2022.10.11
高塚省吾 静寂なヌードを追求した裸婦美人画家
絵画の歴史で女性像は常に描かれてきた永遠のテーマと言えます。
美人画や母子像、神話を題材にした女神など、多くの画家が幾度となく描いてきました。
その中でも「裸婦」をテーマとして描き続けた日本人洋画家がいます。
高塚省吾(たかつか せいご)です。
禅に出合い自分自身の底を見つめ直す
1930年、岡山県生まれ。東京藝術大学で梅原龍三郎、林武に師事しました。(硲伊之助は当時の日本美術会の委員長)卒業後は個展を開くなどしましたが作品に恵まれず、バレエ団の美術や映画のタイトルを担当するなど、絵画以外の分野で活躍していました。
芸大で梅原龍三郎や林武から学んだ「パワーイズビューティフル」という命題のもと、前衛的な思想で抽象画や風景なども描き西欧的な美を追求していた高塚氏は、禅に出会い自分自身の底にあるものを見つめなおしました。自分自身にある淡いとか静かという日本らしさを交えた静寂のある美を追求し、余白の広がりを描く、描き込むよりも消し込むといった独自の画風で裸婦を描き、裸婦美人画家として名声を確立しました。
清涼感のある裸婦画
高塚省吾の裸婦は不思議とエロティックないやらしさが少なく、「芸術」として目に飛び込んできます。裸婦というモチーフから清涼感が感じられるのはなぜか、描線を強調することによって陰影をつとめてなくし色彩を禁欲的に抑えて、透明で押しつけがましくのない消去法の美意識のある裸婦であるからだと考えます。
生涯をかけて描き続けるとことなる裸婦画ですが、自身は裸婦については特別の関心もなければ執着もなく、高塚氏の画体(文学における文体に相当する高塚独自の言葉)の波長に合っているため描き続けたそうです。皮膚や血が通った生きているリアリズムを追求するヌードではなく着地点を探すように下がっていく下降線の美という静寂なヌードを追求しました。
デッサンは実際にモデルを見て、パステルやエッサンス(揮発性油を多めに使って油絵具で描く素描)で見たままを描きます。そして油彩画はデッサンやパステル画を基に彩画に書き直していきました。モデルがいるとその存在に影響されすぎるため、油彩画はモデルを見て描くことをせず、自分だけの世界で、自分の美意識にそって描き上げたそうです。
高塚氏の「無限空間」とは?
また背景の多くは白壁のようになっています。余分なものは描かないという禅的な思想が感じられ、高塚氏はこれを「無限空間」と名付けました。背景と人物が混ざり合い、描かれたものから外へ外へと広がるような絵ができればいい、と考え余白を意識した絵画構成をされています。
2007年に惜しくも逝去されましたが、刊行された作品集も大変人気があり、現在でも評価の高い作家です。
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