2024.03.26
独自の世界を確立した銅版画家 山本容子
ある日古本屋で本を探していると、偶然素敵な表紙の絵の本に出会いました。ふと手に取ってみるとページをめくる手が止まらず、あっという間に彼女の世界に引き込まれていきました。軽快で妙味な色遣いや繊細な線画は春の陽だまりのような雰囲気に包まれており、とても居心地がよく、いつまでもそこに居たい・触れていたいという想いにつつまれます。
今回は銅版画家の山本容子を作品と共にご紹介します。
多岐に渡り活躍する 山本容子
山本容子は1952年に埼玉県で生まれました。京都市立芸術大学美術学部西洋画専攻科修了後、挿画や版画を中心に制作。多数の書籍の装丁や挿画、アクセサリー、食器、舞台衣装のデザインなどの幅広い分野で活躍。美術以外の分野でも、旅行、音楽などについての挿画を交えたエッセイを多数出版し、本人もCMに出演するなど、美術のみならず現在も活躍中です。
ステンドグラス
挿画や版画も有名ですが、特にステンドグラス作品は目を見張ります。山本自身が原画・監修した「過ぎゆくもの」は埼玉県鉄道博物館に輝きをともしています。山本は鉄道には疎かったため、かつて読んだ宮沢賢治、夏目漱石、内田百聞、宮脇俊三の読書経験を生かしたそうです。谷川俊太郎の「過ぎゆくもの‐SL挽歌」を基調に十点の独立した作品が一つの絵に見えるように描かれています。鉄道を動かすエネルギー源である水や火がモチーフの統一された色遣いでも、細やかな色の違いや線画によって、山本容子の作品の繊細さが表現されています。芸術に正解などないけれど、山本容子の色遣いはあたかもその場で自然力により生み出された天然物であるかのように溶け込むのです。
新たな取り組み
近年では、「アートインホスピタル」にも取り組んでいます。これは、絵の力で、患者やその家族、医療従事者が心穏やかに過ごせるように病院内でアートを活用するという考え方です。父の死を受け、福祉先進国のスウェーデンでアートインホスピタルを勉強したそうです。
国内ではなじみの薄い病院でのアートだが、アーティストとして、アートを通して日本での病院に対する意識を変えられないかと話しているようです。昨今は患者中心の医療が叫ばれています。患者の不安を少しでも癒せたらと願う山本容子の考えは、先駆的な医療発展に大きく貢献するでしょう。
新作情報や活動
こちらの公式HPで新しい作品や活動などを観る事ができます。
今後も彼女の活躍に目が離せませんね。