篠田桃紅|皇室も認めた墨象芸術の第一人者・作品価値と買取相場を徹底解説

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はじめに

メトロポリタン美術館やグッゲンハイム美術館など、世界の名だたる美術館が所蔵する篠田桃紅(しのだ とうこう)の作品。書と抽象画の境界を越えて生み出された独自の表現は、今もなお多くのコレクターを魅了し続けています。ここでは、107年の生涯で絶えず新しい表現を追求し続けた篠田桃紅の軌跡と、その作品価値について詳しく解説します。作品の買取や購入をご検討の方に向けた情報も含めていますので、ぜひ最後までお読みください。

EVENTIDE
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篠田桃紅とは?

5歳から始まった書との出会い

1913年、篠田桃紅は中国・大連で7人兄弟の5番目として生まれました。幼い頃に一家は日本に戻り、5歳の時に父親から書の手ほどきを受けます。以降、ほぼ独学で書を極めていった篠田桃紅。幼少期より手本をまねることに物足りなさを感じ、独自の美的表現を追い求めるようになりました。

独自の抽象表現への道のり

戦時下での結核との闘病を乗り越え、東京での新たな生活を始めた篠田桃紅は、1947年、これまでの書道の常識を超えた創作活動へと歩みを進めます。表現の可能性を広げながら抽象的な作品制作に取り組み始め、1950年代には書道美術院での活動を通じて、墨象(前衛書道)を探求する作家たちとの交流を深めていきました。

Felicity
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国内外での評価と功績

1956年、43歳の時に単身渡米した篠田桃紅は、ニューヨークを拠点に活動を展開します。文字が文字として読まれない外国で自分の作品がどう受け入れられるのか、挑戦する中で、抽象表現主義と墨象を融合させた独自の芸術が生まれ、アメリカで高く評価されました。シカゴ美術館、メトロポリタン美術館、グッゲンハイム美術館など、世界の主要な美術館が彼女の作品を所蔵しています。

2005年にはニューズウィーク日本版の「世界が尊敬する日本人100人」にも選ばれ、100歳を超えても現役として制作活動を続けました。2021年3月1日、107歳でその生涯を閉じるまで、常に新しい表現を追求し続けた芸術家として知られています。

篠田桃紅の作品の魅力や特徴

代表作品『永劫』『一瞬』の解説

篠田桃紅の代表作である『永劫』と『一瞬』は、100歳を目前にして制作された記念碑的作品です。60cm×240cmの和紙に描かれた『永劫』では、金を基調とした画面に、一本の銀泥による垂直的な線が描かれ、独特の静謐さを醸し出しています。対作品となる『一瞬』では、銀を基調とした画面に、斜めの金泥による一筆が力強く描かれ、静謐な空間に鮮烈な印象を与える大作となっています。

『永劫』と『一瞬』の作品は岐阜現代美術館のサイトよりご確認下さい。

もう一つの代表作『展開』と『出遇』

1965年に制作された『展開』と『出遇』は、国立京都国際会館に設置された大作です。『展開』は会議場Room Aの前に位置するレリーフ壁で、墨と銀泥による躍動感あふれる表現が特徴となっています。同じく制作された『出遇』は、会議場Room Bの入り口横に設置されたモノクロの壁画で、篠田芸術の真髄を示す作品として高い評価を受けています。

※出典:国立京都国際会館

作風の変遷と芸術性

1950年代の篠田桃紅の作品は、力強い筆致が特徴でした。その後、80年代から90年代にかけて、線はより洗練され、繊細な表現へと変化していきます。特に晩年の作品では、朱色の高貴さと墨の鋭さが見事に調和し、静謐な世界観を作り出しています。この変遷は、芸術家としての深い思索と技法の進化を物語っています。

墨・朱・金の独自技法

篠田桃紅の作品は、文字を解体し、そこから現れた線や形を墨の濃淡などで表現することが特徴です。色彩は黒、金、赤などに限定され、非常にシンプルです。和紙に、墨・金箔・銀箔・金泥・銀泥・朱泥といった日本画の画材を用い、限られた色彩で多様な表情を生み出しています。

リトグラフ作品の特徴

1960年にフィラデルフィア美術館から来日した刷師アーサー・フローリーの勧めでリトグラフ制作を始めました。手彩色が施されたリトグラフ作品も多く手がけ、それらは版画作品としても人気を集めています。

June
June

篠田桃紅作品の買取相場・実績

※買取相場価格は当社のこれまでの買取実績、および、市場相場を加味したご参考額です。実際の査定価格は作品の状態、相場等により変動いたします。

人よ

人よ
買取実績価格:200~300万円

この作品は肉筆の1点物で、朱色の部分にサインである「桃」と大きく書かれた作家自らを象徴する貴重な作品です。1点物の肉筆作品は高額査定の対象となっています。また同じ題名で近似の壁画作品を港区のホテル・コンラッド東京に制作しています。

作品

作品
買取実績価格:30~50万円

篠田桃紅は40代で渡米、文字を解体した抽象表現の作品が高く評価されます。この作品は篠田作品の中でもより抽象的で「空を飛ぶ鳥のように自由に線を引きたい」という作家の想いが率直に表れた作品と言えます。

For Thee A

For Thee A
買取実績価格:15~20万円

リトグラフ版画に手彩色が施された墨一色の作品です。墨は長い作家人生で常に向き合い、一瞬の心に浮かんだ形を表してきた鏡のような存在でした。篠田作品の中でも墨だけで描かれ筆の勢いがある作品は高い評価を得ています。

篠田桃紅の作品を高値で売却するポイント

篠田桃紅の鑑定機関・鑑定人

篠田桃紅鑑定委員会 (サン・カイ・ビ内)

来歴や付帯品・保証書

来歴や付帯品:購入先の証明や美術館に貸出、図録に掲載された作品等は鑑定書が付帯していなくても査定できる場合があります。
保証書:購入時に保証書が付帯する作品もあるので大切に保管しましょう。

贋作について

ここ数十年のインターネットや化学技術の向上により、著名作家の贋作が多数出回っています。

ネットオークションでは全くの素人を装い、親のコレクションや資産家所蔵品等の名目で出品し、ノークレームノーリターンの条件での出品が見受けられます。

落札者は知識がないがために落札後のトラブルの話をよく聞きます。お手持ちの作品について「真贋が気になる」「どの様に売却をすすめるのがよいか」等、お困りごとがあればご相談のみでも承っております。

版画

共通事項(状態を良好に保つ為の保管方法)

版画には有名画家が直接携わり監修した作品も多くあります。主に版画作品下部に作家直筆サインとエディション(何部発行した何番目の作品であるか)が記載されています。主に紙に刷られており、湿気や乾燥に弱いです。また直射日光が長期間当たると色飛びの原因になります。掛ける場所・保管場所には十分注意しましょう。

リトグラフ

石版画とも言われ、ヨーロッパの歴史では古くから用いられてきました。日本でも昭和から活発に使用され、各地にリトグラフ専門の工房が存在します。

篠田桃紅についての補足情報

主要収蔵美術館での作品鑑賞

美術館

代表作『永劫』と『一瞬』は岐阜現代美術館で鑑賞できます。同美術館はコレクションの中心に篠田桃紅作品を据えており、800点を超える作品が鑑賞できる美術館です。

都内では、菊池寛実記念・智美術館で大作を鑑賞できます。海外では、メトロポリタン美術館、ニューヨーク現代美術館、グッゲンハイム美術館、スミソニアン博物館、大英博物館、ブルックリン美術館などで作品が所蔵されています。

展覧会と皇室とのゆかり

2013年の回顧展「篠田桃紅 百の譜」は、100歳を迎えた篠田の芸術の集大成として注目を集めました。また、皇室との関わりも深く、皇居御食堂や皇室専用の新型車両に作品が収蔵されています。2003年には原美術館での個展に皇后陛下が行啓されるなど、その芸術性は皇室からも認められていました。

作品の真贋判定ポイント

篠田桃紅の作品の真贋判定は慎重な確認が必要です。原画の場合は「篠田桃紅鑑定委員会」の登録証書が重要となりますが、登録証書がなくても査定は可能です。リトグラフ作品では、作家本人のサインの有無が重要で、サイン入りの作品は高額評価となります。なお、作者の死後に遺族などが作品を刷る場合はスタンプが押され、本人が制作したものより価値が下がります。

著作活動と晩年の功績

多彩な才能を持つ篠田桃紅は、絵画制作と並行して文筆活動でも注目を集めました。1979年に発表した随筆集『墨いろ』は日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。その後も執筆活動を続け、2015年には『一〇三歳になってわかったこと 人生は一人でも面白い』、2017年には『桃紅一〇五歳 好きなものと生きる』を執筆し、いずれもベストセラーとなって多くの読者の心を捉えました。

まとめ

篠田桃紅は、書と抽象画の融合という独自の表現で、世界的な評価を確立した稀有な芸術家です。メトロポリタン美術館をはじめとする世界の主要美術館にも作品が収蔵されています。

墨・朱・金という限られた色彩で豊かな表現世界を築き、独自の芸術性を追求し続けた篠田桃紅。その作品は今なお、国内外の美術品市場で注目されています。岐阜現代美術館や菊池寛実記念・智美術館では、実際に作品の魅力を体感することができ、芸術作品としての価値をより深く理解することができるでしょう。

作品の価値を見極めるには専門的な知識が必要です。作品の売却や購入をお考えの方は、まずは信頼できる専門家による鑑定・査定をお勧めします。篠田桃紅が遺した芸術的価値と共に、作品の適正な評価を見極めることが重要です。

当社では、あなたの大切な作品の価値を最大限に引き出すべく、丁寧な査定と適切なアドバイスを提供いたします。篠田桃紅の作品の買取をご検討される際は、ぜひお問い合わせください。

篠田桃紅の作品の買取をご検討される際はこちらをご覧下さい。

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