2022.11.01
ポップ・アートの先駆け ジャスパー・ジョーンズ
アメリカのポップアートの先駆者
「ポップアート」における代表的アーティスト、ロイ・リキテンステインとアンディー・ウォーホル。1960年代に入ったアメリカでは大量生産・大量消費の社会をテーマとして表現した「ポップアート」が全盛期を迎えます。商業デザインなどを指した「ポピュラーなアート」である明解さから、彼らの作品は大衆に受け入れられていきました。その人気は現代でも衰えることはなく世界の市場で活発に取引されています。
今回はそこに至るまでの道のり。アメリカにおける「ポップアート」の先駆者として、ロバート・ラウシェンバーグとともに重要な役割を果たした作家ジャスパー・ジョーンズをご紹介いたします。
既成の芸術作品の概念を覆す試み
ジョーンズは1930年にジョージア州オーガスタに生まれ、成人後の大半をニューヨークで過ごし、現在はコネチカット州シャロンに在住、92歳の現在もなお、スタジオを構え、並外れた作品を精力的に創り続けています。
エンカウスティーク(エンコスティック)という、美術史上最古の絵画技法を作品の中でしばしば利用し、国旗や標的や数字など、もともと二次元的な対象物であり、絵にはならないような、ありふれたイメージを絵画として描きはじめ、廃物や既製品のがらくたなど独創的な素材や形式を用い、芸術作品とは何か、何ができるのかといった従来の概念を覆す試みをおこなっていきました。
例えば、代表的な作品のモチーフの1つであるアメリカの国旗。国旗は誰が見ても一目で国旗とわかります。「既にみんなが知っていること」を描こうとしたのです。都市の事物には必ず記号としての意味がこめられていることに注目し、アメリカの現代都市の中で最上位の記号と言える国旗をモチーフに選びました。
ニューヨーク・タイムズ紙 “最も優れた芸術家” に選出
ジョーンズのユニーク作品はオークションで数百万ドルの価格帯で流通しており、2010年には1億ドル以上で落札されました。現存する芸術家の作品の中で最も高額で取引されている作品として何度もその名を知られています。
アメリカ芸術勲章や大統領自由勲章を受章するなど、そのキャリアを通じて多くの栄誉に浴し、2018年にはニューヨーク・タイムズ紙は彼をアメリカの “最も優れた芸術家” に選んでいます。
1950年代後半に発表されたジャスパー・ジョーンズの画期的な作品は美術界に衝撃を与え、その深い創造性から、ポップ・アート、ミニマリズム、コンセプチュアリズムなどのムーブメントの火付け役となり、今日に至るまで多くのアーティストにインスピレーションを与えています。