はじめに
大正ロマンを代表する画家・竹久夢二。その名を聞いて、憂いを帯びた美しい女性像を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
画家としての活動はもちろん、夢二の才能は実に多彩です。児童雑誌や詩文の挿絵、さらには詩や歌謡、童話まで、幅広い分野で独自の世界を築き上げました。
今回は、そんな竹久夢二の生涯と作品の魅力をご紹介します。作品の買取に関する情報もご用意していますので、竹久夢二の作品に興味をお持ちの方、売却をご検討の方は、ぜひ最後までお読みください。
竹久夢二とは?
大正ロマンを代表する画家としての歩み
竹久夢二は、どのような人生を歩んだのでしょうか。
1884年、岡山県に生まれた夢二は、代々酒造業を営む家の次男でした。兄が前年に亡くなっていたため、事実上の長男として育てられています。
17歳という若さで単身上京した夢二は、翌年早稲田実業学校への入学を果たします。そして22歳のとき、人生の転機が訪れます。『中学世界』に投稿したコマ絵「筒井筒」が第一賞に入選したのです。このとき初めて「竹久夢二」という名を用い、画家としての第一歩を踏み出しました。
その4年後、1909年に発表した『夢二画集 春の巻』は、たちまち世の注目を集めます。この大きな成功により、夢二の名は一気に世間に広まることとなったのです。
画家以外の多彩な活動
竹久夢二の魅力は、その多彩な才能にもあります。画家としてだけでなく、児童雑誌や詩文の挿絵を手がけ、さらには詩、歌謡、童話まで幅広い分野で活躍。特に童画や童話の分野では、子どもたちの心をつかむ数々の作品を生み出しました。中でも1910年に発表した『子供の国』は、子どもたちの目線に立った平易な表現と親しみやすい絵で評価を集めました。
1914年には、夢二の新たな挑戦が始まります。日本橋呉服町に開店した「港屋絵草紙店」では、自身がデザインした千代紙や便箋、封筒、絵葉書、版画などを販売。この店は大いに賑わい、多くの人々を魅了したといいます。
晩年には、さらに活動の幅を広げていきます。書籍の装幀から広告宣伝物、日用雑貨、浴衣まで、暮らしに寄り添うデザインを次々と生み出しました。
こうした活動は、日本の近代グラフィック・デザインの先駆けとして評価されています。生活と結びついた美術、そして産業との融合を目指した夢二の姿勢は、時代を先取りするものだったのです。
このように多彩な才能を発揮した夢二ですが、その作品の源泉となったのは、彼の波乱に満ちた人生、特に3人の女性との出会いでした。
夢二が愛した3人の女性
竹久夢二の作品を語る上で、欠かすことができないのが3人の女性たちの存在です。彼女たちは夢二の人生に深く関わり、作品にも大きな影響を与えました。
岸たまき
出典:Wikipedia
最初の女性は岸たまき。夢二が24歳の時に結婚した唯一の正式な妻です。わずか2年で離婚することになりますが、その後も同居と別居を繰り返し、3人の男児をもうけるという不思議な関係が続きました。
笠井彦乃
出典:Wikipedia
次に出会ったのが、後に「最愛のひと」「永遠のひと」と語られることになる笠井彦乃です。12歳年下の彦乃との出会いは、夢二30歳の時でした。二人は駆け落ち同然で京都で暮らし始めますが、その幸せな時は長くは続きませんでした。1920年、彦乃は結核により25歳の若さでこの世を去ったのです。
お葉
出典:Wikipedia
最愛の人を失い傷心の夢二の前に現れたのが、お葉(本名:佐々木カ子ヨ)でした。夢二は失意の中、彦乃への思いをお葉に重ね合わせていきます。しかし、絶えず彦乃の面影を追い続ける夢二との恋に悩んだお葉は、精神的に追い詰められ、わずか3年足らずで別れを決意することになりました。
これら3人の女性たちとの出会いと別れは、夢二の作品に大きな影響を与えています。特に代表作「黒船屋」は、最愛の女性・彦乃への想いが込められた作品として知られています。
では、そんな夢二が残した作品の魅力や特徴を見ていきましょう。
竹久夢二の作品の魅力や特徴

代表作「黒船屋」について
竹久夢二の代表作として、多くの人々に愛されているのが「黒船屋」です。1919年に制作されたこの作品には、夢二の深い想いが込められています。
すらりとした色白の美しい女性が、一匹の黒猫を優しく抱きかかえる姿。女性が腰をおろす赤い箱には、作品名である「黒船屋」の文字が刻まれているのが印象的です。
黒猫には夢二自身の姿が重ねられているとされ、この作品全体に込められた想いは、最愛の人であった彦乃への深い愛情を表現したものとして知られています。
夢二式美人画の特徴
「夢二式美人画」という言葉をご存知でしょうか。
浮世絵的な色づかいと日本画の技法を見事に融合させた、竹久夢二ならではの女性像を指します。
夢二が描く女性たちには、特徴的な共通点があります。大きな目と愁いを帯びた表情、華奢な体つきに大きな手足、そして緩やかなS字を描く立ち姿。はかなげでありながら凛とした美しさは、見る人の心を惹きつけて離しません。
この独特の画風は、夢二が24歳で結婚した岸たまきとの出会いから生まれたと言われています。着物には当時「モダン」とされた色柄が使われ、女性の社会進出や西洋化が進んでいた時代の空気が見事に表現されています。
特に大正期の若い世代の心を強く捉えた夢二の女性像は、単なる絵画としてだけでなく、ファッションアイコンとしても大きな影響力を持ちました。夢二が描く女性たちの装いを真似る若い女性が数多く現れ、まさに時代の寵児となったのです。

版画作品:セノオ楽譜から広がる多彩な世界
竹久夢二の魅力は、版画作品にも存分に発揮されています。特筆すべきは、セノオ楽譜の表紙画制作でしょう。なんと270点以上もの作品を手がけています。
1924年には、雑誌『婦人グラフ』の表紙や挿絵のために木版画『秋のしらべ』を制作。同年、繊細な感性が光る「花火」や「雪の風」といった木版画作品も手がけ、多くの人々を魅了してきました。
その他の代表的な作品
竹久夢二は数多くの絵画作品を残しています。既にご紹介した『黒船屋』以外にも、重要な作品をご紹介します。
- 『長崎十二景』(1920年):夢二が永見氏への感謝の意を込めて制作した風景画連作
- 『女十題』(1921年):情感に満ちた雰囲気で描かれた10人の女性を描いた連作
- 『立田姫』(1931年):晩年の傑作と呼び声が高い日本画

これらの作品は、夢二の芸術性が遺憾なく発揮された傑作として、高い評価を受けています。
竹久夢二作品の買取相場・実績
直近の大手オークション会社の落札価格
・2025年1月 女性図(掛軸):1,500,000円で落札
・2024年07月 女性図(掛軸):2,900,000円で落札
・2024年06月 舞妓(掛軸):4,400,000円で落札
・2023年10月 女性図(掛軸):2,000,000円で落札
・2022年10月 女性図(色紙):1,650,000円で落札
・2022年07月 女性図(掛軸):4,200,000円で落札
当社の買取実績
※下記では、過去に実際に当社で取り扱った竹久夢二の作品をご紹介いたします。
当社では、これまでに竹久夢二作品を多数取り扱っており、豊富な査定・買取実績がございます。作品の評価や真贋のご相談など、お気軽にご相談ください。






竹久夢二作品の査定・買取について、まずはお気軽にご相談ください。
竹久夢二の作品を高値で売却するポイント
竹久夢二の鑑定機関・鑑定人
- 東美鑑定評価機構 鑑定委員会
一般財団法人東美鑑定評価機構は、美術品の鑑定による美術品流通の健全化及び文化芸術の振興発展に寄与する公的鑑定機関。
来歴や付帯品・保証書
来歴や付帯品:購入先の証明や美術館に貸出、図録に掲載された作品等は鑑定書が付帯していなくても査定できる場合があります。
保証書:購入時に保証書が付帯する作品もあるので大切に保管しましょう。
贋作について
ここ数十年のインターネットや化学技術の向上により、著名作家の贋作が多数出回っています。
ネットオークションでは全くの素人を装い、親のコレクションや資産家所蔵品等の名目で出品し、ノークレームノーリターンの条件での出品が見受けられます。
落札者は知識がないがために落札後のトラブルの話をよく聞きます。お手持ちの作品について「真贋が気になる」「どの様に売却をすすめるのがよいか」等、お困りごとがあればご相談のみでも承っております。
日本画(額)
状態を良好に保つ為の保管方法
日本画は主に紙や絹に岩絵具で描かれており、湿気やカビにとても弱いです。また直射日光などは酸化の原因になり、劣化します。直射日光を避け、涼しい場所に飾りましょう。また箱にしまったままも湿気やすい為、最低でも年に2回は風を通すようにしましょう
修復方法
日本画修復の専門店にお願いすることが1番です。下手に自身で手を入れると、返って悪化するケースもあります
共シール
「共(とも)シール」とはいわば、日本画に付帯する作品証明のような物です。多くは表題(絵のタイトル)と作家名が、作家自身の直筆で書かれており、絵画の裏面に貼ってあります。共シールの有無により評価が変わる場合があるので、ご所有の作品にあるか確認してみてください。
掛軸
状態を良好に保つ為の保管方法
掛軸は主に紙や絹に岩絵具で描かれており、湿気やカビにとても弱いです。また直射日光などは酸化の原因になり、劣化します。直射日光を避け、涼しい場所に飾りましょう。また箱にしまったままも湿気やすい為、最低でも年に2回は風を通すようにしましょう。
共箱(ともばこ)
掛軸を収納する箱の事で、蓋の表に表題(作品タイトル)、蓋の内側に作家のサインが作家自身の直筆で記載されてあります。共箱は掛軸の証明書の役割をしており、無い場合は査定額に響いてきます。
書付、識箱・極箱
“共箱の分類に書付(かきつけ)と識箱(しきばこ)・極箱(きわめばこ)があります。
書付とは茶道具を中心に各家元が優れた作品に対して銘や家元名を共箱に記します。
識箱・極箱は、作者没後、真贋を証明する為、鑑定の有識者や親族が間違いがないと認定した物に共箱の面や裏に記します。 ”
版画
共通事項(状態を良好に保つ為の保管方法)
版画には有名画家が直接携わり監修した作品も多くあります。主に版画作品下部に作家直筆サインとエディション(何部発行した何番目の作品であるか)が記載されています。
主に紙に刷られており、湿気や乾燥に弱いです。また直射日光が長期間当たると色飛びの原因になります。掛ける場所・保管場所には十分注意しましょう。
リトグラフ
石版画とも言われ、ヨーロッパの歴史では古くから用いられてきました。日本でも昭和から活発に使用され、各地にリトグラフ専門の工房が存在します。
木版画
板に彫刻し、絵を描いた後に凸部分に色を塗り、紙に写しとる技法です。
竹久夢二についての補足情報
作品の展示・所蔵情報
竹久夢二の作品を実際にご覧になりたい方には、ぜひ夢二郷土美術館と竹久夢二美術館をお訪ねいただきたいと思います。
- 夢二郷土美術館
夢二郷土美術館は、国内初の竹久夢二専門美術館として開館。肉筆画のコレクションは国内随一を誇り、季節ごとに趣の異なる企画展を開催しています。
- 竹久夢二美術館
一方、竹久夢二美術館は、夢二がかつて暮らした「菊富士ホテル」跡地に建つ、都内唯一の夢二専門美術館です。
3,300点を超える豊富なコレクションを有し、四半期ごとに趣向を凝らした企画展を開催しています。200点以上の作品が常設展示されており、夢二の多彩な芸術の世界に触れることができます。
最近の評価と市場動向
21世紀に入った今もなお、竹久夢二の人気は衰えることを知りません。画集、詩文集、童話が様々な装丁で出版され続け、専門美術館以外でも数多くの展示会が開催されています。
うれしいことに、新たな作品の発見も相次いでいます。2017年には優美な屏風絵『投扇興』が見つかり、2020年には漫画家・田河水泡への贈り物だった日本画『サーカス』が、ご遺族から美術館に寄贈されました。このように、夢二の作品は今なお新たな発見が続いています。
参考記事1:竹久夢二「投扇興」東京で初公開 新春の喜びをたおやかに
参考記事2:竹久夢二の「サーカス」初公開 漫画家の田河水泡が旧蔵
まとめ
竹久夢二は、大正時代という激動の時代に独自の芸術世界を築き上げました。「夢二式美人画」で知られる美人画、優美な版画作品、さらには装幀や日用品のデザインまで、その創作活動は多岐にわたります。3人の女性たちとの出会いと別れも、作品に深い影響を与えました。
現代では、美術館での展示や新たな作品の発見が続いており、夢二芸術への関心は今なお高まり続けています。あなたのお手元にある夢二の作品にも、新たな価値が眠っているかもしれません。作品の査定をご検討の際は、ぜひ専門家にご相談ください。
当社では、あなたの大切な作品の価値を最大限に引き出すべく、丁寧な査定と適切なアドバイスを提供いたします。竹久夢二の作品の買取をご検討される際は、ぜひお問い合わせください。
また、LINEからの査定依頼も受け付けています。(スマホで写真を撮って送るだけ!)詳しくは【LINE査定ページ】をご覧ください。