2019.05.14
古き良き日本 ~向井潤吉~
私事ですが、私は2017年2月に東京から大阪に転勤しました。
大学時代を関西で過ごした私にとっては、第二の故郷というくらい馴染みがあり、行くところ全てに様々な思い出があります。
そんな関西に馴染みがある私が今回紹介したいのは京都出身の洋画家、向井潤吉先生です。
向井先生は茅葺屋根の民家を描くことで知られているかと思います。私自身も先生の作品を数多く取り扱いさせていただいており、作品の鑑定にも行かせていただいております。
作品の鑑定は世田谷の向井潤吉アトリエ館の中で遺族の方に観ていただくのですが、その際に遺族の方から色々と先生についてのお話しを聞かせていただきました。その中で印象に残ったお話しを少しさせていただきます。
先生は古民家を良く描かれますが、決まった制作時期があったそうです。まず早春から新緑にかかる2~4月、紅葉から新雪までの10~12月が多かったそうです。また初冬から5月までの制作が捗ったとのことでした。
ここで皆さんも疑問に感じられたかもしれませんが、6月~9月までの間は作品制作をしていないのではないかと思いませんか?
そうです。先生はこの時期はあまり作品を制作されておりません。6~7月は基本描かなかったそうです。理由としては民家を描くのに草木が生い茂っていては邪魔になるという理由が一つと、先生自身、緑が不得手だったそうです。
また向井先生はとても几帳面な方で、いつどこの場所で制作したかを手帳などに書き留めておられてみたく、古民家を一番多く描いた場所は埼玉県、続いて長野県、京都府、岩手県の順にその場所で作品の制作をしております。
他にもお話は沢山ございますが、長くなりますのでここまでにさせていただきます。
向井先生の作品を眺めているとどこか日本人が忘れかけていた日本らしい風景を感じます。また良かったら皆さんも先生の絵を見かけた際は、どこで描いた作品か注目しながら観てみてください。