2023.05.30
躍動感あふれる馬の絵で人々を魅了した画家~中畑艸人~
阪神競馬場に、競馬場をテーマに競走馬の迫力やスピード感が表現され、競馬場の季節が描かれた陶板画「陽春・秋晴」が収蔵されております。実際この目でみてみたくなり先日阪神競馬場に足を運んできました。
油彩ではなく陶板画であるものの、競走馬ならではの筋肉の付き方毛艶など詳細に描いてあり、作者の馬のことを知りたい・好きだという思いが伝わります。今回はこの作品を描き、中央競馬会馬事文化賞選考委員まで務めた馬の画伯、中畑艸人(なかはたそうじん)をご紹介したいと思います。
世界的に知られている「馬の画伯」
中畑艸人は、昭和から平成初期にかけて活動した洋画家です。
18歳の頃から独学で絵を描くようになり、それから間もなくして日本水彩画展への入選を果たします。
こうして類まれなる画才を披露した中畑でしたが、さらに絵の技術を磨くために26歳で上京。
洋画家・硲伊之助に師事し、洋画家として本格的に活動をはじめました。
当初、水彩画のような柔らかい色調の風景画を好んで描いていましたが、偶然競馬場に足を運んだことをきっかけに颯爽と駆け抜ける競走馬の姿に魅せられ画題が一転、馬をモチーフとした絵を描くようになります。
一水会展で入選以後は同展を中心に活躍、欧米にも渡り、ロンドンのホース・アーティスト・オブ・ザ・ワールドにも度々招待出品するなど、世界的にも馬を描く名手として知られました。
馬に魅せられて
馬の生態観察に時間を費やし、ときには外国馬を見るために海外に足を運んだ中畑は馬だけでなく、馬術会で活躍する人物や競馬の情景をモチーフとした作品も描いていきます。
競馬会からも注目されるようになり、のちに中央競馬会馬事文化賞選考委員を任され、1991年に今回紹介させていただいた陶板画「陽春・秋晴」を制作しました。
中畑艸人の代表作『春風』
気持ちの良い春風の中を疾走する馬の群れ。
長年の馬の生態観察による細密で躍動感が表現され、力強い足音と共にこちらに迫ってくる様子を感じ取れる作品。
中畑の類まれなる画才がうかがえる傑作のひとつです。
高い写実力によって躍動感あふれる馬の絵画を完成させ、数々の公募展で受賞しました。
こうして一流画家として名を馳せた中畑艸人は、87歳でこの世を去るまで、精力的に活動しました。
競馬は今も人気が絶えず馬の美しさを知れる場所でもあると思います。馬を愛し、競馬ファンからも指示を集め日本の競馬界においても大きな影響力を持った中畑艸人の作品を、この機会に是非楽しんでみてはいかがでしょうか。