2024.03.19
女性の本質を描く作家 福井欧夏
スマホの普及や写真技術の進歩により、ここ50年で目に映る世界の表現方法は大きく変わりました。絵画の世界では写実絵画と呼ばれるありのままを描くジャンルがあります。写実主義(リアリズム)と呼ばれる様式は19世紀頃から始まったとされ、写真とはまた違った詩情的な魅力があり、最も高い技術レベルを誇ります。今回は国内での近代写実絵画に大きな影響を与え、現在活躍中の福井欧夏を作品への想いと共に触れていきます。
卓越した描写力
1968年に広島で生まれた福井は武蔵野美術大学を修了後、白日会展に出品、白日賞を受賞し、以後数々の賞を受賞しています。福井は、現代の作家には珍しい“現場主義(実際にモデルをキャンバスの前に佇ませて絵を描く)” を徹底し、強いこだわりをもって制作しています。眼前にある生身の女性やモチーフを一片一片写し取る作業を丁寧に重ねることで描きあげられた作品は、あらゆる物理を超えて本質的な存在を生み出しているかのように感じます。また福井作品に登場する女性は皆、容姿端麗であり女性が纏う独特な雰囲気を優しいタッチで緻密に描かれています。
「動きのあるライン」を作る
福井が描く作品の制作過程に着目してみると、そこにも独自の “こだわり“が表現されています。モデルのポーズを決定する際に心がけているのは、「動きのあるライン」を作ること。本来人間は絶えず動いているはずであり静止した証明写真のような肖像画にはならないよう様々な工夫が施されています。髪の長い女性やひらりと長いロングドレスの女性像を描くことが多いのも、画面に動きが生まれやすいからかもしれません。福井が徹底するモデルを見つめて描く時間。それは「本質を見る時間」でもあるのだと思います。
福井欧夏を鑑賞できる美術館
国内で写実絵画を専門に収集・展示している千葉市のホキ美術館。
日本最大となる森本草介を始めとし、野田弘志、中山忠彦、島村信之等の作品も多く鑑賞できます。