2023.12.12
日本画と洋画の垣根をなくした作家 大藪雅孝
2022年5月、ポップアートの伝説、アンディー・ウォーホルの「マリリン・モンロー」が海外のオークションで254億円で落札され、大きな話題となりました。アンディー・ウォーホルは「アートとデザインの垣根をなくした」といわれています。日本にも「日本画と洋画の垣根をなくした」作家がいます。今回はその垣根をなくした大藪雅孝をご紹介させて頂きます。
ミックスドメディアの先駆者
大藪雅孝は1937年に韓国ソウルに生まれました。1942年に一家で日本へ帰国し、高校までは香川県で過ごします。1960年に東京藝術大学美術学部工芸科を卒業し、1964年から母校に戻り基礎デザイン研究室助手、1990年教授を経て、2015年名誉教授となりました。
大藪は「芸術の土台と骨格はデザインに在る」という理念を持っていました。その発想から何にもとらわれない、斬新な技法が生み出します。それは、日本画で使われる岩絵の具とアクリル絵の具を併用する、ミックスドメディアと呼ばれる方法です。日本画でも洋画でもないミックスドメディアという技法は、今でこそ色んな作家が用いますが、当時は非常に斬新で、大藪はまさに「日本画と洋画の垣根をなくした」ミックスドメディアの先駆者と称されました。
額へのこだわり
大藪には「額も作品の一部」という考えがあり、額までにも強いこだわりを持っていました。額に意図的に小さな穴を無数に開けたり、模様を彫ったり、色を乗せたりとキャンバスのみに留まらず、大胆に表現していきました。ここにも「芸術の土台はデザイン」というこだわりが感じられます。大藪作品には額も含めて楽しめる、おもしろさがあります。
大藪雅孝は2016年に79歳で亡くなりますが、その魂は東京藝大の教え子たちに引き継がれています。大藪の教え子たちは夭折の天才画家、有元利夫や日本画の巨匠である宮廻正明、売れっ子作家の金丸悠児や阿部穣などがおり、それぞれが斬新な作風で人気です。
垣根をなくした作家、大藪雅孝。是非、皆様も0から1を作ったその作品にふれてみてはいかがでしょうか。