2023.06.13
人々に夢を与える作家 藤城清治
宮沢賢治著のセロ弾きのゴーシュや銀河鉄道の夜、アンデルセン童話…児童書や文学書の多くの表紙絵や挿画を描き、近年では音楽アーティストMISIAのツアーロゴマークの制作で話題になった藤城清治。多くの方が生活の中で彼の絵を一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。今回は子どもから大人までに愛される影絵作家の第一人者、藤城清治をご紹介いたします。
1924年(大正14年)に東京都に生まれた藤城は影絵作家として1948年に活動を開始し、以来75年以上にわたって数多くの作品を発表。各地で展覧会を開催、現在も国内外問わず人気を博しています。
影絵芝居との出会い
藤城は幼少期より話すより絵画で表現することを得意とし、12歳頃から油彩や水彩、エッチング等の技法を学び、習得しました。やがてピカソやマチスなどのモダニズムに憧れ、18歳になると猪熊弦一郎や脇田和のアトリエに出入りするようになります。慶応義塾大学に在籍し、学生時代は児童文化研究会で素朴でかわいらしい動きをする人形劇に熱中。そして卒業間近の22歳頃、影絵芝居と出会います。火を燃やしその光からうつし出される影で物語りを表現する という発想に魅了され、大学卒業後は影絵作家として出発します。
光と影のバランスの妙技
影絵とは言うまでもなく、「紙」、「技」、「光」、「色」 の調和があってこそ生まれる作品です。すべての作品が藤城自身の手作業によるもので、色とりどりのカラーフィルムを背面から当て、光と影のバランスを調整しながら創りあげています。鋭いながらも優しいカッティングで藤城が命を吹き込んだ光と影の作品は、子供たちだけでなく大人の心も強く惹きつけます。
反戦への想い
藤城は戦前、戦中、敗戦、戦後と激動の日本を駆け抜けました。戦中は特攻隊で飛び立つ友人らをたくさん見送りました。影絵に出会った頃は敗戦で社会全体が暗かったため、より光を感じ、敗戦後の日本語に道しるべになる「生きる喜び」を表現しテーマとして制作を開始。平和の象徴である白い鳥、生命力溢れるや人や動物・植物が多く描かれています。改めて藤城作品を観ると、影絵を通し反戦への想いと命の尊さを現代社会に生きる我々に投げかけてくれていると感じます。
現在99歳の藤城の作品は年を追うごとにより繊細さが増し、「闇は怖いものではなく本当に美しいものを浮かび上がらせてくれるもの」 そう思うほどの強い力を感じさせてくれます。
そんな藤城の作品や制作風景は新しい試みとして公式のYouTubeやInstagramからもチェックすることができます。ぜひ覗いてみてくださいね。
・YouTube: https://www.youtube.com/@seijifujishiro3726
・Instagram: https://www.instagram.com/seiji_fujishiro_staff/