2023.04.04
国境をも超える風景画家 ~岩波昭彦~
巨大都市ニューヨークの風景「都市の肖像」
岩波昭彦は近年海外での活躍が注目されている日本画家の一人です。ニューヨークの街並みを描いた「都市の肖像」シリーズは、まるでその場所に訪れたかのように、観た人にも等しく“巨大都市”からの感動を与えてくれます。特に、夜の街並みにおける光の描写の繊細さには、思わずうっとりしてしまうことでしょう。巨大都市に佇むビル一つ一つを日本画の技法を駆使して描き写した岩波の作品は、国内外を問わず高く評価されています。
幅広い表現に挑戦
1966年(昭和41年)、岩波は自然豊かな長野県茅野市に生まれました。
日本美術院院長を務めた日本画家・松尾敏男に師事し、様々な展示会に作品を出展。1998年頃からは日本を飛び出し、ニューヨークやパリで多数の個展を開いています。前述した「都市の肖像」シリーズをはじめとした風景画が有名な岩波ですが、抽象画や歴史画にも挑戦しています。特に注目された制作活動は、1994年に諏訪大社上社「天正古地図」模写に従事したことでしょうか。この制作により茅野市より功労篤志寄付者として表彰を受けます。これをきっかけに様々な歴史画を追求し、2014年には、諏訪大社に「平成・諏訪大社 三題(五部作)」を奉納。さらには、産経新聞の連載小説における挿絵や、フジテレビドラマ「幸せになろうよ」の絵画協力など、多くの挿絵担当や絵画制作も行っており、その活躍は幅広い分野で見ることができます。
国境をも超える新しい日本画に挑む
日本画の技法と、ニューヨークやパリで磨いた西洋風の絵画技法を掛け合わせて表現することは、過去の日本画の歴史からすると一見ミスマッチにも思えます。しかしそこには、東洋と西洋の技法を組み合わせるからこそ描ける世界が広がっており、青や黒をベースに描き出された、夜の風景画の臨場感あふれる色使いに圧倒されてしまいます。
ニューヨークのシンボルともいえる「タイムズ・スクエア」をモチーフにした作品は、日本画における繊細なタッチでどこか儚げな印象を与えるとともに、ガヤガヤとした巨大都市ならではの喧々たる様子がうかがえますね。
今回ご紹介した岩波の作品は国内の展覧会で実際にふれることができます。展覧会情報は下記の岩波昭彦のホームページから確認できますので、ぜひ、より近くで、壮大かつ鮮やかな絵画表現をご覧にいただければと思います。