2020.09.22
熊谷守一 -仙人と呼ばれた画家-
長年猫と暮らしている私は、猫の絵を見ると心弾みます。
猫を描く画家はたくさんいますが、今回は生涯現役だった熊谷守一のお話と作品をご紹介したいと思います。
熊谷守一(クマガイモリカズ)
白く長いあご髭や独特の風貌から仙人と呼ばれた熊谷守一(くまがいもりかず)。
晩年は体調を壊したこともあり、30年以上家の敷地から出ることはなく、「わたしは生きていることが好きだから、ほかの生き物もみんな好きです。」という本人の言葉どおり、木や草が生い茂る庭で動物や植物・昆虫・自然などを観察して一日の大半の時間を過ごしていました。
明治13年岐阜県恵那郡生まれ。東京美術学校西洋画科に入学し、黒田清輝(くろだせいき)、藤島武二(ふじしまたけじ)らに指導を受け、青木繁(あおきしげる)や和田三造(わださんぞう)、山下新太郎(やましたしんたろう)らと同級生でした。
戦後、明るい色調・赤い輪郭線・単純で素朴な平塗、ほのぼのとするシンプルで親しみやすさを与える独自の画風を確立し、70代になって人気の画家として成功します。
昭和42年、文化人としては最高の栄誉とも言える文化勲章が内定したのにもかかわらず、「これ以上人が来てくれては困る」と辞退。昭和47年には勲三等叙勲も辞退したそうです。
熊谷守一の猫
守一の数ある作品の中から猫2作品をご紹介します。
『猫』
この作品は、愛知県美術館 木村定三コレクションの1枚です。
2017年「生きるよろこび展」のポスターにも使われており、見たことがある方も多いのではないでしょうか。気持ちよさそうに寝ている三毛猫。尻尾やお腹はだらーんとし、吊り上がった瞼。「あるあるこの顔!」
猫好きはたまらない一枚です。
『斑猫』
この作品は、メナード美術館に所蔵されている油彩画。
「お~い!イカツイライバルがいたのかい!?」って声をかけたくなる立ち姿。耳をピンと立て、体を大きく見せて無理してツッパってる感いっぱいだけど、なぜか「左右ちぐはぐな目の吊り上がりがカワイイ!!」と思ってしまうのは私だけでしょうか。
ウチの子そっくりのこの作品は私のお気に入りの一枚です。
でも不思議なのは、守一はあんなに立派な鬚があるのに、この子たちにはなぜ鬚が無いのでしょう?笑
映画「モリのいる場所」
熊谷守一に興味を持たれた方は、2018年に公開された山崎務さん、樹木希林さん主演の映画「モリのいる場所」をご覧になってはいかがでしょう。
山崎務演じるモリ(熊谷守一)の人間性に焦点をあて、クスッとさせるユーモアも交えた、守一晩年のある1日を描いたお話です。絵を描くシーンは無いですが、一日の大半を過ごした大切な庭でのシーンがメインで、守一の世界観が充分感じられる作品です。