岩澤重夫 イワサワ シゲオの美術品買取情報

岩澤重夫とは

1927年生まれ。大分県日田市出身。
京都市立美術専門学校に入学すると、在学中の1951年に「芥子」で日展初入選を果たしました。卒業後は、京都の石像寺（釘抜地蔵）に住み込みの管理人として仕事をしながら独学で作家活動を始めますが、制作に限界を感じ意を決して1954年に堂本印象（1891年-1975年）率いる東丘社に入塾します。とはいえ、このころは作家としての収入などほとんどなく、仕事は新聞の挿絵や幼稚園の絵画教室の講師くらいで、満足な食事ができるはずもない日々を過ごしていました。そんな中、1957年から京都市消防局の月刊誌の表紙やパンフレットなどの原画を制作することとなり、毎月仕事が継続するようになります。以降京都市消防局との仕事は50年間続くことになりました。1960年には「葦のある沼」が京都市展で京都市長賞、「河岸」（日田市蔵）が関西総合展で第一席、「堰」（京都府立総合資料館蔵<京都文化博物館管理>）が新日展で特選・白寿賞を受賞するなど、慌ただしくも京都の日本画壇でようやく新人として頭角を表す節目の年となります。 その後、1966年に師匠である堂本印象の美術館が開館します。開館にあたり、最大時74名在籍していた東丘社の一員として一翼を担い懸命に準備を進めたことが、後の作家活動に大きな経験となったと伝記本で語っています。1968年に「昇る太陽」（日田市蔵）が新日展菊華賞となり、1971年には、ようやく日展審査員となりますが、その後の1975年は48歳にして新たな節目の歳となります。3月に最後まで作家になることを認めなかった父親が他界し、そのうえ9月には師匠である堂本印象が永眠。22年間続いた弟子と師匠の関係は、ここで終止符を打つこととなりました。その後「祈」（日田市蔵）を位双展に出品し、これ以後一切抽象画の制作を中止しました。 師匠亡き後は、東京歌舞伎座や京都南座の緞帳原画制作、陶芸絵付け、陶板画制作など様々な仕事に挑戦する時代となりました。1979年に日田市長福寺ふすま絵「大心海」を制作、1982年に初めて「嚝」（京都国立近代美術館蔵）が文化庁買上優秀美術品となったほか、1983年から高山辰雄（1911年-2007年）率いる中国訪問に4度参加し、1985年には「古都追想（西安）」が山種美術館大賞となりました。その年は、大分県の耶馬渓を描いた「氣」（京都国立近代美術館蔵）が改組日展文部大臣賞を受賞するなどの功績も残しています。1970年代の小品は、薄紫色の海景や山並みを描いた風景画と洋蘭と花瓶などを描いた白い静物画がメインでしたが、1980年ごろから緑の山に白い滝を描いた小品を制作するようになり、ようやく画廊企画展の人気作家となります。1989年には京都の祇園祭の菊水鉾見送り原画「菊水渓聲」を制作したことでも知られています。その年の暮れに、仕事場を京都の中心から車で約一時間離れた右京区京北下町に移すと、そこで1990年に約15メートルの大作「天響水心」（大分銀行蔵）を制作。1993年には「渓韻」（後に日本芸術院蔵）が日本芸術院賞を受賞し日展理事に就任します。2000年には、8.6メートルの大作「豊山豊水・四季」（大分合同新聞社蔵）を制作。同年日本芸術院会員となり、翌年には日展常務理事に就任しました。2002年、勲三等瑞宝章を受章すると、2004年ごろから鹿苑寺（金閣寺）客殿障壁画の制作を始め、2009年に障壁画63面は、無事完成しましたが、全て金閣寺に設置された姿を見ることなく、体調を考慮して南丹市の病院に入院します。同年11月4日に文化功労者に顕彰されますが、3日後の11月7日に肺炎のため81歳11ヶ月の生涯を閉じました。