2023.01.17
風船のような彫刻作品 ジェフ・クーンズ
パフォーマーがつくったバルーンのような作品。一見すると風船でできているように見えますが、れっきとしたステンレス製の彫刻作品です。
今回はシミュレーショニズムの代表的アーティスト、ジェフ・クーンズ を紹介したいと思います。
クーンズは1955年アメリカ合衆国生まれのアーティストです。10代の頃から行動力があり、当時尊敬するサルバドール・ダリがニューヨークのホテルに滞在していると知り、直接訪ねるなど大胆なエピソードがあります。20代はイリノイ州にある美術大学を卒業しアーティストとして活動。アーティストとして認知されはじめた頃、アンディ・ウォーホルの「ファクトリー」をモデルとした工場規模のスタジオをニューヨークに構えました。そこで主としてポップカルチャーに焦点をあて鏡面処理を施したステンレス製の彫刻作品を手掛けていきます。
約100億円で落札
このクーンズの代名詞と言われるステンレス製の彫刻作品の制作は1994年頃から始まり、20もの異なる彫刻・絵画のシリーズとそれぞれ5種類のカラーバリエーションが現在までにあるとされています。「セレブレーション」シリーズの“ラビットの像”は2019年にクリスティーズで約100億円で落札され、現役で活躍する作家で史上最高額と当時話題になりました。私も光沢金属コーティングを施した磁器でできた799部の限定作品の“バルーンドック”は実際に取り扱う機会があったのですが、意外と重量があり、また鏡面処理を施してあるということも相まって触る際には想像以上に緊張しました。見た目が風船のようなので視覚の錯覚を起こさせる一面もあるかもしれないですね。
賛否両論!?キッチュ性か、または芸術か。
視覚としては軽く安っぽく見えるが実質質量は重い、低俗さと高級さ・純粋さと魅惑・はかなさと永遠 という対極的なクーンズ作品。それ故にクーンズの作品には賛否両論の声があり、現代アートの中では類を見ないような表現であると称賛される一方で、キッチュ性(安っぽいもの)があまりにも商業的と見られる反面もあります。ですがそのキッチュ性が大衆に共感を生み愛されているように私には思えます。
またクーンズは作品制作の中で“シミュレーショニズム運動”も行っています。“シミュレーショニズム運動”とは誰もが知っている名画やデザインされた広告など既存の作品を自身の作品に取り入れ変換させ、現代における美術とアートの消費をテーマに活動していくアート活動です。(ちなみに2回著作権訴訟で訴えられ勝訴と敗訴…とこちらも話題になりました)。何かと話題になるジェフ・クーンズ。彼の活動に目が離せません。
おわりに
今回はジェフ・クーンズを紹介しましたが、彼にカテゴライズされる“現代アート”という分野は時代によって今なお成長し続けているであると感じています。一つの作品を取っても受け手によっては様々な評価や感想があります。大衆に様々な感情、気付きを思い起こせる作品が現代アートの楽しみの一つだと思います。皆さんも一度現代アートをご覧になり、日々の時間を忘れて作品に取り込まれてみませんか。
※Balloon Monkey (Magenta)画像 Christie’sより引用