片岡球子作品の買取相場と魅力 ー 富士山シリーズを中心に徹底解説

はじめに

みなさん、昭和から平成にかけて活躍した日本を代表する女流日本画家をご存知ですか?大胆な構図と鮮やかな色彩で知られる富士山を題材にした作品群や「面構」シリーズで知られる片岡球子の作品は、日本画の新たな可能性を示すものとして高い評価を得ています。

みなさんは、日本画に対してどのようなイメージをお持ちですか?落ち着いた色彩と繊細な筆致を想像される方が多いのではないでしょうか。しかし、今回ご紹介する片岡球子の作品は、そんな従来の日本画のイメージを覆す、驚くべき魅力に満ちています。

今回は、片岡球子の103年の生涯と作品の魅力をご紹介します。作品の特徴や買取に関する情報もお伝えしますので、片岡球子の作品に興味のある方、買取を検討している方は、ぜひ最後までお読みください。

めでたき赤富士
めでたき赤富士

片岡球子とは?

片岡球子は1905年1月5日、北海道札幌市に生を受けました。8人兄弟の長女として育った球子は、幼少期から絵を描くことを好んでいたといいます。しかし当初は、両親の意向もあり医者を志していたそうです。

転機が訪れたのは18歳の時。周囲の勧めにより、東京の女子美術学校(現・女子美術大学)に入学。ここで日本画家の吉村忠夫に師事し、絵画の道を歩み始めます。1926年に女子美術専門学校日本画科を卒業した後は、横浜市大岡尋常高等小学校(現・横浜市立大岡小学校)で教鞭をとりながら、画家としての活動も並行して続けていきました。

その後の球子の功績は広く認められ、1986年には文化功労者として顕彰されました。1989年には文化勲章も受章。2008年1月16日、103歳でその生涯を閉じるまで、片岡球子は現役の画家として精力的な創作活動を続け、日本画壇に大きな足跡を残しました。

「落選の神様」から日本画革命児へ

球子の画家としての道のりは決して平坦ではありませんでした。24歳で日本美術院展に「枇杷」が入選を果たしましたが、師である吉村忠夫は日本美術院に反対しており、破門されてしまいます。

枇杷
枇杷

その後、球子は美術院展や帝展への出品を続けますが、度重なる落選に見舞われます。このため「落選の神様」と揶揄される苦しい時期を経験することになりました。しかし、球子は決して諦めることなく創作を続けました。

やがて「学ぶ子等」「炬燵」「祈祷の僧」などの作品で入選を重ねていきます。その努力が実を結び、日本画壇の重鎮である横山大観、小林古径、前田青邨らにその才能を認められるようになりました。こうして球子は、苦難の時期を乗り越え、日本画家としての地位を確立していったのです。

片岡球子の生涯と芸術活動

球子の画家としての才能が本格的に開花したのは、50歳で小学校教師を退職してからのことです。1955年、女子美術大学日本画科の専任講師となり、1965年には教授に昇進。翌1966年には愛知県立芸術大学が開校したことで、日本画科主任教授として迎えられることとなりました。

この頃から、球子は全国を巡りながら様々な山々を描くようになり、代表作となる「富士山」シリーズもこの時期に始まります。1964年、59歳で初めて版画制作に挑戦し、新たな表現の可能性を開拓。61歳からは、後にライフワークとなる「面構」シリーズにも着手しました。

晩年には多くの名誉ある賞を受賞します。1975年に日本芸術院恩賜賞、1976年に勲三等瑞宝章、1989年には文化勲章を受章しました。女性画家として文化勲章受章は、上村松園、小倉遊亀に次いで3人目の快挙です。これにより、球子は「日本三大女流画家」と称されることとなりました。

片岡球子は、百寿を迎えた2005年に脳梗塞を患いましたが、その後も回復に励みながら創作活動を継続。しかし、2008年1月16日、103歳の誕生日を過ぎてわずかな時期に、神奈川県藤沢市の医療機関で急性心不全により永眠。その生涯にわたる芸術への貢献が高く評価され、死後、従三位の位階が贈られました。

片岡球子の作品の魅力や特徴

片岡球子の作品の最大の特徴は、従来の日本画にはなかった大胆な構図と強く感情を揺さぶるきらびやかな色使いです。「見る人の息を詰まらせるほど迫力のある絵を描きたい」と若き日に抱負を語ったように、球子の作品は見る人に強烈な印象を与え、心を揺さぶります。

「富士山」シリーズの特徴と評価

花咲く富士
花咲く富士

球子の作品の中で最も有名なのが「富士山」シリーズです。50歳を過ぎてから描き始めたこのシリーズは、球子の代表作として広く知られています。富士山は、球子にとって特別な存在でした。「火を噴かないから」という理由で選んだ山でしたが、実際に描いてみると、その厳かさと雄大さに圧倒されたといいます。「ここで骨を埋めるまで富士山を描こうと思ったの」という決意のもと、生涯にわたって富士山を描き続けたのです。

「富士山」シリーズの特徴は、力強い輪郭線で描かれた富士山と、その裾野に鮮やかに描かれた花や木々です。赤富士や青富士など、様々な色彩で富士山を表現し、時には金箔や銀箔を使用した豪華な作品も制作しました。

特に人気が高いのは「めでたき富士」シリーズです。同タイトルで複数作品が描かれており、球子自身のお気に入りの作品でもありました。富士山を吉祥のモチーフとして捉え、見る人に勇気や希望を与えたいという思いが込められています。皆さんも一度、片岡球子の描く富士山を実際に見てみませんか?その鮮やかな色彩と大胆な構図に、きっと心を奪われることでしょう。

めでたき赤富士
めでたき赤富士

「面構」シリーズの魅力

「面構(つらがまえ)」シリーズは、球子が61歳から取り組んだ作品群です。1966年に愛知県立芸術大学の日本画科主任教授に就任した際、若い学生たちと共に「新しい日本画」を志す決意表明を込めて制作を開始。

このシリーズでは、武将や浮世絵師、仏僧たちといった歴史上の人物の肖像を描いています。38年間で40点以上の作品が制作され、「富士山」シリーズと並ぶ球子を象徴する作品となっています。

「面構」シリーズの特徴は、歴史上の人物に対する球子独自の解釈が加えられた点です。「現代に生きていたらどんな行動をするか」という視点で、その人物の肖像画や同時代の風俗を参考にしながら、球子ならではの表現で描き出しています。

例えば、浮世絵師や水墨画作家を題材とした作品では、背景に絵師や作家たちの代表作を描くという斬新な発想で、唯一無二の存在感を放つ作品を生み出しました。

金閣寺の住人
金閣寺の住人

革新的な制作技法

球子の作品の魅力は、その革新的な制作技法にもあります。従来の日本画の枠にとらわれない自由な表現を追求し、様々な実験的な手法を取り入れています。

例えば、岩絵の具にボンドを混ぜたり、版画の紙にワインを染み込ませたりするなど、常識を覆す手法を用いました。また、箔を貼る代わりに裏打ち用の紙や強性紙と呼ばれる耐久性のある和紙を貼ったり、膠の代わりに接着剤で絵の具を溶いたりと、独自の技法を次々と開発。これらの挑戦的な手法により、球子の作品は独特の質感と表現力を獲得し、従来の日本画とは一線を画す魅力で多くの人々を魅了し続けています。

片岡球子作品の買取相場・実績

※買取相場価格は当社のこれまでの買取実績、および、市場相場を加味したご参考額です。実際の査定価格は作品の状態、相場等により変動いたします。

桜島

桜島
買取実績価格:200~300万円

今でこそ「富士の画家」と言われていますが、34歳頃に最初は各地の火山を取材し作品制作、富士山をテーマとするまで6~7年間、浅間山や桜島の作品を多く描きました。鮮やかな色彩で表現された火山からはエネルギーを感じます。

雪ふりつもる白き富士

雪ふりつもる白き富士
買取実績価格:25~35万円

1991年に制作された版画集「金・銀・紅・白 富士四題」のうちの1作品です。作家自らリトグラフを監修し、四季や心情により違う顔をみせる富士を豪華絢爛に描いています。

富貴の牡丹

富貴の牡丹
買取実績価格:15~25万円

独特のタッチで描かれた作家生前のオリジナル版画です。画面いっぱいに広がる大輪の牡丹は高貴な風格を感じます。

富士山シリーズを中心とした片岡球子作品の相場

片岡球子の作品の買取相場は、作品の種類、サイズ、状態などによって大きく変動します。特に人気の高い「富士山」シリーズは、高額で取引される傾向にあります。例えば、「五合目からの赤富士」などの富士山を題材にした作品の買取相場は、数十万円から百万円弱ほど。一方、「桜島」という作品の買取相場は数百万円程度とされています。

また、作品の種類によっても価格に差が出ます。原画(直筆画)は最も高値がつき、生前に制作された版画がそれに続きます。没後に制作された版画は、同じ図柄でも買取価格が下がる傾向にあります。

買取価格に影響を与える要素としては、作品の保存状態、署名や印章の有無、箱書きや証明書の有無などが挙げられます。また、美術関連の書籍や図録に掲載されている作品は、より高い評価を受ける可能性があります。片岡球子の作品の価値は年々上昇傾向にあるため、正確な相場を把握するには、専門家による査定が不可欠です。

片岡球子作品の評価と市場価値

片岡球子の作品、特に日本画で描かれた「富士山」のシリーズは高い評価を受けています。富士山を主題にした作品の国内大手オークションハウスでの落札価格の推移を見ると、その人気と価値が顕著に表れています。

富士山シリーズの落札価格例:

  • 2024年:30号サイズ 820万円
  • 2024年:6号サイズ 700万円
  • 2023年:8号サイズ 630万円
  • 2023年:20号サイズ 580万円
  • 2023年:6号サイズ 320万円

過去10年間の最高落札価格:

  • 2015年:30号サイズ 2,100万円
  • 2015年:10号サイズ 1,300万円

図柄やサイズにより価格は大きく変動しますが、特に迫力のある赤富士で花などが賑やかに描かれた作品は高額になる傾向があります。

「面構」シリーズの落札価格例:

  • 2011年:写楽を描いた作品 580万円
  • 2000年:歌川豊國を描いた作品 1,350万円

「面構」シリーズは制作数が少ないため、高値がつく傾向にあります。

片岡球子の作品を高値で売却するポイント

片岡球子の鑑定機関・鑑定人

東美鑑定評価機構 鑑定委員会

一般財団法人東美鑑定評価機構は、美術品の鑑定による美術品流通の健全化及び文化芸術の振興発展に寄与する公的鑑定機関。

来歴や付帯品・保証書

来歴や付帯品:購入先の証明や美術館に貸出、図録に掲載された作品等は鑑定書が付帯していなくても査定できる場合があります。
保証書:購入時に保証書が付帯する作品もあるので大切に保管しましょう。

状態が悪くても買取可能?

作品によっては修復可能なレベルであれば買取できる場合があります。著しく破損・汚損が激しい作品は難しいこともあります。

日本画(額)

状態を良好に保つ為の保管方法

日本画は主に紙や絹に岩絵具で描かれており、湿気やカビにとても弱いです。また直射日光などは酸化の原因になり、劣化します。直射日光を避け、涼しい場所に飾りましょう。また箱にしまったままも湿気やすい為、最低でも年に2回は風を通すようにしましょう。

修復方法

日本画修復の専門店にお願いすることが1番です。下手に自身で手を入れると、返って悪化するケースもあります。

共シール

「共(とも)シール」とはいわば、日本画に付帯する作品証明のような物です。多くは表題(絵のタイトル)と作家名が、作家自身の直筆で書かれており、絵画の裏面に貼ってあります。共シールの有無により評価が変わる場合があるので、ご所有の作品にあるか確認してみてください。

片岡球子についての補足情報

片岡球子作品の美術館展示と展覧会情報

美術館

片岡球子の作品は、国内外の多くの美術館に収蔵されています。東京国立近代美術館、京都国立近代美術館 などの主要美術館で、球子の作品を鑑賞することができます。

近年では、球子の作品への評価がますます高まっています。2015年には東京国立近代美術館にて「生誕110年 片岡球子展」が開催され、多くの来場者を集めました。この展覧会では、「富士山」シリーズや「面構」シリーズなど、球子の代表作が一堂に会し、その芸術の全貌を紹介しました。

片岡球子作品の贋作情報

ここ数十年のインターネットや化学技術の向上により、著名作家の贋作が多数出回っています。ネットオークションでは全くの素人を装い、親のコレクションや資産家所蔵品等の名目で出品し、ノークレームノーリターンの条件での出品が見受けられます。落札者は知識がないがために落札後のトラブルの話をよく聞きます。お手持ちの作品について「真贋が気になる」「どの様に売却をすすめるのがよいか」等、お困りごとがあればご相談のみでも承っております。

まとめ

片岡球子は、103年の生涯を通じて日本画の新境地を切り開き、日本を代表する女流画家としての地位を確立しました。その大胆な構図と鮮やかな色彩は、今なお多くの人々の心を魅了し続けています。

「富士山」シリーズや「面構」シリーズに代表される球子の作品は、美術品市場でも高い評価を受け、高額で取引されています。特に「富士山」シリーズは人気が高く、作品の状態や大きさによっては数百万円以上の価値がつくこともあります。作品をお持ちの方は、その価値を正確に把握するために、専門家による適切な査定や鑑定を受けることをおすすめします。

片岡球子の作品を通して、みなさんは日本画に対する新たな魅力を発見できましたか?彼女の作品は、私たちに芸術の可能性と挑戦することの大切さを教えてくれています。あなたの身近な美術館やギャラリーで、片岡球子の作品に出会えるかもしれません。ぜひ、実際に足を運んでみてはいかがでしょうか。

片岡球子作品の売却に関するご相談は、専門家にお任せください。豊富な経験と専門知識を持つスタッフが、作品の査定から売却までを丁寧にサポートいたします。作品の状態、サイズ、制作年代などによって価格が大きく変動するため、まずは気軽に査定を依頼することをおすすめします。

当社では、あなたの大切な作品の価値を最大限に引き出すべく、丁寧な査定と適切なアドバイスを提供いたします。片岡球子の作品の買取をご検討される際は、ぜひお問い合わせください。

片岡球子の作品の買取をご検討される際はこちらをご覧下さい。

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