部門も受賞しました。
近年、リキテンスタインの作品は美術品市場で高い評価を受けており、特に日本国内では版画作品(シルクスクリーン・リトグラフ・オフセットなど)を中心に活発な取引が行われています。
ロイ・リキテンスタインの作品の魅力や特徴
独自の技法と表現方法
リキテンスタインの作品を一目見た時、まず目を引くのは、その独特な表現技法です。作品の特徴として、はっきりとした輪郭線とベンデイドット*の使用、そして三原色を中心とした大胆な色使いが挙げられます。
ベンデイドットとは、アメリカンコミックのカラー表現に用いられる点描技法のことで、リキテンスタインはこの技法を絵画表現に取り入れました。一見すると単なる平面の色彩に見えますが、近づくと無数の点の集まりであることに驚かされます。これらのドットはステンシルを使用して描かれており、緻密な技術による表現となっています。
色彩表現においても、リキテンスタインは独自の手法を確立しています。作品の大半では、赤・青・黄の三原色に白と黒を加えた5色を基調としており、これらの色を完全に飽和させた状態で使用することで、力強い視覚効果を生み出しています。
※ベンデイドット:漫画やポスターなどで使用される網点による階調表現技法。点の大きさや密度を変えることで明暗や色調を表現する。
代表作品とシリーズ
Look Mickey(1961年)
リキテンスタインのポップアート作家としての出発点となった記念碑的な作品です。釣り針が自分に引っかかっていることに気づかずに「見て!ミッキー」と語りかけるドナルドダックと、笑いをこらえるミッキーマウスが描かれており、漫画の世界が持つインパクトと表現力の両方を見事に捉えています。
出典:Wikipedia
Whaam!(1963年)
DCコミックスの「All-American Men of War」からインスピレーションを得て制作された作品です。空中戦の様子と迫力ある擬音が表現された本作は、1960年代前半に手がけた戦争をモチーフとしたシリーズの中で最も注目を集めました。現在はイギリスの国立近代美術館テート・モダンが所蔵する代表作です。
Drowning Girl(1963年)
DCコミックスの『シークレット・ハーツ』83号における絵柄を用いて制作された作品です。恋愛漫画をモチーフとしたシリーズの一つで、溺れる少女が悲劇のヒロインとしてメロドラマ調に描かれており、当時の大衆文化を鮮やかに切り取った作品として高い評価を受けています。
出典:Wikipedia
ヘアリボンの少女(1965年)
日本でも特に人気の高い作品です。東京都現代美術館が開館を記念して約6億円で収蔵したことでも話題となりました。『Drowning girl』と同じく恋愛漫画をモチーフとして制作され、リキテンスタインの代表作の一つとして広く知られています。
出典:Artpedia
「オマージュ」シリーズ(1943年頃~)
20世紀初頭のヨーロッパの巨匠の芸術ピカソ,マティス,フェルナン・レジェ、サルバドール・ダリらに影響を受け、他ゴッホやモネ,モエルンスト,シュレンマーのオマージュ作品も人気です。




「ブラッシュストローク」シリーズ(1965年頃~)
1965年頃より描かれた「ブラッシュストローク」のシリーズは絵画以外にも彫刻作品がパブリックアート・オブジェとして世界に点在しています。「抽象表現主義(1940年代後半~50年代にかけてニューヨークを中心に隆盛した芸術様式)の風刺的なパロディ」と位置づけられています。

パブリックアートとして新宿の街を彩ります。
「Mirror(鏡)」シリーズ(1969年後半~)
点によるグラデーションを初めて用いた作品で、1969年後半から1972年にかけて40枚以上の油彩作品を制作しました。

ロイ・リキテンスタイン作品の買取相場・実績
※買取相場価格は当社のこれまでの買取実績、および、市場相場を加味したご参考額です。実際の査定価格は作品の状態、相場等により変動いたします。
I Love Liberty

Crying Girl

Mirror#5

ロイ・リキテンスタインの作品の査定・買取について、まずはお気軽にご相談ください。
ロイ・リキテンスタインの作品を高値で売却するポイント
版画
共通事項(状態を良好に保つ為の保管方法)
版画には有名画家が直接携わり監修した作品も多くあります。主に版画作品下部に作家直筆サインとエディション(何部発行した何番目の作品であるか)が記載されています。
主に紙に刷られており、湿気や乾燥に弱いです。また直射日光が長期間当たると色飛びの原因になります。掛ける場所・保管場所には十分注意しましょう。
シルクスクリーン
枠にメッシュ素材(シルクやナイロン)の布を張り、油性描画剤で直接絵を描いたり、マスキングをし絵の具の通る部分通らない部分を作った版を紙に乗せ写しとる技法です。絵画以外にも写真や被服等にも応用されています。
リトグラフ
石版画とも言われ、ヨーロッパの歴史では古くから用いられてきました。日本でも昭和から活発に使用され、各地にリトグラフ専門の工房が存在します。
ロイ・リキテンスタインについての補足情報
国内美術館での作品鑑賞
日本国内でもリキテンスタインの重要な作品を鑑賞することができます。東京都現代美術館では、『ヘアリボンの少女』をはじめ、1992年に制作された詩画集『新アメリカの没落』など、貴重な作品を所蔵しています。
横浜美術館では『泣く女』(1963年)、『夢想』(1965年)、『筆触』(1965年)など、リキテンスタインの多彩な表現を伝える作品群を見ることができます。また、国立国際美術館には『スイート・ドリームス,ベイビー!』(1965年)など、版画作品を中心とした収蔵品があります。
注目の作品と最新相場
リキテンスタインの作品価値は、年々上昇を続けています。特に原画作品は驚異的な価格で取引されており、2017年の『マスターピース』(約180億円)を筆頭に、『ナース』(約117億円)、『花飾りの帽子の女性』が57億円超で取引されるなど、高額での取引が続いています。
日本国内で流通している作品は、主に版画(シルクスクリーン・リトグラフ・オフセットなど)となっています。これらの作品は原画に比べて入手しやすい価格帯であることから、コレクターからの需要が特に高くなっています。
版画作品の買取相場は、作品の人気度や技法によって数十万円台から数百万円台まで幅広く、中には1000万円以上で評価される作品も存在します。
現代のポップカルチャーへの影響
リキテンスタインの影響力は、現代のポップカルチャーにも及んでいます。その一例として、2021年4月にはUNIQLOのTシャツブランド「UT」とのコラボレーション商品が発売され、メンズTシャツ、レディースTシャツ、エコバッグなど、様々なアイテムが展開されました。
また、リキテンスタインの作品は広告業界やコミック業界にも大きな影響を与えており、現代のグラフィックデザインにおいても、彼の革新的な表現技法は重要な参照点となっています。
まとめ
大衆文化としての漫画を芸術へと昇華させ、独自の表現技法で世界に新たな芸術の可能性を示したロイ・リキテンスタイン。時代を超えて多くの人々を魅了し続ける彼の作品は、今や現代アートの重要な一角を占めています。作品をお持ちの方は、その真価を見極めるためにも、まずは専門家による査定をお勧めします。
当社では、あなたの大切な作品の価値を最大限に引き出すべく、丁寧な査定と適切なアドバイスを提供いたします。ロイ・リキテンスタインの作品の買取をご検討される際は、ぜひお問い合わせください。
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