2022.03.15
写実の神様 森本草介
絵画のジャンルの中で、リアルを追求する「写実」という分野があります。
この写実絵画、見たままをそのまま忠実に描くことを基本にした表現ゆえに「写真のようだ」と表現として少し軽く見る人がいるような時代もあったそうです。
しかし今では数多くの若手作家も台頭し、美術表現のひとつのジャンルとして確立されています。今回は写実をブームと言えるまでに盛り上げた立役者の一人でもある「森本草介」をご紹介させて頂きます。
感情を落とし込む
森本草介は画家森本仁平の長男として1937年に全羅北道に生まれ、東京で育ちました。
1962年に東京藝大を卒業し、大学を卒業すると専攻科に進んで翌年に修了、東京芸術大学の助手となりました。
父は洋画家の森本仁平、息子は日本画家の森本純という芸術家一家で、2015年に78才で亡くなるまで数多くの名作をこの世に発表し続けました。
ともすれば、見たものをリアルに追求しすぎるあまり写真に近づいていくことが多い写実絵画。その技術はもちろん素晴らしいもので、感動するような仕上がりになりますがどこか無機質に感じてしますこともあります。
しかし森本草介の描く作品は、モチーフを目の前にして自分の感じた感情をしっかり作品に落とし込んでおり、写実でありながら、どこか遠い日の思い出の1ページのような情緒、哀愁が漂います。
ホキ美術館の存在
現代の日本において写実絵画が人気分野として確立された要因は様々ありますが、大きなきっかけとしてホキ美術館が挙げられます。ホキ美術館は医療器具の製造販売会社であるホギメディカルの創業者、保木将夫氏によって2010年に千葉県に開館した日本初の写実専門美術館です。
ホキ美術館には、中山忠彦・野田弘志・青木敏郎をはじめ、島村信之、原雅幸、塩谷亮、等々、日本を代表する写実作家の作品が収蔵されています。
この美術館の開館により写実というジャンルが一気に注目されだしました。
ちなみに森本草介の作品を日本で一番所蔵しているのもこのホキ美術館であるそうです。
それまでの写実の概念から枠を飛び越え、「リアルの追求」の中に感情を落とし込む手法で写実というジャンルの地位を押し上げた、写実の神様、森本草介。
是非、皆様も神様が描いた、珠玉の逸品を堪能してみてはいかがでしょうか。