斎藤清作品の価値と特徴まとめ|会津の冬シリーズなど買取相場を徹底解説

  • 斎藤清
  • 木版画

はじめに

日本の木版画界に新たな風を吹き込んだ、斎藤清(さいとう きよし)をご存じでしょうか? 伝統的な木版画技法に西洋のモダンな造形を取り入れた独自のスタイルで、国内外から高い評価を受けている画家です。

会津の冬景色や古都の風景、花鳥を題材にした作品は、木版画の世界に独自の表現をもたらしました。特に欧米では「Kiyoshi Saito」の名で親しまれ、没後20年以上経った今もなお、その人気は衰えることがありません。 

今回は、そんな斎藤清の生涯と作品の魅力をご紹介します。作品をお持ちの方は、買取に関する情報も含めておりますので、ぜひ最後までお読みください。

会津の冬(100)三島町 大石田
会津の冬(100)三島町 大石田

斎藤清とは?

独自の木版画技法を確立した画家

1907年、斎藤清は福島県会津坂下町で誕生します。4歳の時に父親の仕事の関係で北海道夕張へ移住。24歳で上京した後、宣伝ポスターの仕事をしながら独学で油絵を学び創作活動を始めました。

1935年には国画会展に油彩画で初入選を果たし、翌年には木版画部門でも入選。その後、独自の表現スタイルを確立していきます。日本の伝統的な木版画技法をベースに、西洋の近代造形を取り入れた独創的な作風は、多くの人々を魅了してきました。

世界での評価と受賞歴

斎藤清が世界的に注目されるきっかけとなったのは、1949年のことでした。41歳で制作した木版画『ミルク』が第1回サロン・ド・プランタン展で一等賞を受賞。少女が牛乳を飲む瞬間を捉えたこの作品は、その後アメリカ各地を巡回する展覧会で紹介され、斎藤の名は世界へと広まっていきました。

さらに1951年、第1回サンパウロ・ビエンナーレ展において木版画『凝視(花)』が在サンパウロ日本人賞を受賞。これは戦後日本人初の国際展受賞という快挙でした。

75年の画業と芸術家としての軌跡

斎藤清は生涯を通じて創作活動に没頭し、その姿勢は晩年まで変わることはありませんでした。1995年には文化功労者に選ばれ、その功績が認められています。

長い画業の中で国内外から高い評価を得た斎藤清ですが、実際にはどのような作品で人々を魅了してきたのでしょうか。ここからは代表作とその特徴を見ていきましょう。

柿の会津
柿の会津
かすみ慈愛
かすみ 慈愛
初夏の舞
初夏の舞
地の幸
地の幸

斎藤清の作品の魅力や特徴

代表作「会津の冬」シリーズの世界

1940年に第1号が制作された「会津の冬」シリーズは、斎藤清の代表作として知られ、生涯を通じて100点以上制作された大作です。会津地方の厳しい冬を題材に、重厚な雪と風情ある古民家が描かれた作品は、今なお多くのファンを魅了し続けています。

このシリーズへの思い入れは並々ならぬものだったといいます。第二次世界大戦が近づく中、生活用品が不足する状況でも、「会津の冬」シリーズに関わる作品だけは決して手放すことはなかったそうです。

シリーズの特徴は時代とともに変化を見せます。初期の作品では、家々や木々がシルエットのように描かれ、雪の白さが際立つ表現が特徴的でした。

一方、後期の作品では、黒と白の間に豊かな色調が加わり、豪雪地帯特有の厚い雲と光が差し込まない薄暗い景色が見事に表現されています。その代表例として、1987年に制作された《会津の冬(71)若松》が挙げられます。雪景色の中にたなびく青い暖簾と、その影が落とす繊細な陰影が、静寂な空間に確かな人の営みを感じさせる秀作として知られています。

会津の冬(71)若松
会津の冬(71)若松

出典:aucfan

注目される版画シリーズと特徴

「会津の冬」以外にも、斎藤清は数々の魅力的なシリーズを残しています。奈良・鎌倉・京都といった古都の風景画や、猫や犬をモチーフにした作品なども高い評価を受けています。

中でも「凝視」シリーズや「慈愛」といった仏さまを描いた作品は、深い精神性と独自の表現技法が融合した傑作として知られています。

競艶
競艶
仲間達(A)
仲間達(A)
慈愛
慈愛

斎藤清の評価は美術界に留まりませんでした。1951年に「TIME」誌のアートセクションで紹介された作品は、瞬く間に世界中から注文が殺到。日本国内からすべての作品がなくなったと言われています。

さらに1967年には、同誌の表紙のために当時の内閣総理大臣・佐藤栄作の版画を制作。TIME誌の表紙に版画が使用されたのは、これが初めての出来事でした。

時代による表現技法と作風の変遷

1960年代までの斎藤清の作品は、モチーフをシンプルな形状でとらえ、それを厚みのある色面で構築することで、分かりやすさと重厚感を兼ね備えた表現を特徴としていました。

しかし、1960年代を境に大きな変化を遂げます。それまでの色面による構成から、より複雑なニュアンスを帯びた表現へと発展。特に1970年代からは、繊細なグラデーションによる陰影表現が特徴となっていきました。

この変化の背景には、深刻なスランプ期の存在がありました。「こんな絵を描いていて、一体おれはどうなるんだと思ったら、急に描けなくなってしまった」という言葉を残していたとされ、1960年代、斎藤は自身の表現に深い疑問を抱いていたようです。

しかし、この苦悩の時期に、斎藤はコラグラフや墨画という新しい技法に挑戦します。特にコラグラフでの制作は、版材のマチエールを強く意識した作品を生み出すきっかけとなりました。

この試行錯誤の末に到達したのが、繊細な陰影表現でした。洗練された構図の中に、微妙な階調による奥行きと深い精神性が加わることで、斎藤の作品は新たな境地へと到達します。とりわけ1970年代以降の作品には、この特徴が顕著に表れています。

会津の冬(101)坂下町杉
会津の冬(101)坂下町杉

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斎藤清の作品の買取相場・実績

※買取相場価格は当社のこれまでの買取実績、および、市場相場を加味したご参考額です。実際の査定価格は作品の状態、相場等により変動いたします。

一般的に版画作品は複製が可能なため、単品制作の油彩画や日本画と比べて市場価値が抑えられる傾向にありますが、斎藤清の木版画は現在も高い評価を保ち続けています。
中でも、「会津の冬」に代表される地域性を活かしたシリーズ作品は、特に市場での人気が高くなっています。

会津の冬(50)柳津

会津の冬(50)
買取実績価格:30~40万円

63歳からの代表作「会津の冬」シリーズの作品で、雪に覆われた屋根と柿の対比が鮮やかな詩情があふれる作品です。このシリーズは文化庁買上げに選出され、日本の版画史の到達点を示すと言われており高額査定の対象となります。

猫と少女

猫と少女
買取実績価格:4~6万円

この作品の女性は1951年にビエンナーレでサンパウロ日本人賞を受賞し、世界的な評価を得た「凝視」という作品と近似しています。また猫は特別な想いで何度も描いており、猫の作品の中でもモダニズム的な表現が見られる重要な作品となっています。

門、鎌倉(Ⅰ)

門 鎌倉Ⅰ
買取実績価格:4~6万円

住居を東京から鎌倉に移して古寺のモチーフが増え、慈しみや温かさという精神性が表れ始めた63歳の時の作品です。40代に日本の庭園をモンドリアンの抽象画と重ねてイメージした時期からの進化形で、多くの人に愛される寺のシリーズの逸品です。

斎藤清の作品の査定・買取について、まずはお気軽にご相談ください。

斎藤清の作品を高値で売却するポイント

来歴や付帯品・保証書

来歴や付帯品:購入先の証明や美術館に貸出、図録に掲載された作品等は鑑定書が付帯していなくても査定できる場合があります。
保証書:購入時に保証書が付帯する作品もあるので大切に保管しましょう。

贋作について

ここ数十年のインターネットや化学技術の向上により、著名作家の贋作が多数出回っています。

ネットオークションでは全くの素人を装い、親のコレクションや資産家所蔵品等の名目で出品し、ノークレームノーリターンの条件での出品が見受けられます。

落札者は知識がないがために落札後のトラブルの話をよく聞きます。お手持ちの作品について「真贋が気になる」「どの様に売却をすすめるのがよいか」等、お困りごとがあればご相談のみでも承っております。

版画

共通事項(状態を良好に保つ為の保管方法)

版画には有名画家が直接携わり監修した作品も多くあります。主に版画作品下部に作家直筆サインとエディション(何部発行した何番目の作品であるか)が記載されています。

主に紙に刷られており、湿気や乾燥に弱いです。また直射日光が長期間当たると色飛びの原因になります。掛ける場所・保管場所には十分注意しましょう。

木版画

板に彫刻し、絵を描いた後に凸部分に色を塗り、紙に写しとる技法です。

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斎藤清についての補足情報

斎藤清美術館の収蔵作品と見どころ

やないづ町立斎藤清美術館は、斎藤清の作品を専門に展示する国内唯一の美術館です。代表作「会津の冬」シリーズをはじめ、1,000点をゆうに超える斎藤清作品が展示されています。

また、美術館から徒歩5分の場所には「斎藤清アトリエ館」があり、斎藤が晩年の10年余りを過ごした制作の場を見学することができます。3階のアトリエからは斎藤清が作品にした雄大な只見川と、奥会津の美しい山々が見られます。

近年の展覧会情報と市場動向

2024年には斎藤清美術館で「PHYSICAL BEAUTY 斎藤清×ヌード」、「パリめぐり ~斎藤清をおいかけて」、「再考・会津の冬」、「これも斎藤清なの?」といった企画展が開催されました。

世界の美術館での収蔵状況

斎藤清の作品は、ニューヨーク近代美術館ボストン美術館など、世界の主要な美術館にも収蔵されています。「犬」(1954年)や「2匹の猫」(1952年)、「京都大徳寺」(1959年)といった作品が、海外の美術館でも大切に保管されています。

まとめ

斎藤清の作品についてご紹介しましたが、その魅力を感じていただけたでしょうか?

日本の伝統と西洋の近代性を融合させた斎藤清の木版画は、時代を超えて多くの人々を魅了し続けています。特に、「会津の冬」シリーズをはじめとする風景画は、現在も国内外で高い人気を集めています。作品をお持ちの方は、その価値を見極めるためにも、まずは専門家による査定をお勧めいたします。

当社では、あなたの大切な作品の価値を最大限に引き出すべく、丁寧な査定と適切なアドバイスを提供いたします。斎藤清の作品の買取をご検討される際は、ぜひお問い合わせください。

また、LINEからの査定依頼も受け付けています。(スマホで写真を撮って送るだけ!)詳しくは【LINE査定ページ】をご覧ください。

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