2023.08.29
ルノアールに弟子入りした画家 梅原龍三郎
印象派として世界的に知られるフランスの巨匠画家ピエール・オーギュスト・ルノワール。
皆さまもその色彩豊かな絵を、教科書や美術館、はたまたテレビや街中で一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。そんな誰もが知るような巨匠から日本人画家として弟子入りを許された「梅原龍三郎」についてご紹介したいと思います。
突然訪問したルノアールのアトリエ
梅原龍三郎は京都に生まれ、浅井忠の門下生として絵を学びました。後に梅原と並び「日本洋画壇の双璧」と言われた画家、安井曾太郎もこの頃の同門でした。
20歳で渡仏。留学先のパリでルノアールの作品に衝撃を受けた梅原は、自身の作品を携え南仏カーニュにあるルノアールのアトリエに突然訪問します。まったく面識のない画学生の梅原に対して、43歳も年上であり既に国際的な名声を得ていたルノアールは自身のアトリエに招き入れ制作現場を見せ、昼食を供にします。ルノワールは「君の色彩はタンペラマン(天性)だ」とその才能を高く評価したそうです。
5年間の留学中には直接手ほどきを受け、帰国した後は西洋画に琳派や南画などの東洋の美を融合させた独自の技法を展開し、数々の名品を生み出しました。
代表作「薔薇図」に映り込む美術品
梅原の代表作の一つである「薔薇図」。
梅原の描く絵は自由奔放で、見る人を強く惹きつけるダイナミックな描き方で表現されます。色彩豊かに描かれた薔薇に目がいってしまうのは当然ですが、我々美術に携わる者としては花だけではなく、それが活けてある陶磁器にも目がいき、どのような器か気になってしまいます。
花が活けてある陶磁器は、中国の宋から明の時代に景徳鎮窯で作られた中国色絵陶磁器であるそうです。中には美術品蒐集家としても知られる梅原が、直接中国に行き手にいれた作品もあったそうです。薔薇を活ける壺一つをとっても、希少価値が高い古美術品を使っているところなどは、画家としての強いこだわりを感じます。
描かれている作品一つ一つに知らないエピソードがまだまだ隠されていることでしょう。
皆さまも梅原龍三郎の作品をご覧になる機会がありましたら、是非、主題の対象物以外に描かれている物に目を向けてみてください。蒐集家梅原龍三郎のコレクションが映り込んでいるかもしれませんよ。