2022.09.27
─「緻密さ」を革新的に表現する芸術家─ 宮廻正明
宮廻正明の武器
画家と呼ばれる芸術家たちは、それぞれの命とも呼ぶべき、自分だけの手法を持っています。
宮廻正明もまたその一人。「鉛筆により、線描でモチーフの中心から外側に描いていく。陰影はつけず、上面と立面と底面をしっかり認識しそれらを描き分けておく。」(宮廻正明の公式HPより抜粋)という素描からのこだわりが、その作品から伺えます。
宮廻正明の描く緻密な絵画を見ると、思わず拡大鏡を使ってじっくりと観察したくなるかもしれません。それほどまでに、彼の作品集は緻密さが追求されています。
「行間のよみ」は、一見すると、夜明け前の青い川に一人、舟を漕ぐ人影が描写されているだけのようにも思えます。しかし、よく目を凝らしてみると、青と白の隙間に浮かぶ、空間の揺らぎが見えてくるのではないでしょうか?
静止画であるにもかかわらず、この空間を「緻密さ」という武器で表現し抜くことで、静かながらも確かに揺らめく波の様子が見て取れる作品となっています。
進化を恐れない芸術家
宮廻正明の注目すべき点は、何も「緻密さ」だけではありません。留まるところを知らない「好奇心」と「向上心」、そして「積極的な自己開示」が、宮廻正明という存在を作り上げてきたのだと、私は思います。東京芸術大学在学時に、彼が師事していた大藪雅孝も、ミクストメディア(混合技法)の先駆者として著名な画家でしたが、彼自身もまた、革新を恐れない芸術家として、今や世界中に名を轟かせています。
さて、絵画といえば、一般的には3次元のものを2次元に変換し、表現するモノですよね。しかし、時代は進化しています。宮廻正明は、この進化を決して恐れず、むしろ自身の技法に取り込むことで、独自の世界観を常に発信し続けているのです。
固定概念に囚われない絵画の在り方
こちらは、2021年に個展で発表された作品「鳥の囀」です。デジタルとアナログによる混在技術を取り込み、動く絵画として展示されました。揺らぐ枝垂桜の美しさが、彼自身の持つ「緻密さ」という武器も相まって、より豊かに、より鮮やかに写し出されていますね。
固定概念に囚われず自己の持つ世界観を表現し、発信する彼の在り方は、きっとたくさんの芸術家に良い刺激を与えてくれることでしょう。これからの絵画がどのように変化していくのか、私は楽しみでなりません。