2023.10.10
グラフィックデザイン界の寵児・横尾忠則
学生の頃偶然街角で見かけたポスター作品。コントラストの強い色彩とアメコミの雰囲気に思わず目を奪われ、今でも鮮明な印象として残っています。
今回ご紹介する作家、横尾忠則は今から約60年前の1960年代よりグラフィックデザイナーやイラストレーターとして活動し、現在も画家としても活躍されています。
グラフィックデザイナーの道
横尾忠則は兵庫県西脇市に生まれました。幼いころより絵を描く事が上手く、小学校高学年になると漫画雑誌等に漫画やポートレートを投稿し、挿絵画家になりたいと考えていました。この頃に過ごした西脇市の思い出や戦争体験は後の作品に強く影響を与えています。20歳頃に神戸新聞社のグラフィックデザイナーとして就職、その後上京し日本デザインセンターへ入社し、本格的にキャリアが始まりました。
「常に新しくありたい」横尾の作風
36歳になった横尾はニューヨーク近代美術館で個展を開催するほどの活動を見せていましたが、1980年に同館で開催されたピカソ展に衝撃を受け、いわゆる「画家宣言」を行い、芸術家として具象的な作品を制作するようになりました。目まぐるしい画風の変遷を重ねながら森羅万象あらゆるものをモチーフとしておびただしい数の作品を今日まで生み出してきました。
横尾作品の特徴の1つとして、モチーフが繰り返し描かれていることが挙げられます。「作品は年代を追って発展する」という独自の考えをもとに、既存のイメージを書き写す「模写」を自己作品において重要な要素と捉えています。
代表的な例として1960年代の代表的なシリーズ「ピンクガール」は1990年代にも再び発表され、現在に至るまで断続的に描き続けられています。また、2000年以降を象徴する横尾の出身地兵庫県の街並みが描かれた作品「Y字路」も同じ場面を少しずつ変化させながら何度も描き続けられています。
2021年に開催された巡回展「GENKYO 横尾忠則」が愛知県で開催されたので私も足を運びましたが、近年発表されている絵画を中心に活動初期のグラフィック作品も加えた豊富な作品群により、様々な画風の移り変わりから横尾の生涯を辿れるような展覧会でした。
日本を代表するアーティストとして
今も尚、活躍中の横尾も今年で87歳を迎えます。彼のこれまでの活動は日本国内での個展にとどまらず、ニューヨーク近代美術館やカルティエ現代美術財団など海外の美術館での個展開催や、ビエンナーレへの出品。GUCCIとのコラボレーション、紫綬褒章受章に2020年には東京都名誉都民の称号授与など様々です。
そんな止まることのない横尾の活動は公式HPや本人のTwitterから確認することができます。また神戸市にある横尾忠則現代美術館では横尾コレクションを軸に、横尾作品に関連するテーマ展などが開催されています。是非お時間のある際にチェックしてみて下さい。