大橋翠石 オオハシ スイセキの美術品買取情報

大橋翠石とは

大橋翠石は、虎の絵を多く描き、パリ万国博覧会において日本人で唯一の金牌を受けるなど欧米でも高く評価された明治中期～昭和前期にかけて活躍した日本画家です。

1865年岐阜県大垣市(美濃国安八郡大垣町)生まれ。兄・鎌三郎は生家である紺屋(染め物屋)を継ぎましたが、翠石が画家として有名になってからは自身も画家となり、「万峰」と号して虎画を描きました。翠石は幼少の頃から画を描く事を好み、地元大垣の南画家戸田葆堂、その師である京都の天野方壷らに就いて画の手ほどきを受けます。方壷のもとでしばらく学んだ後、一時大垣に帰郷しますが、母に諭されて東京に出ると渡辺小崋に入門しました。その後、母の急死に伴って大垣に帰郷しますが、1891年に起こった濃尾大震災で父親を亡くしてしまいます。失意の中、震災後に虎の見せ物小屋で虎を実見したことを契機として虎画の制作を精力的に行うようになり、後に「虎の翠石」として名高い画家に大成します。特に長い冬毛が美しいアムールトラを多く画題に選び、その描くところの虎は毛の描写の細かさ、威風堂々とした体躯、生きているように鋭い眼光や動きを表現していると評価されており、虎の毛を描くため、刷毛に似た筆を自作するほどのこだわりようでした。緻密な毛書きが施された翠石の虎図は、1900年にフランスで開かれたパリ万国博覧会にて絶賛され、優等金牌を受賞しました。アメリカ合衆国でのセントルイス万国博覧会（1904年）、日英博覧会 (1910年)でも同じく優等金牌を受賞し、国際博覧会において抜きん出た高評価を受けています。セントルイス万博出展時は「パーフェクト・タイガー」と絶賛され、海外出展に先立つ1895年、第四回内国勧業博覧会においては『虎図』が銀牌を得るなどして、金子堅太郎（子爵）に注目されました。渡米経験が豊富で美術愛好家でもあった金子は翠石の後見人となり、前述の国際博覧会への出展や宮中への献納に尽力しました。その結果、盛名を得て、時の天皇・皇后（明治天皇と昭憲皇后）や朝鮮の李王家などにも絵を献上しています。1912年には、郷里の岐阜県安八郡大垣町（現・大垣市新町）から兵庫県須磨町西須磨（現・神戸市須磨区西須磨）へ転居し、この地で、従来の日本画とは一線を画した濃密な背景表現に特色を持つ独自の作風「須磨様式」を完成させました。 翠石の画業の中では、須磨での活動期間が最も長く、この地で制作された作品の特色として、背景に遠近感や立体感のある山林や雲などを描いていることがあげられます。 また、自宅ではインコやクジャクなどを飼育しており、虎以外にも獅子、鶴、白孔雀、鹿、狸、狼、猫、兎、金魚、蛍などの動物画も多く、珍しいところでは、白熊やカンガルーの絵も残っています。動物画以外にも観音菩薩の仏画や山水画などの作品もあり、その画域は非常に幅広いものでした。 老境を迎えた昭和初期には、日本画壇を代表する二大巨匠として名声と最高画価（市場評価額）を長らく誇ってきた竹内栖鳳・横山大観両氏に並ぶ形で、翠石にも最高画価が付けられるようになっていました。それほどの人気を誇った翠石でしたが、日本画壇とは交わることなく、文展、帝展、院展といった権威ある国内の展覧会に出展することはありませんでした。