作家・作品紹介

昭和の旅情版画家 川瀬巴水

夜の帰り道にふと耳を傾けると鈴虫の鳴き声が聞こえ、秋の訪れを感じる今日この頃。
とあるお客様より縁をいただいた巴水の木版画を改めて鑑賞すると、そこには今も昔も変わらない美しい日本の風景と季節、時代の移り変わりを味わう事ができました。

昭和の旅情版画家 川瀬巴水

夢を諦めきれず、遅咲きのデビュー

川瀬巴水(かわせはすい)は日本の浮世絵師、版画家であり明治時代から昭和にかけて活躍した画家の一人です。巴水の本名は「川瀬 文治」(かわせ ふみはる)といい、1988年に現在の東京都港区新橋に生まれ、10代から画家を志し14歳の時、川端玉章門下の青柳墨川に日本画を学びました。19歳の頃、親に反対され家業を継ぐのですが、画家の夢を諦めきれず25歳で顔馴染みであった鏑木清方の門を叩くも、20代も半ば過ぎた遅い始まりに難色を示され、洋画の世界に学ぶも挫折。だが画家になる事を諦めきれず、再び鏑木清方の門を叩き、許され、弟子入り。2年の修業を経て巴水の画号を与えられました。


昭和の旅情版画家 川瀬巴水

木版画家に転身

師の清方が得意とした美人画で自身の作風に行き詰まりを感じ始めた頃、1918年の郷土会第四回展に出品された伊東深水の渡辺版画店の木版画「近江八景」に感銘を受けて版画作成に興味を持ちます。最初は深水の影響を受け美人画や姿絵などを制作。その後、幼い頃に疎開していた栃木県塩原を描いた風景版画の「塩原おかね路」「塩原畑下り」「塩原しほがま」の3点を完成させ、”新版画”と呼ばれる浮世絵風のいわば20世紀版の版画を渡辺版画よりデビュー出版。当時、浮世絵版画は衰退していましたが、巴水の版画はとても反響が良く、以来、渡辺版画店の渡辺庄三郎は巴水に”新版画”の風景画を委ねるようなりました。

風景版画を本格的に取り組むにあたり、歌川広重や小林清親の作品を熱心に研究。全国各地に足を運び、写生を重ねます。最初の連作「旅みやげ第一集」を発表、風景版画家としての地位を確立させました。同年には木版画集「三菱深川別邸の図」を制作し三菱財閥から国内外の関係者や得意先へ贈呈され巴水の名が世界的に伝わるきっかけとなりました。

精力的に活動をしていた矢先の1923年、関東大震災で被災して写生帖188冊などの多くのスケッチを焼失してしまいます。しかし、巴水は逆境にもめげずに生涯で最長となる1年半もの間、関西への写生旅行に出かけ、雨、雪、夜といった詩情的な風景版画を生涯600点近く描きました。


昭和の旅情版画家 川瀬巴水

あのスティーブ・ジョブスと…

1930年代にアメリカ オハイオ州のトリード美術館で現代日本版画展が開催されました。当時巴水の他にも橋口五葉、伊東深水吉田博などの作品が出展され、大変好評だったそうです。”新版画”は特にアメリカで人気が高く、アップルコンピュータ創設者であるスティーブ・ジョブスは10代の頃、友人宅に飾ってあった巴水版画に出会って以来とりこになり、巴水のコレクターとしても有名です。

明治・大正・昭和と時代の文化の転換期を日本の風景と季節を見事に描いた川瀬巴水。
現代のレトロブームも相まって令和を生きる私たちにもどこか懐かしく感じることができます。また描く事が好きで家業を捨て、夢を諦めず、画家になりたいと思う強い気持ちや逆境にもめげずに立ち向かう巴水自身の生き様は、平成生まれの私の心にも響きました。

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